番外編3 いちご狩りに行こう①
やっと暖かくなってきた頃。
三連休も目前となった日の夜にユイと寧々がどこかへ出かけようと提案してきた。
「ねー、折角だしさ、どこかお出かけしない?」
「そうですよー。暖かくなってきましたし、みんなでいろんなところ行ってみたいです」
お出かけ自体は賛成だ。問題はどこに行くかだ。
「いいけど、お出かけってどこに?」
「んー観光地?」
なんで疑問形でそんな漠然としてるんだよ。
それにこの時期はどこ行っても混んでるんだよな。
「三連休だと、どこも人でいっぱいだぞ?」
「ここより?」
「まぁ場所によるだろうけど、高速とか動かないぞ?」
ゴールデンウイークとか年末年始、お盆に比べればそこまでじゃないだろうけど。
「じゃあ平日に行きましょう」
「いや、仕事……」
「有給取ればいいじゃない」
後ろから声がして振り返ると、お風呂から出たばっかりの星羅と静がいた。
静は今日はもこもこの羊さんの着ぐるみだ。一体何種類持ってるんだ……。
それよりも、星羅はどうしてそういう派手派手な服を……って今はそんなこと気にしている場合じゃないな。
「いや、今からだと……」
「光司」
「なんだ?」
静がこういう風に言う時は大抵ロクでもない提案なんだ。
「また、嘘をつけばいいのです」
「いいのです。じゃねーよ。無理だって。この時期忙しくて有給取れないんだよ。繁忙期なんだから」
休みは暦通りだから、休めるけどさ。
「じゃあ三連休に行くしかなくない?」
「そう……なるな。でもどこに?」
四人して腕組みしながら考える。なんで考えてないんだよ。
「あ、そうだ。折角だし美味しいもの食べたくね?」
「それいいですね。お土産として買って帰れますもんね」
「となると、アワビ、伊勢エビ、マグロに金目鯛?」
「なんで高級な海鮮なんだよ」
しかも時期じゃないだろ? 知らんけど。
「えー、じゃあジンギスカン?」
「ダメです」
静が速攻で拒否した。
「え、なんで?」
「かわいそうです」
今の静は羊さんになりきってるからだろうな。多分違う動物なら賛成していた可能性があるな。
羊さんの頭部分のパーカーをくいくいと動かしながら、不満そうに抗議する。
「わたくしは羊さんの味方です」
美人がこういうことやると、キュンとするよな。
「でも美味しいわよ、きっと」
「確かにうまいな」
「ほらぁ」
「くっ……」
静はたまに変なことで悩むんだよな。
「でもジンギスカンだと牧場ですよね」
「動物さんいっぱいいるし」
「ソフトクリームに牛乳とか結構あるわよね」
「行きましょう」
「はやっ!」
どんだけ動物が好きなんだよ。
いや、この場合風呂上がりだから食べ物の方につられた可能性も……。
「でも混んでますよね?」
「まぁ確かに」
子連れ客とカップルが多いと思う。尚のことうちが行けって言われそうだな。
「うーん。もう少しあったかくなってからのがよくない?」
「確かにねぇ」
スマホをぽちぽちしながら調べるユイと星羅。
寧々はテレビをつけて旅番組を見ている。だが、ちょっと遠いとこだな。
そんな中で静は一人フッと笑ってソファに座った。
「どうしたの静? なんか思いついたの?」
星羅がスマホを持ちながら横に座る。
「ええ。いちご狩りに行きましょう」
「「「!?」」」
「急だな。でもどうして?」
「この時期っていちごの時期じゃないですか。それに光司の地元なら詳しいのでは?」
「まぁ……そうだな」
栃木といっても広いからな。
そんな静の提案にそれぞれ反応した。
「それは盲点でしたね。でもいちご狩りいいですね。流石静さんです」
「それほどでも」
「たーだ食い意地張ってるだけよ」
「代案がおありならどうぞ?」
「ないです……」
「もうー。いいじゃん。いちご狩りでー。あーしこういうのやってみたかったし」
「あたしもです」
「じゃあいちご狩りでいいか?」
「さんせーい!」「賛成です」「賛成よ」「ふっ」
どうするかな。食べ放題のところでいいかな。
俺はスマホを取り出して、今のうちに予約を入れておいた。
入れた直後に予約終了となった。残り一枠だったみたいだ。
いちご狩り以外にどこか寄るべきだろうか。
「なぁ、他に行ってみたいとこあるか?」
「んー、どうだろ。星羅はなんかある?」
「わたしは今のところ無いわね。当日までに見つけておくわ。静はなんかある?」
「ええ。ただ、順調にいけば……ですがね。少し計画してみます。寧々さんはありますか?」
「えっ! あ、あー。今のところ、特には……」
珍しいな。いつもなら『こことこことここ。あと、ここ!』みたいな感じでいっぱい提案してくるのにな。
まぁ、自分から立案するのは慣れていないのかも。
そう楽観視していたのが間違いだったと、当日思い知らされるのだった。




