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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第二章

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35 入学式/エピローグ


 今日は有給を使って入学式に来ている。

 まさか俺が、保護者として出席するとは思わなんだ。


 今日に至るまで、手続きとか色々と大変だった。

 というか、俺が保護者だということを説明するのが一番苦労した。

 一応、四人の親はそれぞれ海外で仕事をしていて、要職に就いてる為帰国できない。

 なので、日本に興味のある娘だけが帰国して、()()である俺のところに住んでいるって設定だ。

 叔父という設定に一番反発したのは寧々だが、何とか納得してもらった。


 「じゃあ写真撮ろうか」

 「いーねー。あの桜が映るとこがいいな」

 「そうね。丁度花吹雪がわたしを祝福してるみたいだしね」

 「そこは普通に綺麗だけでいいんじゃないの?」

 「そうですよ星羅さん。そんなに祝福が欲しいのなら……」

 静に続いてユイと寧々も桜の花びらを集める。


 「だからって地面に落ちた花びらかき集めなくていいわよ。唯も寧々もいらないわよ」

 「「「えー」」」

 「静もそういう反応するの珍しいな」

 「わたくしだって、年相応の女子高生なんですよ?」

 「そうだったな」

 そうして何枚か撮ったところで、後ろから声をかけられた。


 「おや。須永クンじゃないか」

 振り返ると、栗栖部長と二人の女性がいた。

 部長も今日有給申請していたのを思い出した。

 「あ、部長。お疲れ様です」

 「はは。そんな堅苦しい挨拶しなくてもいいよ。しかし、こんなとこで会うなんて珍しいね」

 「そうですね」

 そういえば、部長の三人目のお子さんは今年高校生だと言っていたが、まさか同じところだとは。


 「初めましてー。妻の敦子ですー」

 「ティノです」

 奥さんは明るいが、なんかぽわぽわしている。

 娘さんも奥さんに似て、なんか好奇心旺盛な感じがする。

 だってもう、うちの娘達の制服を凝視してるし。まぁ目立つよな。


 「へぇイケメンじゃん」

 「そうね。イケオジだわ」

 「いい歳の取り方をしてますね」

 「ちょ、お前ら」

 「いや、いいんだよ。実際事実だしねぇ。はっはっは」

 そんなとき、袖をクイクイと引っ張られた。


 「光司さんの方がイケオジですよ」

 「お、おう……」

 正直、おじさんとかおっさんって言われるとちょっと凹むんだよな。まだそんな年齢じゃないし。

 というか、そこまで老けてないし。


 そして、四人が挨拶をした。

 「(コージのお嫁さんの)唯だよー」

 「(光司さんの妻)寧々です」

 「(光司のワイフ)星羅よ」

 「(光司の細君こと)静ですわ」

 なんか前に変なのつけなかったか?


 「はっはっは。元気だねぇ。……申し遅れたね。須永クンの上司してる栗栖照だよ。よろしくねお嬢さん方」

 俺を見る部長の目がいつも以上に優しい。


 「写真撮るよ」

 部長がそう提案する。

 「え?」

 「家族全員で写りたいだろう」

 「ええ、まぁ」

 「それに娘さん達はもうその気のようだよ?」

 気がつくと俺の腕をユイと星羅が掴んでいた。


 「ではすいません。お願いします」

 「ああ」

 そう言った後に、ユイ達四人が自分のスマホも手渡した。

 これには流石の部長も……、ニマニマしている。流石だ。

 部長の奥さんも何台か受け取り、様々な角度で連写する。

 ポーズの指定までしてくる。意外だ。

 あらかた撮り終わった頃には一仕事終えた気分になっていた。


 スマホを受け取ると、今度は部長のスマホを渡された。

 もちろん奥さんと娘さんもだ。

 仲のいい家族ですね。

 俺とユイと星羅で撮っていく。

 入学式でやるポーズじゃないと思うんですよ。そういうのコミケとかでやるポーズだと思います。


 袖をくいくいされたので、そっちを見ると星羅が目を輝かせていた。

 「わたしもアレやりたい」

 えー……。

 他の入学生や親御さんがニコニコしながら通り過ぎていく中、アレをやる勇気はない。

 そもそもやる人なんて部長の家族くらいな訳で。


 「さて、そろそろ式場に移動しようか」

 まさか部長の家族にも振り回されることになるとは思わなかった。


 その後、粛々と進んでいき、寧々の入学生代表のスピーチとなったのだが、初めて見たよ。

 スピーチでスタンディングオベーションになったところをさ。

 俺も思わず立ち上がってしまったよ。

 これ、寧々には何か特別なものでも買ってあげた方がいいかもしれないな。


 「なぁ須永クン」

 「どうしました?」

 「あの子、卒業後うちに入ってくれないかな?」

 「どうでしょう」

 「だよねぇ。勝手に拘束しちゃいけないよね。ごめんごめん」

 本気ではなかったのだろう。あっさりと撤回した。

 俺も寧々達の将来は好きにさせてやりたいからな。

 家で引きこもってるより、ここでいっぱい友達とか作ってくれるといいなと思った。

 こんなこと考えていると、またぞろ父親みたいだと言われかねないな。

 そんなことを考えながら、入学式が進んでいくのを眺めていた。


           *      


 某国、研究所──

 『ああもう……。間に合いませんでした』 

 凛としたその声は、焦燥と悲嘆を帯びていた。

 『皆さん、急ピッチでお願いしますよ』

 研究室内では十数人の人物が慌ただしく動いていた。

 その人達は、唯が壊していった室内を大急ぎで修復していた。

 室内の液体を排出し終わり、やっと作業ができる環境になった。

 水でショートした機械を入れ替えたり、新たなタンクを増設したりしていた。

 『他二箇所のデータも供与しているんですからね。急いでくださいね』

 その声は慈愛に満ちていた。

 一旦動くのを止め、声のする方へ九十度に折れてお辞儀した。

 そして、その声の主に報いる為、再度作業を開始した。

 『光司さん待っていてくださいね。早矢はすぐに会いに行きますからね』


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