31 学校へ行こう①
夕飯を食べ終え、食器を洗いながら考える。
今後もこういうことが起きるのだろうか、と。
そういえば、部長が言っていたな。下の子が今年受験だと。
あいつらも年齢的には四月からは高校生なワケだ。
あいつらちょっとズレてるんだよな。
なんというか、知識が偏っているというか、抜け落ちているというか。
四人がお風呂から上がったので、俺もお風呂に入りながら続きを考える。
こんな狭い部屋に閉じ込めておくのは違うと思うんだ。
暗く狭い場所から広い世界に出たのだ。例えそれが俺に会う為だという理由でもな。
「学校なぁ……」
そういえば、四人とも有名校の制服着てきたんだよな。
どこから持ってきたんだというのは置いといて、やっぱりそういうのに憧れがあるのかもしれない。
学校に行けば少し常識も覚えるだろうし、やりたいことも見つかるかもしれない。
しかしどこの高校がいいのだろうか?
四人とも同じところがいいのかそれぞれ別がいいのか。
女子校か共学か。
そもそもちょっと特殊な事情を勘案してくれるところはあるのだろうか?
「少し相談してみるか」
可能性の一つとして調べる必要はあるだろう。
お風呂から上がると、四人がジェンガをやっていた。よくもまぁそんな綺麗に積み上げられるなと感心していた。
河原の石でも高く積み上げられそうだ。
きっと何かまた賭けているんだろう。
「今日は何を賭けているんだ?」
「え、なんにも賭けてないけど」
「そうよ。まったく失礼ね……」
「すまん……」
いつも何かしら決めてやっているんだと思ってた。
「じゃあ、光司さんもやりませんか?」
「いいのか?」
「あら。やるなんて珍しいわね」
「別にやらないなんて言ってないさ。四人以上でできるゲームじゃないから、言わなかっただけさ」
「…………」
何かを含んだ微笑みで俺を見る静。何か言いたいんなら言っていいんだぞ?
「じゃあ、折角だしさ、何か掛けようよ」
「いいわね。光司の貞操とか?」
「えっ!」
「いいですね」
「だ、ダメですぅ」
「でも、こういう機会じゃないとー」
「確かに……アリ……かも……」
「ねーよ!」
前言撤回。やっぱこいつらダメだな。
「分かった。お前ら学校に通え」
「「「「えっ!?」」」」
「もう少し常識とか倫理観とか覚えないとダメだ」
俺が絡むと多分、まともに受け取ってもらえない気がする。
「分かりました」
静が目を閉じて言う。
そしてうっすらと口角を上げ、微笑む。嫌な予感がする。
「光司がジェンガに勝ったら。ですね」
「ジェンガの負けはともかく、勝ちってどうするんだ?」
「倒す前の人じゃないですかね?」
「なるほど」
「で、俺が負けたらどうするんだ?」
「別に学校に通ってもいいですよ」
「うん。なんか楽しそーだしね」
「女子校でも共学でも女帝になる自信があるわ」
「ははは。星羅さんがピエロになる姿しか見えません」
「あはっ。あんたわたしのことバカにしすぎ」
「はわわわわ……」
「いいわ。わたしが勝ったら静に土下座させるわ」
「いいでしょう。わたくしが勝ったら星羅さんにバニーガールの格好をさせます」
「勝っても着てあげるわよ」
「!?」
「あ、いいこと考えた」
星羅が俺を見てニマニマとする。
「光司が負けたらバニーガールの格好してもらいましょう」
「いいねそれ」
「ええ。うさぎさんは何匹いてもいいですからね」
「え、ええっ! こ、光司さんがうさぎさん……」
どうしてこんな流れに……。
「勝てばいいのですよ。勝てばね」
静がふふふと笑う。
「そうよー。勝てばいいのよ光司」
星羅がいたずらっ子の顔で俺を見る。
「あ、あーし、光司が着たらあーしも着るね」
「あ、あたしも……お揃いで……」
ユイと寧々は少し恥ずかしそうにしている。
これは負けられないな。
「まぁ、一回じゃあれだから、三本勝負としましょうか」
「そうですね。三回負かせてあげますよ。ふふふふふ……」
静は絶対に違う目的があるだろう。
そうして負けられない戦いが始まったのだった。
「くっ……」
床に膝をついて呻く静。
「諦めろ静」
「ですが……」
「仕方ないだろう」
「諦めきれません!」
なんでそこまで意地をはるかなぁ……。
「どうして……どうしてっ……」
「ねぇ光司」
「ダメだぞ」
「まだ何も言ってないじゃない」
「買わんぞ」
「くっ……」
そう。バニーガールの衣装なんて持っていないのだ。
白熱していて全員気づいていなかったのだ。
一回戦目と三回戦目の勝者が静、二回戦目の勝者は星羅だった。
ちなみに敗者は三回とも俺だが、ある意味で勝者と言えるだろう。
静かにすっくと立ち上がる静。
「光司」
「な、なんだよ」
「私のうさぎさんパジャマを着なさい」
「いや、サイズが合わないだろう」
「大丈夫です。私のは大きめのサイズですから。ふふっ」
「だって。着てあげたら?」
「…………」
素直に着てもいいんだけど、素直に応じるのも嫌だなぁ。
ユイと寧々も期待に満ちた目をしている。
「首席で入学できたら考えてもいいな」
「言いましたね光司。その言葉忘れないでください」
「ああ」
「首席ね。そんな簡単な条件でいいなんてジェンガやるより楽よ」
「ふふ。あたしもがんばっちゃいますよ。光司さんのうさぎさん見たいです」
「待って、え?」
「コージ可愛くしてあげるっしょ」
なんで全員首席で受かる前提で話してるんだよ。
え、これ本当に俺着る流れなんか?
その前に、どこの学校にするかいろいろ考えないといけないな。
「あーし制服が可愛いとこならどこでも」
「あ、あたしはお料理できるとこなら……」
「ふっ。トップを狙えるならどこでもいいわ」
「わたくしは……校則が厳しくなければ」
おい。何をする気なんだ。
「あ、それマストだよね」
「そうね。わたしがいろいろ書き換えられるところなら尚いいわね」
アカン。おかしい方に向かってる。
「光司さん」
「どうかしたか?」
「本当の女子高生ですね」
「そう……なりますね」
「嬉しいですかぁ?」
なんでそんな含みある言い方をするんだ。
星羅や静が言うならまだしも寧々が言うとなんか怖いな。
「ふふっ。期待に応えられるよう頑張りますね」
「あっはい」
寧々さんがなんか怖い。
「ほ、ほら。もう遅いから寝なさい」
「はーい」「はい……」「はいはい」「はぁ……」
静だけ納得いってないな。まぁ暫くすれば忘れるだろう。
四人は素直に部屋へと戻っていった。




