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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第二章

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28 定時で帰る為に


 「すぅなあがくんっ!」

 出社早々、鮎追係長が汚いダミ声で俺の名を呼ぶ。


 「おはようございます。三日も休んですいません」

 「ほぉんとだよっ。どんだけ忙しかったか分かるかいっ!」

 普段その仕事全部やってるのが俺なんだがな。


 「普通こういう時は、菓子折りの一つでも持ってくるんだあっ!」

 ねーよ。お前も持ってきたことないだろ。


 「ほら、これ、終わってないから今日中な?」

 布藁主任が山のような書類の束を俺の机へ置く。

 それ、パソコン打てないんだが。


 「おれ達がどれだけ大変だったか、君も知るといい」

 「そうです。私なんてこの三日帰らなかったんですからね」

 どうせいつもみたいに、関係ない話して帰らなかっただけだろ?


 書類の日付を見ると、俺が休んだ一日目の日付だ。

 もうこんだけ経ってたら、リカバリー大変なんだが……。やってなかったな?

 そんな感じで見ると、気まずそうに視線を逸らす二人。


 「あ、データも送っときましたので、確認お願いします」

 場の空気を読まずに足木主任が追い討ちをかけてくる。


 「ほ、報告は私がやっておくので、君は今日中に片付けるようにぃい」

 これさぁ、パワハラだよねぇ。

 どっかの芸能人の口真似を頭の中で再現する。


 まぁ、いつものことだしな。このくらいの量なら今日中には終わるだろう。

 問題は、この中にリカバリーできない案件がどのくらいあるか、だな。

 それを考えると、休まない方が良かったと、今までは思っていた。

 だが今は違う。ちゃんと定時で帰れるようにするか。


 「なぁに笑ってるんですかあ! さっさとやってくださあい!」

 どうやら、彼女達のことを考えていたら、自然と微笑んでいたようだ。


 「やりますよ」

 「おかしいねえ」


 俺が呆れまじりに言ったと同時に後ろから声が聞こえた。

 鮎追係長と布藁主任が比喩でない手揉みをしながらニタつき始めた。

 足木主任は我観せずといった感じでスマホをいじっていた。


 「ややっ。これは栗栖部長。今日は何用で?」

 いつも通り、上にへいこらするな。

 だが、栗栖部長は他の役職者と違うのをそろそろ知った方がいい。


 「ん。いやぁ、ボクのところまで、声が聞こえてね」

 「それは失礼をしましたぁ。ほら、須永君も謝るぅ!」

 「その必要はないよ」

 「と、言いますと?」

 汚い顔に見合わないキョトンとした表情をする係長。

 主任もポカーンとしている。


 「だってそれ、キミ達が依頼された案件だろう? この三日間ずっと喋ってたけど、そんなに余裕ならさぞ、順調に進捗してるんだろう?」

 流石部長。よく見てる。

 その言葉に顔を白くさせる二人。


 「いえ、その……」

 「ん?」

 「全く進んでません……」

 部長が軽く圧をかけると、あっさりと白状する。


 「おかしいねぇ。いつも報告では、キミが当日中に完了させたとあるんだが……」

 「はい。それは事実です」

 嘘をつくなヒゲだるま。全部俺がやって、お前が手柄だけ持ってってるんだろうに。

 まぁ、今まで興味ないから放置してた俺も悪いけどさ。


 「なら、出来るよね?」

 「いえ、それは須永君に全部……」

 「キミ達三人が頼まれた案件なのに?」

 「「はい」」

 「今日までやってなかったのに、それを全部押し付けるのかい?」

 「「は、はい……」」

 「で、自分の名前で報告する、と」

 「「はい。あっ……」」

 バカだなぁ。あっさり自滅するなよ。

 もう一人の主任は気にせずスマホをポチポチしてるな、大丈夫か? 状況分かってるのか?

 それよりも、部長が面白そうなこと見つけたって顔してる。


 「実は、須永クンを借りたくてね」

 「ははっ。どうぞ煮るなり焼くなり」

 「そうかい。じゃあ借りていくよ。その仕事はちゃんとキミ達三人でやるんだよ?」

 「「「……」」」

 「出来ないのかい?」

 「出来ます!」

 「ちょ、係長!」「……」

 「ん。じゃあ、頑張ってくれな」

 そうして俺の肩をポンポンと叩いて、移動するぞ、と促す。

 さっきから振動しっぱなしのスマホが煩わしくて、つい電源をオフにしてしまった。


 部長の後をついて会議室に入る。

 「少し変わったか?」

 よく見てる人だな?


 「ええ、分かりますか?」

 「勿論さ。それにしても、よくあんなとこで頑張る気になるね。本当なら課長にはなってるだろう?」

 「そうですかね? あんまり興味なくて」

 「それで奴隷やってちゃ、ダメだよ」

 全くもってその通りだ。反論できない。

 だが、部長はそんな俺を見て軽く肩をすくめた。


 「ボクの下につくといい」

 「え?」

 「ちゃんとこなせば、定時で帰れるよ?」

 確かにそれは魅力的だ。夕飯の準備もあるしな。

 イケオジがウインクすると絵になるなぁ。


 「でしたら、是非」

 「そう言うと思ってたよ。早速今日から移ろうか」

 引き継ぎとか必要だと思ったが、そもそも俺の意見はスルーされてたから、不要だなと結論づけた。

 しかし、部長はフットワーク軽いな。

 だから出世するんだろうけど。

 俺も来月の支払いとかヤバイから、そろそろどうにかしないとマズイな。


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