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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第二章

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26 壊したくない日常


 まずはお昼用に寧々の言っていたチキンのトマトクリーム煮とバゲット。

 デザートはほうじ茶のティラミスかな。


 食べてくれる人がいるっていうのはいいね。作りがいがある。

 こっちはほぼ完成だ。

 そう思っていたら、チャイムが鳴った。

 どうやら一昨日頼んでいた衣装ケースなどが届いたみたいだ。


 四人が和気藹々と話している。ディスカッションとは?

 「なぁ衣装ケースとか届いたんだけど、服とかしまうだろ?」

 「あ、そうですね」

 そこで、一つ思い出した。


 「どうかしましたか?」

 「洗濯するの忘れてた」

 「ああ……」

 俺含めて全員忘れていたようだ。

 とりあえず、衣装ケースなどを寝室に運ぶ。部屋が少し狭くなったな。

 「じゃあ、洗濯してくるから、しまっといてなー」

 「わかったー」

 元気な返事が返ってくる。

 だが、俺は後悔した。

 洗濯カゴに山積みの女性ものの衣類。

 まぁ、洗濯表示を見ながらやれば問題ない。

 問題は──


 「これこのまま洗濯機放り込んでいいのか?」

 念の為、スマホで調べる。

 「嘘だろおい……」

 知らなかった。

 ……分けるのかよ、これ。色物と白だけじゃないのか? ネット必須? ……初耳なんだが。

 これ干す時はどうするんだ? ……形が崩れるとか書いてあるんだが……。

 渡辺さんが憤るのもわかるわー。

 ……女の人って大変なんだな。

 ……えーっと、洗濯機にはランジェリーコースはあるが、ネットがない。

 「手洗い……するのか……くっ……」


 「光司……」

 その声にビクッとして振り返る。

 確かにこの状況を見たら、ただの変態だな。

 スマホ片手にブラジャー持ってるわけだし。

 「あ、いや……これは……」

 「ふーん。わたしの下着をそんなに分析したかったのね」

 にんまりと口角を上げて、まるでおもちゃを見つけた子供のような顔をしている星羅。


 「ふふ……ちゃんと覚えなさいよ。これから毎日やることになるんだから」

 「うっ……」

 そうだよな。洗濯するのは俺だもんな。

 「そうですよ。ちゃんと丁寧に扱ってくださいね。わたくしのように」

 静までもニマニマしている。


 「もう。そんないじめちゃダメですよ。これあたし達のものですし。……ごめんなさい。あたしもやりますよ」

 「寧々さん……」

 「もう、言ってくれればあーしやったのにー」

 「すまんな。こんなめんどくさいと思わなくて」

 「でもホントめんどくさいよねー」

 「ですねー」

 俺はユイと寧々に任せてそそくさと脱衣所を出る。


 「え、やめちゃうの?」

 「そうですよ。もっといじってくれていいのですよ」

 「どっちなんだよ」

 全くこの二人は悪ノリすると手強いんだよなぁ。

 スマホで買えるだけ専用ネットをポチる。

 転売屋かって思われるくらい多めに買っておいた。

 「ホントそういうところはマメよね」

 「ええ。忘れる前にやるのは感心ですが」

 「あれを一個一個やるとなると、な」

 今は寧々とユイが代わりにやってくれてるが、俺もやることになるんだろうしな。


 「で、片付け終わったんか?」

 「終わったわよ。入れるだけだもの」

 「そっか」

 確認の為に部屋を覗く。四人分だと流石に狭いな。

 「引っ越し考えないといけないな」

 「え、引っ越すの?」

 星羅が少し悲しそうな顔をする。


 「だってなぁ、荷物置いたら狭くなるし、それぞれ部屋も欲しいだろ?」

 「でも、ここが初めてみんなで集まった場所だし」

 「星羅……」「星羅さん……」

 星羅がそんな気持ちを抱いていたなんてな。


 「ぶっちゃけ、契約更新の時期なんだ。家賃も上がるしな」

 「そうなんだ」

 「それにこのままだと、静の集めたぬいぐるみで部屋がパンパンになるしな」

 「光司……。わたくしはそこまで酷くはありませんよ」

 すまんな静。ちょっとその顔は信用できないわ。


 でも、そうだな。

 ここは四人が始めて来た場所だもんな。まだ三日しか経ってないのに、そんなに愛着を持っているとはね。

 引っ越ししたくない子供ってこんな気持ちなんだろうか……。


 子供……?

 おかしいな。会う前は、あんなにも好きだ、愛してるって言ってたのに。

 会えて、すごく嬉しかった。

 なのに、今のこの気持ちはどうだろうか。

 手放したくないという気持ちと、この先を……彼女達の成長が見てみたくなった。

 ……恋愛ってなんだろうな。

 多分。恋心とは違うのだろう。

 ……でも、嫌じゃない。これは──


 「ちょっと光司、深く考え込んでどうしたのよ」

 「そうですよ。もしかして一軒家の購入を考えてますか?」

 「あ、それいいね。庭いじりも出来るし」

 「ペットも買えますね」

 まったくどうしてこうも愛おしいんだろうな。

 「そうだな」

 「あ、ちょっと何その空気ー」

 「そうです。ずるいです。何を話してたんですかー」

 俺はこの日常を壊したくないな。


 「いや、静がぬいぐるみを集めたら部屋がパンパンになるなって話をな」

 「よろしいのですか」

 おい。そこは否定しろよ。なんでそんな嬉しそうなんだ。

 「ふっ。……バカね。光司はもっと素直に伝えたらいいのよ」

 星羅が全部見透かしたように言う。


 「やっぱり何かあったでしょ」

 「白状してくださーい」

 「じゃあ、せっかくだし、お昼を食べながら話し合おうか」

 いい感じにできたからな。お昼ご飯は寧々とユイの希望したメニューだ。

 少し早いが、まぁいいだろう。


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