19 ただいまとおかえり
帰ってきた。途中までは良かった気がする。
帰りにスーパーで必要なものだけ買おうとしたのに、次から次へとお菓子やらジュースやらを入れてくるもんだから、途中からカートにカゴを乗せる羽目になってしまった。
主にユイと星羅の二人が原因なんだがな。
寧々は俺の横で微笑んでるだけだし、静は毛だらけなので、外で待たせた。
スーパーを出ると、静から非難の言葉を浴びせられた。
仕方ないだろう。食品を扱う場所でその毛量は流石に見過ごせない。
どこかのファッションショーならありえなくもないが、そんな服で歩いてる人なんていないだろ?
一応ユイが機転を利かせて、買ったお菓子を見せたら黙った頷いた。
「寧々は何も買わなくて良かったのか?」
「はい。食べ過ぎると太ってしまいますし、虫歯になりたくありませんから」
「偉いぞ」
「えへへ」
「え、でも動けばよくない?」
「そうよね。毎日走れば維持できるでしょ?」
ユイと星羅が運動すればオッケーみたいなノリで言う。
「いや、あたし運動はちょっと……」
俺も分かる。なんであんなシンドイ思いしないといけないのか。
俺と寧々は同じ価値観を持つもの同士として、話が合いそうだ。
静がどっち派なのかは、黙っているので分からないが恐らく後者だろう。
マンションの部屋に入る前に静を手で制する。
「む。どうして入れてくれないのですか。俺たちの家、でしょう?」
小首を傾げてかわいく言うが、そのまま入れるわけにはいかない。
買い物袋の中からコロコロを取り出す。
「なっ! そんな……。光司は鬼ですか! 悪魔ですか! 折角の猫さんの毛を纏っているのに、それを取れと言うのですか!」
「そうだよ。そんなもんつけて家に入れるわけにはいかないだろ。というか何をそこまで頑なになるかが分からないんだが……」
一体どんなこだわりがあるのだろうか。
まぁ、説明されたところで理解はできないがな。
静が言い訳をする前に容赦なくコロコロで毛を取っていく。
「あ…ああっ……」
そんな声を出すな。
「ちょ、そこは……どこを触っているんですか光司……」
全身満遍なく毛だるまになりやがって。
感情を無にしてコロコロと毛を取っていく。もういいかな?
「おし。もうないかな? じゃあ入っていいぞ」
「恨みますよ光司」
そんなドスの利いた声で言われてもなぁ……。
「なぁ静」
「なんです?」
「最低限のマナーは守ろうな?」
「……善処します」
それ絶対守らないやつ。
まぁいいや。とりあえず中に入ると、寧々がトテトテと近寄ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「「…………」」
俺より先に静が言う。
「……ただいま」
「はい。こういうのいいですね」
「ああ」
「わたくしのはスルーですか?」
空気読んでくださいよ静さんや。
「あっ! あーしも言う! コージおかえりー」
「ああ。ただいま」
「おかえり光司」
「ただいま」
ユイと星羅も顔を少し朱らめて言った。
俺より先に入っただけなのにな。
隣を見ると、なぜか静が頬を膨らませていた。
変なことしてるからそうなるんだぞ?
「光司、ただいま」
「ああ、おかえり」
何故か満足げな顔をする静。
四人はそれぞれ買ってきたものをしまいに部屋へ戻っていった。
俺も買ってきたもので、使わないものは冷蔵庫にしまっていく。
俺も少し疲れたな。主に頭が。
ソファに座ろうと思ったところで昨日の事を思い出し、テレビを台ごと移動する。
これでゲームしやすくなっただろう。配線回りだけ整理して、と。
「光司ー」
「どうした星羅?」
「これ、ちゃんと持ってなさいよ」
そう言ってカエルのぬいぐるみを俺の顔面に押し付ける星羅。
「もう少し丁寧に扱えよ」
「あら、そんなにわたしのこと大事にしてくれるのね」
調子狂うな。だが、まぁそうだな。
「そうだよ」
「あ…うん……」
自分で言ったんだから、責任持って回収してくれよ。
そんなやり取りをしていたら他の三人も部屋から出てきた。
「まったく。お熱いことで」
「いいじゃないですかー。ねぇ」
「そーだよ。…じゃあさ、あーしらもやってもらおーよ」
「あら、それはいいですね」
俺は聞かなかったことにして台所へ向かった。
「あ、コージ逃げんなし」
「そうですよー。折角踏み込んでくれたじゃないですか」
「ふむ。星羅だけが徳をしたわけですか……」
毎日そんなことやってたら、俺が俺じゃなくなりそうだからな。そんな俺は見たくないだろ?
でもまぁ、たまにならやってもいいだろうと勝手に結論付けた。




