18 家に帰ろう
「さて、と。いっぱい遊んだし帰りましょうか」
「そうだな」
「結構いい時間だしね」
「材料も買わないといけませんしね」
星羅の提案に、みな頷いた。
──ただ一人を除いて。
「待ってください」
「静っちどうしたん?」
「最後に下の雑貨屋さんでキツネとタヌキを買っていきたいのですが」
まったく……。
可愛い好きも、ここまで来ると少し怖いな。
「寧々と星羅がいるからいいだろ」
「待ちなさい。どうしてわたしと寧々になるのよ」
「そうですよ。確かにかわいいとは思いますが、どうしてあたし達になるんですか」
なんとなく雰囲気が似ているからだなんて言えない。
失言だなんて言えない。どうすっかな。
「ほら、二人とも可愛いだろ? 愛くるしいし」
「「…………」」
「あ、あれ?」
いけると思ったんだが。
「光司さん」
「は、はい。なんでしょう」
「可愛いって言ってくれるのは嬉しいです」
「そうね。一歩前進だと思うわ」
「でも光司さん。素直にあたし達がかわいいのか、動物っぽくてかわいいのかどっちなんです?」
「答えられないわけないわよねー」
寧々が期待に満ちた目で見つめ、星羅がニタニタと言えないだろうという顔をしている。
「ふっ…。バカだなぁ。素直に可愛いと思ってな。つい口から漏れてしまったんだ」
「光司さん……」
寧々がほうっとした顔で見つめるが、すぐに表情が変わる。
「それでは、あたしと星羅がいるから十分って答えになりませんよ」
「うっ……」
「まぁ、光司にしては一歩前進ってことでいいんじゃない?」
「そうですねー」
そんな様子を黙って両肘をついて見ていたユイと静。
せめて何か突っ込んでくれてもいいと思うんだが。
チラッと見ると、ユイ少しだけ笑った。
「今のはないよねー」
ユイが明るく笑いながら言い。それに静が反応した。
「ええ。もちろんです。76点ですね。……前回より減点です」
「お、おう……」
まぁ、今のは仕方ないか。
「でもさー、どっちもじゃダメなの?」
「「え?」」
「どっちもかわいいじゃん。コージがかわいいって思ってるってことだけは本心だと思うなー」
「唯さん……」「唯……」
寧々と星羅が顔を朱らめる。ユイに助けられた感じかな。
そんなユイはサムズアップしてウインクしていた。
「唯さんは流石ですね。8点進呈します」
「やったー。ちなみにこれ溜まるとどうなるの?」
「…………考えておきます」
流石の静でも案を用意出来ないことがあるんだな。
俺も溜まったら何かくれるのだろうか。そんなことを期待してしまった。
結局、静には我慢してもらい、そのまま外へ向けて歩き出した。
そもそもそんな毛だらけで他のお店になんて入れられない。
どこかでコロコロを買わないといけないな。
中とは打って変わって、外は寒かった。
芯まで冷えそうなくらいだ。
お陰で頭が冴えてきた。
前を四人が仲良く歩く姿を見ながら、今日のことを少し思い出していた。
『全員を求めろ』か。
俺は英雄王じゃない。ただの一般人なんだ。
だから全部なんて選べない。
──それでも。
手を離したくないと思ってしまった。
それだけは、はっきりとしている。
だからきっと、言葉じゃ足りない。
形にしようとすればするほど、こぼれ落ちていく。
……なら、掴み続けるしかないんだろうな。
『俺にできるだろうか?』じゃなくてやらないといけないんだ。
約束したからな。
四人が振り返り、俺にそれぞれ色違いの笑顔を向けた。
四人の目をそれぞれ見る。
「帰るか。俺たちの家に」
「あっ、いーねそれ。ふふふ」
「光司さん、その言葉嬉しいです」
「俺たちの家、か。悪く無いわね」
「その言葉を待ってましたよ」
少しは踏み出せたはずだ。
冬の空気が、ほんの少しだけやわらいだ気がした。




