16 少し遊んでいこう③
微妙な空気のまま歩くと、近くに射的の屋台があった。
射的ってやったことないんだよな。
ユイはそれを見るなり目を輝かせた。
「コージコージ、あれやりたい」
「大丈夫か? さっきの輪投げでもあんまりだったじゃないか」
「ちょっと慣れてないだけ。でも銃ならあーし達完璧だし」
「そ、そうか。まぁ、自信あるならやってごらん」
「ふふん。見ててよー」
どういう判断基準だか分からないが、まぁそう言うなら大丈夫だろう。
店員さんがコルクの詰め方とか打ち方とかをユイに教えていた。
知ってはいるんだろうが、ふんふんと頷きながら聞いていた。
「じゃあコージ何が欲しい?」
特に欲しいものはないんだよな。
奥を見ると、コラボイベントのキャラクターのポスターのようなものが貼ってあった。
あのピンクの髪の女の子が主人公かヒロインなんだろうか。他にもオレンジ、黄緑、水色、紫、赤といるな。その隅に小さく他のキャラクターも描いてあった。
「ユイの欲しいものを狙えばいいんじゃないか?」
「もう……」
そんな時、真横ですごい勢いで、連続でコルクの発射される音がした。
一体どんな技術を持ったプロがやっているんだ?
そっちを見ると、寧々がこっちに銃を向けて微笑んでいた。
「こら、危ないぞ寧々」
「えへへ。全部外してしまいました」
そう言ってすぐに銃を下ろした。
少しだけ見えてたけど、弾はすべて的の横。同じ場所をかすめていた。
偶然とは思えない、綺麗すぎる外し方だった。
その証拠にユイは全発的中させていた。
「ふふん」
得意げな顔で景品を貰っていた。
全部のキャラクターの描かれたタペストリーだ。
「コージにあげるね」
「あ、あぁありがとう」
「むぅ。あたしもちゃんと当てれば良かったです」
「もう一回やればいいじゃないか」
「いえ、もうその必要はないので」
「?」
「あたしは光司さんの選択を尊重しますから」
それは期待しているようで、俺がどういう選択をするのか分かっている表情だ。
寧々は不器用だな。そんな分かりづらい方法しなくてもいいのに。ついつい頭を撫でてしまう。
「えへへ」
「あ、ずるい。コージあーしも」
「はいはい」
並んだ二人の頭をナデナデする。こんなところで、こんなことすると恥ずかしいんだが。
店員さん達がおかしそうに微笑む。
「お父さんも大変ですね」
「分かります?」
「ちょ、コージ!」「光司さん……」
別に間違っていないだろう? それに今はそっちのが都合がいいんだ。
「そういえば、静さんは見つかったんですか?」
「ああ。猫カフェみたいなとこにいたからそっとしておくことにしたんだ」
「なるほどですね。見つかってないのに、遊んでるわけないですもんね」
たまーに寧々は毒を吐く。
「じゃーさ、寧々も一緒に回ろっか」
「いいですね。静さんの邪魔をしては迷惑になりますからね」
その場を離れアトラクションのコーナーをめぐることにした。
姉妹でこんなにも違うんだもんな。星羅は意気揚々と見に行ったしな。
それからアトラクションを三人で廻るのだが、店員さんもびっくりするくらい手裏剣や矢を中心点に当てるんだもんな。当てる毎に俺を見るもんだから気が休まらない。
その後魚釣りのゲームをやると、まさかのランキング一位。
二人が組むと、こんなにも連携を取れるのかと驚かされる。
さて、そろそろいい時間だな。
猫カフェへ行くとなぜか、店の外で、珍しく露骨に悔しそうな顔をしていた。
「どうしたんだ星羅?」
「あ、光司ちょっと聞いてよ……」
しかし、星羅がそれを語る前に静がお店から出てきた。
恐らくだが、俺がユイと寧々の二人で遊んでいたからだろう。
一瞬戸惑って言い淀んでしまって、口を噤んでしまった。
「おや、皆さんお揃いで」
「勝手にどこか行くんじゃない」
「おや。心配してくれたんですね」
頬を少し朱らめて目を細める静。何でも出来るからと、少し自由がすぎる。
「せめてどこ行くか言ってからにしてくれ。トラブルに巻き込まれたかもしれないって心配するだろ」
「光司くん」
素が出るとくん呼びになるところは置いておいて、少し反省してくれるといいんだが。
そんな静は両手を広げて飛び込んでこいといった顔をする。
「抱きついたりなんかしないぞ?」
「な、ここは抱きしめあって、互いに気持ちを確認しあうところでは?」
ちらっと横を見ると、三人とも真顔だ。そうなるのはもっともだな。
だが、抱きしめたくない最大の理由はそこじゃない。
「静、そんなに猫の毛だらけで抱きしめるわけないだろう?」




