↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

229/240

番外編82 喫茶愛花夢


 俺が用事を終えて、家に帰るととんでもないことになっていた。

 「こんなところで何をやっているんだ?」

 「あ、光司」

 真っ先に反応したのは星羅だ。


 早矢は果物が入った袋を奥へと運んでいた。

 問題はユイ、寧々、静だ。玄関で仰向けで寝ている。

 いくら初夏で蒸し暑いといっても、こんなところで涼を取るのはどうなんだろうな。


 エアコンでもつければいいのにと思ったら、どうやら畑仕事して疲れて動けないようだ。

 まぁ、慣れないと大変だけど、寧々も同じなのはどういうことなんだろうか。


 「あ、光司さん。えへへ……。ひどい格好を見せちゃいましたね」

 なんとかよろよろと立ち上がる。


 「帰りに歩いたのが堪えまして」

 「じゃあ、食べに行くのとか無理だよな」

 その瞬間、床とお友達になっていたユイと静が一気に立ち上がった。


 「行く行く! 行くっしょ!」

 「そういうことは先に行ってください」

 そんなにお腹空いていたのか。ちょっと時間かかるんだけどな。


 横を見ると、寧々と星羅がニンマリとしていた。

 そして、気がつけば、奥にいたはずの早矢がよそ行きの格好になっていた。


 「ちょ、早矢っち早いっしょ」

 「わたくしたちも汗臭いですからね。まずシャワーを浴びてきましょう」

 そうして四人はぞろぞろと奥へと行った。元気だな。


 「早矢は……、浴びてきたのか」

 「はい。やることは先にやるタイプですから」

 「そうか」

 すごく近い気がする。玄関にいるのもあれだな。

 そう思って、リビングで待つことにした。


 もらってきたという果物を見る。

 メロン、いちご、びわ、ブルーベリー。すごい量だな。お菓子やジャム作っても余裕で余るな。


 「ところでどこに行こうとしていたんですか?」

 「ん? ああ。部長にオススメされていた喫茶店があってな。喫茶店と言っても、パフェとかスイーツがメインでな。ずっと行こう行こうとは思ってたんだよ」

 「へぇ、いいですね」

 「みんないるからいい機会だなって」


 一人で行っても虚しかったからな。

 そんなことを話していたら、いつの間にかよそ行きの格好に着替えていた。


 「じゃあ、行くか」

 そうして駅へ向かって歩き出す。

 「ちなみにその場所ってどこなんですか?」

 「中野にあってな」

 「へー」

 「「「え?」」」

 なぜかユイ、寧々、静が立ち止まった。


 「どうした?」

 「あーしらさっきまでそこいたんだけど」

 「ええ、いましたね」

 「でしたら前もって言ってくれれば、そこで待っていましたのに」

 「すまんな」

 「別にいいじゃないのよ。ねぇ」

 「そうですよ。みんなでお出かけなんて久しぶりなんですから」

 星羅と早矢は大人だなあ。


 ということで、目的の喫茶店『愛花夢』に来た。

 名前だけ聞くと昔流行った感じの店名だが、入店待ちで並んでいる人は若い人がほとんどだった。

 …………俺だけ浮いてないかな?


 「ここ、超有名店じゃん」

 「ええ。何回かテレビにも紹介されてましたね」

 「来よう来ようとは思っていたんですよね」

 ユイ、寧々、静がお店を見て驚いていた。


 「静さん、光司さんと同じこと言ってますね」

 早矢がニコニコしながらそんなことを言ったら、静は少し頬を朱くして俯いてしまった。


 「静のこんな状態なかなか見られないわね」

 星羅がそう呟くと、静はなぜか星羅の服を摘んだ。


 「(な、何よ)」

 「(いや、ちょっと嬉しくてつい)」

 「(ホントにレアだわ!)」


 二人は仲いいなぁ。ユイも寧々と話しており、俺も早矢と話して時間を潰していると、気がつけば席が空いたのか、店内へ入ることができた。


 そうして六人掛けの席に座る。

 店内は意外なことに大正ロマン風の内装になっており、ウエイトレスさんも矢絣の二尺袖に袴にブーツというスタイルだ。


 飲み物に関しては、コーヒーとカフェオレのみ。普通の豆とデカフェの二種類だ。まぁ、豆の種類はそこそこあるんだけどな。


 逆にスイーツはすごい。パフェは季節のフルーツを使ったものだけらしい。

 今は、いちご、メロン、マンゴー、ミックスベリー、びわ、デコポン、桃と迷ってしまう。

 他には、フルーツを使ったロールケーキやタルト、シュークリームにパニエと焼き菓子も豊富だ。


 そしてみんな決まったようだ。

 ユイはいちご。

 寧々はびわ。

 星羅はミックスベリー。

 静はメロン。

 早矢はデコポンを選んだ。

 ちなみに俺は桃にした。


 そうして、注文をして待つのだが、みんなの様子がおかしい。

 「どうした?」

 「いえ、会ったことがあるようなないような方がいまして」

 「?」

 「そうなのよ。会ったことあるはずなんだけど、どこだったかしら?」

 「どの人?」

 みんなが指し示す人は、かなりの美少女だった。

 それに動きもテキパキしていて、かなりベテラン感がある。


 「あの黒髪ロングの子。でも、あんな可愛い子見たら忘れないはずなんだけどなー」

 「そうですね。つい最近も会った気がするんです」

 「学校……ですかね?」

 みんなが分からないなんて珍しいこともあるもんだ。

 腕を組んで、眉間にしわを寄せて考えている。なかなかにレアな光景だ。

 アホ毛が似合いそうな顔してるのにな。


 「お待たせしましたー」

 その声と同時に思考を中断したようだ。

 「おや、愛花さんではないですか」

 「あら、ホント。着物も似合うわね」

 「えへへ。でしょう?」

 静と星羅がそう言うと、頭にカラフルなヘアピンでツノを二つ作った、さっきとは別の子が持ってきた。

 さすがに重いのか台車で運んでいる。


 「可愛いよ愛花っち」

 「ありがとう」

 ユイがそう言うと、頬を朱らめてはにかんだ。


 「ここでバイトですか?」

 「いや、ここうちのお店なのよ。今日はお手伝い」

 寧々が言うと、お手伝いだと言った。一人だけ缶バッチとかつけてるしな。


 「もっと早く言ってくれればよかったのに」

 早矢が冗談っぽく言うと、「ごめんごめん」と軽く手を合わせていた。

 「光司さんもゆっくりどうぞ」

 なぜか俺も学園の子たちに知れ渡っているんだよな。なんでなんだろうな。


 そうして、食べたパフェは美味しかった。

 まず、桃がうまい。俺の好きな固めの桃なんだけど、しっかりと甘く果汁が口の中で溢れてくる。


 そして、生クリームは果物の甘みを邪魔しない程度に控えめで、しつこさもなく、これ単体でも食べられるくらいあっさりしている。


 中に入っているバニラアイスとカスタードクリームも甘さ控えめで果物と一緒に食べることを前提で作られているようだ。一緒に食べた時の……星羅の言葉を借りるならば、『マリアージュがサイコー』だ。


 そう、調和が完璧なのだ。桃と生クリーム。桃とカスタードクリーム。そのどれもが合うのだ。

 下の方に入っている、パフやコーンフレーク。そして、桃のジュレとソースがこれまた合うのだ。

 こんなにも量が多いのに、ぺろっと食べてしまう。


 気がつけば、器の横のクリームをずっと掬っていた。もうないのに。それくらい美味かった。

 そしてそれはみんなも一緒だったようで、ほぼ同時に食べ終わった。


 みんな無心で一心不乱に食べたようだ。

 一緒に頼んだコーヒーを飲む。ほんのりとした苦味がある。食べ終わった後にこの苦味が心地いい。


 その後、定期的にここへ通うことになるのだが、中でも静は誰よりも頻繁に通うことになる。それはまた別の話である。

 なんでも赤ペン持って通うらしい。まさか競馬場に行ってるなんて…………、動物好きの静ならありえるか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。