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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第4章

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番外編80 中野区にはエルフが多くてな


 「ところで……」

 やはり気になったのだろう。静がおずおずと聞いた。

 そして、その視線は農の耳に向けられていた。


 「ああ。わたしエルフだから」

 農はあっさりと答えた。

 「ああーなるほどー」「なるほどですね」

 唯と静が一度頷いて、納得した。…………ように見えた。


 「って、そんなん納得するわけないでしょ!」

 「そうです。エルフってこの世界にいるんですか?」

 「でも、この辺ってエルフすごい多いですよね」

 菊乃が淡々と言った。何をそんなに不思議がることがあるのかと。


 「「え?」」

 「中野近辺は確かにいっぱい住んでるかもね。練馬とか杉並も」

 唯と静は例の区役所の地下を思い出していた。

 そして、それを思い出したら納得したのか、それ以上は言わなかった。


 だが、他の三人は違ったようだ。

 「今、エルフって言った?」「エルフって聞こえたんだけど」「そういえば、うちにも一人働いてる方いましたね」

 志依莉が言うと、莉奈が志依莉の方に勢いよく振り向いた。

 どうやら結構社会に馴染んでいるようだ。


 しかし、唯と静が驚くのはその後だ。

 農が「たはは……」と笑いながら、作業着の上だけを脱ぐと、作業着の下に隠れていた、女性らしい体つきがあらわになった。


 「「え?」」

 二人は驚いた。

 「女性だったんだ……」「女性だったんですね……」

 「よく間違われるよ」

 上がってお茶を飲みながら苦笑いする農。謎のゼリーを頬張る。


 「普通エルフって、ボンキュッボンなんじゃないの?」

 「いや、そんな漫画みたいな」

 漫画みたいな存在が、お決まりを否定した。


 「え、じゃあ野菜と果物しか食べないとか」

 「ないよ」

 農さん曰く、なか卯の親子丼を食べてから、親子丼が大好物らしい。

 他にも唐揚げやチキンカツなど鶏肉料理が好きなことを話した。

 そして、寧々のおすそ分けにも感謝しているという。


 「あの唐揚げはうまいよね」

 「はい。光司さん直伝のレシピです」

 胸の前で両方の拳を握って、寧々は鼻息荒く答えた。

 唯と静も何か持っていった方がいいかもしれないと思った。


 「そういえば、果物はないんですか?」

 「あるよー。帰りに持っていってねー」

 「異世界の育て方をこっちに持ち込むのは、あれほどやめてほしいと言ったんですけどね」

 「いやだって、一株に一個って味気ないじゃん」

 「鈴なりのメロン。それも糖度が高いのなんて異常です」

 菊乃が指をさすと、作り物と言われた方が納得できるような生り方をしたメロンがあった。


 「でも、いろんなところに修行行って、試行錯誤してできたやつだし」

 「生らせ方が問題だと……。まぁ、喫茶店に卸す以上は仕方ないのかもしれませんが……」

 菊乃はこめかみに指を当てて呻いていた。

 どうやら現実の常識との乖離についていけないようだ。


 農曰く、いろんなところへ行って、長い期間、農業の修行をしてきたらしい。

 だからか、未だに農作物がかなり届くらしい。

 寧々が頂いてきたのはそれらしい。


 「そういえば、漬物漬けるのがうまいですねー」

 唯が最後の一個を頬張りながら言った。


 「あ、それは貰い物。武蔵野市にね、若いのに漬物つけるのがうまい子がいるのよー」

 「へー」「え!」「ほう」

 唯は普通に感心した。

 寧々は初めて聞く情報だった。

 そして、静はその人ともお近づきになりたいと思ったのだった。


 いつしか、農さんが女性でエルフで高齢だということに何の疑問も抱かなくなった。

 そして、ここで作られるフルーツでパフェを作っているお店を教えてもらった。

 いつか行こうと決めたのだった。

 なぜ、今日この後行かないのか。それは──


 「はぁはぁ……」

 「っぐ……。あー、もう無理ぃ……」

 「も……、もう少しですから……はぁはぁ……」

 三人とも両手に袋を抱えていた。


 静は両手にメロンを。

 寧々はびわとブルーベリーを。

 唯はイチゴを。

 ブルーベリーとイチゴは潰れないようケースに入っており、ケースの重さまで加わっていた。


 「さくらんぼはまだ早かったですね」

 「つ、次は光司くんに車を出してもらいましょう」

 「い、いいねそれ……」

 だが、次回光司が行った時には、光司は張り切って手伝い、くの字になってしまうのだったが、それはまた別の話である。


 そして這う這うの体で家に帰り、玄関のドアを開けて袋を置くと、そのまま突っ伏した。

 「と、遠かった」

 「寧々さんはいつもこれをしているんですね」

 「慣れですねえ」

 寧々も汗だくでぐったりしていたが、唯と静よりは疲れていなかった。


 「そういえば、静さんが地植えした盆栽に興味持ってましたね」

 「盆栽を地植えしたからじゃない?」

 「でも来る時にいっぱい果物と野菜持ってきてくれるって言ってましたね」

 「楽しみです」

 玄関で三人突っ伏しながらそんなことを言っていたら、玄関が開けられた。


 「こんなとこで寝て何やってんのよ」

 星羅が呆れ混じりに言った。

 「それにしてもすごい量ですね」

 早矢が驚き混じりに言った。

 二人とも汚れてもいい格好だった。

 二人も何か土いじりしていたのだろうと三人は思った。

 

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