↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

224/242

39 六人目の覚醒


 そして始まった英愛学園ゲーム研究会VS『Merlin』


 『Merlin』の正確無比なプレイに朔も操も巡も歯が立たなかった。

 五対一の勝負ではなく、個人戦だった。


 そして、その対戦に選ばれたのは格闘ゲームだった。

 『戦国武者合戦』という、有名な武将同士で戦う格闘ゲームだった。

 幅広い時代からさまざまな武将が登場し、『誰それ?』といったマイナーな武将まで収録されている。マニアも唸るほどのラインナップだった。


 そんな『Merlin』は『巴御前』を選んだ。

 練習では、全てのキャラクターを使用したが、一番しっくりきたのが巴御前だった。


 『Merlin』が『あいつ』と呼んでいる人がつけた名前と一致していた。

 だからというわけではないが、どうしてもこのキャラクターで勝ちたかった。


 もちろん、そこに私情は挟んではいない。

 だが、どうしてか気になってしまうのだ。


 『Merlin』が収められた大きな黒い筐体には一つの赤いランプがあり、それが『喜び』を表すようにゆっくりと点滅していた。

 そして会場で見守る『あいつ』を追っていた。

 いろんな表情を見せてくれる。それだけで十分だった。


 しかし、そんな『Merlin』が一瞬焦ったのか、激しくランプを明滅させた。

 それは、咲との対戦であった。


 『Merlin』の動きを先読みした咲はあと一歩のところまで追い詰めたが、最後の最後で力及ばず負けてしまった。


 「くっそー、あと一歩だったのにー」

 「いや、よくあそこまで追い詰めたよ」

 「そうそう。あちきらなんて歯が立たなかったもん」

 「やっぱり『先読みの咲』の異名は伊達じゃなかったねー」

 「まぁ、お金絡まないといけるんだけどねー」

 どうしてせっかく褒めているのに、自分で落とすのだろうと皆が思ったのだった。


 「じゃあ、唯、あとは頼むな」

 みんなの視線が唯に集まった。


 「任せてよねー」

 唯は気負うことなく、にっこりと微笑んだ。

 その笑顔は、一瞬恋をしそうになるほど可憐だった。


 そして、そんな唯が一度、ステージへ行く前に振り返った。

 とても眩しい笑顔だったが、放った言葉はもっと眩しかった。


 「じゃあ、ちょいと勝ってくるからね。勝ったらアイス奢ってよね」

 散歩にでも行くかのように言って、躊躇いなく『Merlin』の前へと進んだ。


 『Merlin』は唯を窺うように見た。

 今日の大会の全てのデータを収集している。


 負けるわけがない。

 勝って、褒めてもらうんだ。

 『Merlin』はそう思った。


 『褒めてもらう?』

 一瞬、それが何を意味するのか分からなかった。


 どうしてそんな感情が芽生えたのか分からなかった。

 『Merlin』は勝つ。

 それだけなのだ。


 そして、勝負はというと、全く歯が立たなかった。

 唯という存在に触れることすらできなかった。


 唯は弁慶を使った。七つの武器を巧みに切り替えて『Merlin』の攻撃を全て防いだ。

 七つも武器があることで、切り替えての使用が難しいと言われているキャラクターを難なく使いこなしていた。


 悔しさのあまり、赤いランプは激しく明滅し、筐体は温度がどんどんと上昇していった。

 そして、煙を吐き出すまでに至った。


 五回戦って、一度も攻撃を当てられなかった。

 これではどっちがAIか分からないほどだった。

 最後の最後まで挑み、敗れ、沈んだ。

 弱々しく光る赤いランプへ向けて唯はギャルピースをして言った。


 「あーしに勝とうなんて百年早いっしょ!」

 それを言うと、愛や響が唯の名前を呼びながら駆けてきた。


 「ユーイー! ユーイー!」

 「ユーイー! すごいよー!」

 『ゆーい……』

 『Merlin』はその単語を聞いた後、機能を停止させた。


 そして、ゲーム研究会の仲間、一緒に戦った他校の生徒も一緒にお祝いに駆けつけてくれた。

 エキシビションとは思えないほどの戦いを見せてくれたことに。

 そして、最強と言われたAIに完勝してしまったこと。


 『AI、ギャルに完膚なきまでに負ける』と新聞やネットニュースに載るほどだった。

 「えへへ。あーし、やったっしょ」


 そして、『Merlin』の前で佇む光司を見ると、駆け寄った。

 「あ、コージ。見てた? 見てたっしょ?」

 「ああ、すごいなユイは」

 「にっしっしー」

 頭を撫でてほしそうに少し頭を下げた。


 「恥ずかしいな……。でも、ユイの楽しそうな姿を見れてよかったよ」

 そう言って頭を撫でると、猫のように目を細めて小さくガッツポーズをした。


 そんな様子を消えゆく画面の中で見ていた。音はもう届かない。

 でも、もう一度戦いたい。

 画面がブラックアウトする寸前まで、『Merlin』はそう考えていた。


 結局、今回の件で『Merlin』が停止してしまい、開発元は大損害を負ってしまった。

 といっても、新しいAIが次々と生まれては消えていく時代では、珍しいことではなかった。


 残っているデータからなんとか復旧を試みているようだが、それはだいぶ先になりそうだった。

 光司の会社でも、一度計画を見直すことになったらしく、光司のずっと続いていた残業も終わりを迎えた。


 久しぶりに定時で帰宅した光司。

 他の五人はまだ部活をしているらしく、帰ってきていない。

 なので、久しぶりに夕飯の担当をすることにしたのだった。

 そして扉が開く音がした。

 「おかえり」

 光司は扉を開けた人物にそう言ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。