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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第4章

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38 決勝のその先へ


 そして、次々と予選を勝ち抜いていった英愛学園ゲーム研究会。

 今回いい成績を収めることができれば、部に昇格し、予算がもらえるようになる。

 あの部屋にあったパソコンや機材は、すべて田野先生や他の先生の私物か、自腹で用意したものだった。

 

 朔は、この日のために、やるゲームの難易度や特徴を解析していた。


 巡は、何度も周回して、同じ動きができるようになっていた。


 操は、何度も同じ動きを繰り返し、動きを洗練させていった。


 実は、必要もないのに、隠しルートの発掘や実績解除をしていた。


 咲は、AIの動きを先読みしていた。それは全て的中しており、予想外の動きにも対応できていた。


 響は、空間能力に長けていた。かなり遠い位置で動くものの気配まで読んでいた。


 愛は、基本に忠実だった。普通なら焦れるところを焦らずに待っていた。そして勝ちを攫っていく。


 そして、唯はというと、鼻歌交じりに敵を遠距離から倒していった。

 1ドット出ているかいないかの敵をヘッドショットしていく。

 唯には、誰も敵わない状態だった。


 なお、今回の大会で勝てるまで、田野先生は、大好きな二郎と山岡家を封印している。

 心なしか、少し痩せたようにも見えた。


 「明日だねー」

 「ねー、がんばろー」

 「優勝めざすぞー」

 「「「「「おー!」」」」」


 渋谷の某会場──

 「いやぁ来たねぇ」

 「来たねー」

 「服買いに行く?」

 「ちょ、今日は遊びじゃないよ」

 「そうだった」


 てへぺろと舌を出す愛。

 しかし、唯、響、愛の三人は普通に渋谷に服を買いに来たと言われても信じてしまうだろう。


 夏の制服を着ているが、唯はピンク髪の右サイドポニー。

 愛は水色の髪で、左サイドポニー。

 響は、金髪で緩めのポニーテール。


 eスポーツの大会に出るなどと誰もが思わないだろう。


 咲もどちらかといえば、そっち寄りだ。真紅のミディアムショートレイヤーで、少し目立つものの、雰囲気としては普通の女子高生に見える。

 操もアホ毛以外はミディアムロングの青く煌めく黒髪だ。

 巡も明るめのショートボブである。


 「この場で一番場違いではないだろうか?」

 実がボソッとそんなことを言ったが、朔は肩を竦めるだけだった。

 朔もそこそこおしゃれな髪型をしていたからだ。


 「勝ったら、帰りに買って帰ればいい。だろう?」

 不敵な笑みを浮かべると、他のみんなも口角を上げた。


 そうして、トーナメントを余裕で勝ち上がっていき、決勝戦。

 相手は、操のライバルであり、ゲームの道へ進むきっかけを作った常翔高校ゲーム部だった。


 彼らも昨年、部に昇格していた。

 研究会時代から並外れた成績で、ほぼ敵なしの状態だった。高校eスポーツ界でも強豪校だ。


 「おひさー」

 「あ、操っち。本当に作ったんだね」

 「決勝戦楽しみ」

 操が挨拶したのは、ゲーム部2年の井出小夜子と明智琳香だった。

 いつも小夜子の家でゲームをして遊んでいたのだ。


 「操ー、知ってるの?」

 咲がそんなことを言うと、操は少し横にずれて紹介した。


 「うん。そう。わたしがゲーム研究会作るきっかけになった友達ー」

 「今日も勝ち逃げさせてもらうよー」

 真っ赤な髪の琳香が言った。

 「楽しみにしてる」

 小夜子がぼそっと言った。目が怪しく光った。


 決勝戦前だというのに、そこはファミレスで恋バナを話しているかのような雰囲気だった。

 そして、それぞれ挨拶をして、自分の席へと戻っていった。


 それを見ていた他校の生徒や関係者は思った。

 強者同士だと、決勝前でもあそこまで余裕でいられるのかと。


 終始、落ち着いており、ピリピリとした雰囲気は一切なかった。

 これから決勝戦が行われるのかと誰もが疑問視するほどだった。


 しかし、始まれば一瞬にして空気は変わった。

 触れれば切れてしまいそうなほど張り詰めていた。


 英愛学園側では、選抜した五人で挑んだ。

 唯、朔、咲、操、巡。

 愛、響、実は応援側だ。


 そして、そんな張り詰めた空気の中、決勝戦は行われ、2勝1敗で英愛学園が優勝した。

 しかし、今回の大会はそれで終わりではなかった。


 スポンサーが用意した『Merlin』というAIと勝負できる権利である。

 もちろん挑まないなんて選択肢はない。


 先に『Merlin』がデモプレイを披露した。

 それを見て、人類が勝てるのかと誰もが思った。


 いや、英愛学園ゲーム研究会以外の誰もがそう思った、が正しいだろう。

 みんな思っていた。唯なら本当に勝ててしまうのではないかと。


 ほんの少しの休憩を挟んで行われることになった。

 そして、その場所には光司も仕事でやってきており、唯の勇姿をその目に焼き付けていた。

 「すごいなぁユイは。…………かっこいいぞユイ。頑張れ」

 少し離れた位置からそう唯に応援を送ったのだった。


 「須永さん、『Merlin』の最終調整見てもらってもいいですか?」

 「あっはい」

 本来の担当ではなかったが、たまたま最終調整を任されることになった。


 「巴、いけるか?」

 光司がつけた名前で呼ぶが応答がない。

 あの日以降、光司には無視を貫いていた。

 それでも、このイベントでは全力を出していた。ただ、拗ねているだけなのだ。


 そして『Merlin』こと『巴』は考えていた。

 ここでさらに勝ったら、あることをしようと。

 それまで、光司からの呼びかけは敢えて無視していたのだった。


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