37 久しぶりの食卓
久しぶりに、少しの残業だけで帰って来た光司。
こうしてみんなで集まるのは久しぶりである。
みんなで家のことをやろうと決めていたこともあって、今日の夕飯は静と星羅である。
そんな様子を見て、驚く光司。
「な、なぁ寧々、大丈夫なのか?」
「はい。大丈夫ですよ。二人ともすごいですよ」
何回か料理を作っているのは知っているが、今日は変に凝りすぎていないものが出てくるだろうかと、少し心配していた。
唯が洗濯物を畳んでいる。
早矢は庭の野菜や花に水やりをしていた。ついでに回覧板も回して来た。
寧々はお風呂にお湯を入れ終わったところだ。
「すまんな。ここしばらく帰りが遅くて」
「いえいえ、仕事ですからね」
そんなことを話していたら、星羅がキッチンから出て来た。
「あら、今日は早いのね」
「プロジェクトがひと段落してな」
「それはよかったです」
静も料理の皿を持って出て来た。
「お、結構ちゃんとしてる」
「わたしたちをなんだと思ってるのよ」
「いや、変に凝ったのばっかだと大変だと思ってな」
「ああいうのはたまに作るからグッとくるんです。でも、シンプルでも手は抜いてませんよ」
「そうそう。食べてみて腰抜かしなさい」
「仕事に支障が出るから、腰抜けるのは嫌だなぁ」
星羅と静が堂々と言い切った。
テーブルの上に料理が並べられていく。
カツオのタタキは、玉ねぎとミョウガが敷き詰められていて、小ネギが散らされていた。
ショウガともみじおろしが彩りよく添えられていた。
ナスの揚げ浸しも大葉を細かく刻んで散らしてあった。
うちで取れたトマトは酢昆布で和えてある。
キュウリもちょっとエスニック風の味付けがしてある。
そこまで重くない料理で、光司は少しホッとした。
「凝ってないといいつつも、すごいな」
「ふふん。疲れてると思ったから、重いのはやめといてあげたわ」
「ありがとう」
「う、うん」
ちょっと顔が朱くなる星羅。
「では、食べましょうか」
「そうですね」
ちょうど、外から戻って来た早矢と、それぞれの部屋に洗濯物を置きにいった唯が戻って来た。
「お疲れ様です光司さん」「コージおかえりー」
「ああ。ただいま」
「今日は早いですね」「今日は早いじゃん」
「ああ。やっと一息ついたからな」
そうして席について、手を合わせた。
「「「「「「いただきます」」」」」」
ここ最近忙しいこともあって、なかなか話せていなかった。
五月の終わり頃に星羅と公園デートしたくらいだ。
そこからまた忙しくなった。
「落ち着いたんなら、お出かけ出来るねー」
「そうだな。車買ってから行けてなかったからな」
どこへ行こうかを話し合っていた。
そして、そんなに疲れているのなら、泊まりで行こうかとこっそり計画することにしたのだった。
光司へのサプライズである。
そして、ある程度食べ終えた頃、最近の学園での出来事を聞いていた。
「へぇー、星羅は園芸部に入っていたのは知っていたけど、そんなに大きな庭作ったのか」
「庭っていうか、庭園よね」
「どんだけだよ」
「いつか、光司にも見てもらいたいわね」
星羅が目を細めて言った。
その頬はほんの少し朱かった。
「星羅さんと一緒にお茶会もしましたしね」
早矢が続けて言った。
「へぇ」
「あーしがドレス作ったよ」
「あたしはお菓子を焼きました」
「うちは食器を調達しましたね」
「わたくしは家具と茶葉ですね」
「茶葉ってあそこの?」
「ええ。もちろんです。あそこの茶葉を超えるものをわたくしは知りません」
「だよな」
「ええ」
静も少し頬を朱らめた。
そうして、ここ最近、星羅以外の四人も部活に入ったことを報告した。
「寧々のそれはいいのか?」
「はい。あたしの目指すところそのものですから」
「そうか。楽しんでるならよかったよ」
「はい」
寧々も目を細めて嬉しそうにはにかんだ。
「というか静と早矢はどうしてそんな組織再編みたいなことしてるんだよ」
「やりたいことを突き詰めていったら、こうなっちゃいまして」
「ええ。絶やさない、諦めない。そして、紡いでいく。その結果ですね」
「じゃあ、いろいろと話が聞けるな。楽しみにしているよ」
「はい」「ええ」
早矢も静もまんざらでもない顔で俯いた。
「ふへへ……」「えへへ……」
そして、互いに見合って緩んだ笑顔をしたのだった。
「ユイは意外だったよ。ゲーム……研究会」
「うん。あ、衣装部と裁縫部も入ってはいるから兼部にはなるんだけどねー」
「無理するなよ」
「あーしを誰だと思ってるし!」
胸を張って顎を少し上げてドヤった。
「しかし、ゲームか……」
「どうかしましたか?」
寧々が心配そうに声をかけた。
「ん? ああ、今度うちの会社がスポンサーになって、渋谷でeスポーツ開催するんだ。今週末かな」
六月下旬に開催すると光司が言った。
そして、一応助っ人として会場に行くらしい。助っ人といっても雑務だと。
「あ、それうちのとこも出るって」
「へぇ、そうなのか。じゃあ優勝だな」
「ちょ、気が早いし」
「できないとは言わないのね」
唯が惚けると、星羅がいたずらっぽく言った。
「んー、どうなんだろ。あーしも始めたばっかりだしね」
「まぁ、変にムキにならずに楽しんだらいい。意地はった瞬間に視野とか狭くなって判断力なくなるからな」
「あ、それあるかも」
そして、唯が部活でのことを楽しそうに話すと、早矢、静と続いていった。
寧々、星羅が話し終える頃にはいい時間になっていた。




