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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第4章

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36 初プレイです


 そうして唯が奥へと進むと、パソコン室の方のドアが開いた。

 そこからは人好きそうなおばちゃん先生が現れた。


 「お疲れさんね」

 ニコニコとしながらふくよかな身体を横にして入って来た。


 思わず唯が「あ、なんか近藤○菜に似てる」と小さく言ったら、耳はいいのか「○野卓造じゃねーよ」と笑顔で突っ込んだ。

 「ステ○おばさん」「タルヤ・ハ○ネン」「マイケル・○ーア」「フルッ○」などとみんなが名前を挙げていった。


 どうやらいつものノリのようだ。

 しかし、唯には別の意味で既視感のある人物だった。

 それがどうしても思い出せないまま、先生がやっとの事で机の横を突破した。


 「ふぅ……。部屋を変えないとダメねぇ」

 確かに部屋は狭い。これからの時期、排気熱できっと暑くなるだろう。


 「あ、どうもどうも。わたしゃ顧問の田野笑子だよ」

 3年の情報担当の先生だった。

 どうやら、異質なパソコンの持ち主のようだった。


 「あ、御坂唯です」

 「知ってるよ」

 ゆっくりとおばあちゃんのように答えた。そこまでの歳でもないだろうにと唯は思った。


 「えっと、本当にゲームしてるんですか?」

 「そうよー。 本当はプログラミングとかを楽しく覚えてほしいなって思ってたんだけど、いつの間にか、ゲームメインにね。宇慶さんと入江くんが、建前を一日で書き換えちゃってー」

 田野先生が、そう言うと、操と朔が反論した。


 「ちゃ、ちゃんとゲームも作ってるよ。ね?」

 「ええ。STGですけどね」

 「へー、すごいじゃん」

 「次のコミケで出せるかって感じかな」

 ちゃんと部活動っぽいこともしているんだなと感心する唯。


 「でも、息抜きでゲームやる時間の方が多いよね」

 「確かに」「そっちがメインだし」「でも作るのもおもしろいのよね」「それな」

 そんな感じでみんながあれこれと話を進めていく。

 ゲームを作る方ならいいかなと唯は思った。


 「でも、体験だし、ゲームが楽しいってこと知ってもらおうよ。ね?」

 愛がしれっと左横に座る。

 右側は響がキープした。

 操と巡も慣れた様子で席につく。

 どうやら、そこだけ空いていたらしい。


 「唯は何かゲームしたことあるの?」

 初めて光司の家に来た日を思い出した。


 「うん。桃鉄なら。あと、マリカーとか、そんな感じの」

 パーティーゲームしかやったことがなかった唯。


 「じゃあ、楽しいのは知ってるんだねー」

 「友情破壊ゲーが入ってるわ」

 しれっと咲が呟いた。


 「友情を破壊しにくるのは咲だけでしょ」

 「マリパやいたストでもムキになるもんね」

 愛と響が苦笑いでツッコミを入れた。


 「3組のサガだから仕方ない」

 「そこは修正不可能なんだ」

 咲と同じ3組の朔と実が謝罪した。


 「じゃあ、どうする? 最初から突っ走る系?」

 「ふむ……」

 咲がそう言うと、朔が腕を組んで考え込んだ。

 そんな様子を田野先生はニコニコと眺めていた。


 「じゃああれやろう」

 パソコンを起動すると、そのゲームを横に座る愛が開いてくれた。

 そして、動かし方を説明してくれた。


 「最後の一人になれば勝ちだよ」

 「そうそう。武器を集めて、他の人を倒していくの」

 「エリアがどんどん狭くなるから、それを気をつけながら、やってくの」

 「まぁ、ステルス性とバトルロワイヤルが混ざったゲームとでも言うのかな」

 そんな感じで説明を受ける唯。


 「うん。分かった。ありがとー」

 本当に分かっているかはともかく、ゲーム研究会でやるゲームがどんなものかを体験してもらいたかった。


 そして、始まると、唯は初めてのはずなのに、どこにどんなアイテムがあるかを把握しているような動きをした。


 「アイテム、ランダムなのに……」

 あの響が小さい声で呟いた。

 早速ライフルを手に入れた唯は、いきなり外に出るとぶっ放した。


 「ちょ、唯、さすがに初心者すぎるよー」

 和気藹々といった雰囲気になったが、すぐに静かになった。


 「え、嘘……」

 先ほど、誤射したと思われたものは、別のプレイヤーに当たったらしい。それもヘッドショットで。

 相手は画面上では1ドットあるかないかという大きさだった。


 唯は、初心者の筈なのに、その倒したプレイヤーの装備を回収していく。

 そして、ニコニコしながら一人、また一人と撃ち抜いていく。

 そのどれもがかなりの距離があった。


 「「「「「「「「……………………」」」」」」」

 全員が黙った。

 そして、気がつけば、初プレイで優勝した。


 「やったー」

 他の部員が現実を認識するのにしばしの時間を要した。

 そして、誰かがハッとすると、みんな立ち上がった。


 「すっごいじゃん唯!」「ほんと、初めてなんて嘘なんじゃない?」「マジ強すぎっしょ」「カッコよかったよ唯!」「逸材すぎる!」「これはいけるんじゃないか?」「今、歴史的瞬間に立ち会ったんじゃなかろうか」

 それぞれが手放しで褒め称えた。そのくらいの快挙だ。


 「ねぇ、どうだった?」

 愛が唯に尋ねた。


 「まぁ、人撃つゲームはあれだけど、面白かったよ」

 「まぁ、そうだよね。あはは」

 「体験入部でこれ選ぶのってどうなのさ」 

 「でもほら、eスポーツでもあるからさ」

 「いーすぽーつ?」

 「そう。ゲームの大会があるんだ」

 「へー」

 みんなでワイワイしながら優勝を目指すなんて面白そうと思った唯。

 ちょっと心がざわついた。


 「どうせならさ、他のゲームもやってみない?」

 「うん。そうだね」

 そうして、いろんなゲームをやって興味を持った唯。

 そのまま正式な部員になるまで、そう時間はかからなかった。


 数日後の放課後──

 「愛ー、操ー、部活いこー」

 「いこーいこー」

 「今日は勝つぞー」

 三人で廊下へ出る。


 「おつー」「はろはろー」

 巡と響もホームルーム終了とともに出て来た。

 そして、部室へ行くと、すでに朔と実、咲は待機していた。


 「みんな早いねー」

 「そりゃあ、高みを目指すには、時間を無駄にできないからね」

 「目標があった方が楽しいでしょ?」

 「こらこら、遊んでばかりでないで、本来の目的もね?」

 顧問の田野先生もいつの間にかスタンバイしていた。


 「じゃー、今日もやりますか」

 いつの間にか部の中心になっていた唯がそう言うと、ゲームを起動した。


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