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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第4章

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33 唯の好きなもの


 唯は焦っていた。

 一応、衣装部と裁縫部には入っているが、それはどちらかといえば趣味だった。


 確かに、服を着たり、作ったり、アレンジしたり、コーディネートしたりと、服飾に関することは好きである。


 でも、それは日常の延長線上のことであり、本当に自分がしたいことが何なのか、未だ見つけられずにいた。


 星羅は園芸を頑張り、女王様のように振舞っている。


 寧々は、家庭的な部活を統合し、学園のおかーさんに君臨している。


 静と早矢も寧々のように統合はしたが、どちらかといえば、会社組織のようになっており、二人とも会社の役員のようになっていた。


 では、自分はどうだろうか。

 唯も静と早矢のように、あらゆる部活を体験入部した。

 しかし、どれもしっくりこなかった。かといって、新しく作る気もなかった。


 唯にとっては、ただ光司の横にいられればいい。

 そのためには服を選び、髪型を決め、メイクを極める。そしてどこへ出かけようか。

 それを考えることの方が楽しかった。

 それに匹敵するものが見つかるとは思えなかった。


 四人ともそれぞれ、学園内に追加で居場所をどんどんと作っている。

 それをどこか羨ましく思っていた。


 「唯はさー、どこか入らないの?」

 今日も唯グループの友人たちとカフェでだべっていた。


 「んー、いいとこなくてさー」

 唯の友人の松本愛が聞くと、困った顔で返答した。

 いいところはあった。ただ、長く続けられないと思ったのだ。


 「何か好きなものないの? 光司さん以外で」

 白峰美羽が軽く刺しながら聞いた。

 どこか、ニマニマと期待に満ちた顔をしている。


 「うーん。服とかは好きだよ、一応衣装部と裁縫部の幽霊部員やってるし」

 「幽霊部員はあんなに活躍しないんだよ?」

 美羽が苦笑いしながら言った。

 唯は今日も衣装部で衣装のデザインを仕上げていた。

 両手でそれを受け取った衣装部の部員が深々と頭を下げていて、逆に恐縮していた。


 それに、ここ数日、静と早矢のやりたいことのために裏方として奔走していた。


 流鏑馬をやった時には、着物と鎧を。

 道場で剣道をした時は、静が宮本武蔵、早矢が佐々木小次郎を演じるために着物を用意した。

 なお、静は二刀流は初めてなのか、その時は早矢が勝った。


 柔道の時には、衣装は道着だが、中にチョコの入っている金メダルを用意したし、表彰台も置いた。

 静があのシーンを再現していた。


 部活としては存在しないのに、チアガールやフラメンコのドレスまで用意した。


 4組の生徒と一緒に歌舞伎と能をやった時にも衣装を用意した。

 その時は、唯自身も参加したし、演劇部も数名が参加していた。

 それ自体は楽しかったが、自分主体では無いことに気づいたのだ。


 静が講談を、早矢が落語をした時は、ちょっと興味を惹かれたが、どちらも部活としては存在していなかった。

 3組の生徒が趣味でやっているだけだった。


 「ちなみにみんなは何の部活入ってるの?」

 唯がそう切り出すと、真っ先に答えたのは藤原陽菜だ。

 「あたしはテニス部だよ! さぁ入って、一緒に走ろうよ」

 事あるごとに一緒に走ろうとする陽菜。唯と静のスカッシュを見てテニス部に入ったほどだ。

 唯を勧誘するのは当然と言えよう。


 「美羽はねー、漫画研究会」

 ニコニコしながら美羽は言った。

 「漫画研究会? 漫画描くの?」

 「愛花は描いてるけど、わたしは読む方が多いかなー」

 「美羽さんは絵が上手いのだから描いたらいいのでは?」

 「そうなんだけどー、イラストは描くけど、内容が思いつかなくてねー」

 困ったように笑いながら、ジュースを飲む美羽。

 「唯なんか考えてよー」

 「あーしも、そういうのはちょっと」

 どうしても恋愛方面のネタしか思いつかないが、光司とのことを話すのは憚られたので、出来ないと答えた。


 唯が目の前の麗華を見ると、麗華は佇まいを正して、咳払いしてから言った。

 待ってましたと言わんばかりに、胸に手を当てて言った。

 「わたくしは演劇部ですね」

 「え、麗華演劇部なの?」

 九条麗華が縦ロールをかき上げると、弾力ある縦ロールがバネのように揺れた。


 「ええ。いつか唯様にわたくしの演技を見ていただきたく。まぁ、わたくしが姫、唯様が王子様だとよかったんですけどね」

 「あはは……」

 筋金入りの唯フリークスの麗華。少しばかり唯への執着が強い。

 この前のガーデンパーティーで執事の格好をしたのを聞いた時は、悔しそうにしていたのを思い出した。下手に話題に触れない方がいいと、横にいたティノを見た。


 「ティノは?」

 「わたし? わたしは入ってないなー。放送部員だし、ファンクラブの運営側だし。おっと」

 「え、ティノ運営側なの?」

 「や、いくつかの管理してるだけだよー」

 栗栖ティノはそういうが、本当はファンクラブ運営部という非公式の運営団体に所属している。


 唯、寧々、星羅、静、早矢はもちろん。他の人気のある生徒のファンクラブを運営していて、ティノはそこで『最近の出来事』を担当している。どちらかといえば、報道に近い立ち位置である。


 そして、つい最近、その五人のサイトがハッキングされ、画像をはじめ、情報が修正されるという出来事があったばかりだ。


 星羅は、ドレスの種類やマナーを。

 寧々は、自分のファンクラブで光司の隠し撮り写真と料理のレシピを、

 早矢は各地の観光地に関するトピックスを。

 静は動物の画像を。

 唯はファッションのコーディネートと。


 いつか、本人に任せてしまおうかと運営団体は考えていた。なお、部長はこの学園の生徒会長である日高清花である。

 みんなで、一体何をやっているんだと、あれこれ面白おかしく話し合っていた。


 そして、最後は愛である。

 いつも唯の横にいるのに、今日は静かだった。

 「愛は?」

 「あーくし、ゲーム研究会なんだ」

 「ゲーム? そんなのあった?」

 他のみんなもそんな部活があったことを知らなかった。


 「うん。今年……というか、少し前に出来たんだ。3組の入江くんと操が作ってね」

 「へー」

 「学校で堂々とゲームできるのはサイコーだよ?」

 「あはは……。それはそうだねー」


 光司の家に来た最初の夜にゲームをしたことを思い出した。

 確かにみんなでワイワイやるのは面白かったと。

 でも、それを部活にするということにあまり興味を持っていなかった。


 「ん。待って、その部活って操が作ったの?」

 「そうみたいよ」

 全員の興味が操へと移って行ったのだった。

 普段、エレナと一緒にいるアホ毛の目立つ女の子。

 確かに明るいし、人当たりはいい。そんな人がゲーム研究会に所属している。

 全員が意外に思っていた。

 全員の脳裏にあのみょんみょん揺れるアホ毛が映った。


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