32 クリエイティ部、発足
早速戻る四人。
城一郎はなぜか静に抱きかかえられており、とても満足げだ。
そんな様子を清花、磨昼、ティアは驚きを隠せずにいた。
「コホン……。えっと……」
なかなか言い出せずにいたが、意を決して口を開いた清花。
「君たち二人の案を承認しよう」
「「ありがとうございます」」
二人は頭を下げた。
静がずっと抱きかかえたままなので、三人で頭を下げる格好になっている。
そんな様子を環は吹き出しそうになるのを必死に堪えた。
「それと、新たな部活の創設を許可しよう」
静と早矢はそうなるであろうことは予測済みだった。
だから、前を見据えたまま、互いに顔を見合わせることをしなかった。
堂々とそこに立っていた。
「しかし、面白いことを考えるものだね」
「ああ。とても興味深い」
「悔しいけど、認める以外の答えを持ち合わせていないわ」
清花が言うと、ティアと磨昼は互いにメガネのフレームを押しながら言った。
そして、清花は書類を見ながら感心したように言った。
「クリエイティ部。まぁ、ネーミングセンスはともかく、よくこんな社内の部署再編みたいなことをしたよ」
クリエイティ部──
その下には静の管理する創造部と早矢の管理する伝統部。
創造部は、漫画研究会、美術部、パソコン部などのクリエイター系の制作を主にする部活だ。
それらが横並びに傘下に入っている。
例えば、漫画一つ描く場合、漫画研究会が主になるのだが、原作部分を文芸部が担ったり、緻密な背景を美術部やイラスト部が担ったりする。
相互に手伝ったりもある。一つの作品を複数の部で制作するのだ。
もちろん、内容によって参加するかどうかは検討するのだが。
それぞれ人が足らずに困窮していた。それをまとめたのだ。
言葉では簡単になるが、その交渉は困難を極めた。
まず、それぞれのプライドが高かった。
『あっち側はリスペクトがあるのか』『そっち側は理解できるのか』『どっちが上でどっちが下か』など、制作の進行上問題になりそうなものを一つ一つ潰していったのだ。
最終的には、みんなでそれぞれの作品を築き上げるという方向で一致団結したのだった。
その手腕を買われた部分もあるだろう。
対して、早矢の伝統部。
こちらは、茶道部や華道部、弓道部や剣道部など伝統的なものを継承していく部活だ。
創造部と違うのは、相互に人員の共有は基本的には行わない。
しかし、興味があれば参加可能といったものだ。
そのために必要な知識や技術を互いに教え、学び紡いでいくことを目的としていた。
一つしか入れない為に、片方を諦める。そんな生徒が多かった。
兼部も可能だが、中途半端になってしまったり、片方が疎かになってしまう。
では、こっちもそうなのではないかと、当初は言われた。
だが、そこは人や状況をよく見る早矢。
共有可能な部分を見つけ、不要な習得を減らしたのだ。
尚、いくつかの部活は現状、協力という形になっている。
演劇部や衣装部がそれだ。他にも影響が出そうなところは、様子見をしている。
それでもほとんどの部活はこの二つのどちらかに入っている。
そもそも休部や廃部を阻止しようと人員確保に動いていた部活がほとんどだ。
現状、部活動に所属していない生徒がほとんどである。
それの解消も目指していた。
それを解決できる案だということで、生徒会全会一致で可決したのだった。
参加する部活の部長、部員の署名もある。
否決する理由が無かったのだ。
これにより、部活ごとの予算配分を決める手間からも少し解放される。
願ったり叶ったりだと、清花、環、城一郎は思ったのだ。
あとは、堅物のティアと磨昼に分かりやすく説明するだけだった。
その役を清花が担っただけである。
もっとも、予想外のことも起こっており、本日のキャパシティを超えていた。
清花は癒しの城一郎が、簡単に静に抱っこされていることに、少なからず不満を持っていた。
そして、今回の議題より、その攻略法の方に興味が勝っていた。
「しかし、よくこんなもの思いついたね」
磨昼が、メガネに付いた指紋をメガネ拭きで落としながら聞いた。
メガネのフレームをいじりすぎなのだ。
「はい。寧々さんの『おかーさん部』がヒントになりました」
「なるほど……」
「ええ。先に素晴らしい見本があったのです。それを踏まえればなんてことはありません」
二人はそう言って、初めてニッコリと微笑んだ。
「では、決まりましたので、正式な書類は明日にでも」
「あ、ああ」
生返事の清花。城一郎はまだ静の腕の中だ。
「では、失礼しますね」
「失礼します」
生徒会メンバーが気圧されている間に、挨拶をして出てきた。
そして、静が今になって気づいた。
「あら、城一郎ちゃんを持ってきてしまいました」
「どうしましょうかね」
早矢が困惑すると、静はなんてことないと言い切った。
「寧々さんのところへ、お茶をしに行きましょう。いい匂いがしてきましたね」
「ええ。この香ばしい香りは……」
「恐らくアーモンドとバターを使ったものですかね。城一郎ちゃんも行きますか?」
「もちろんだぞ!」
そうして三人は、調理室へ向かって歩き出したのだった。




