27 告白の相談です
星羅たち園芸部員で作ったフラワーガーデン。
その完成度から園芸雑誌に紹介されるほどである。
そんなフラワーガーデンだが、別の意味で名所になっていた。
それは、ここで告白をすると100%成就するというもの。
もちろん、そんな訳はないし、まだここで告白をした人物もいない。
実績はゼロ。なのに成功率だけは100%。
噂話だけが勝手に一人歩きしていったのだ。
そして、そんな噂を信じているものが1年1組にも一人いた。
花咲薫、その人である。
本来であれば、意中の相手を、直接なりラブレターなりで呼び出して告白すればいい。
しかし、心まで乙女な彼なのに、その基本をすっかり失念していた。
そして、それをあろうことかクラスメイトに相談してしまったのである。
放課後に相談があると言われたのは、唯、寧々、星羅、静、早矢の五人である。
なんでもお見通しで、お願いすれば全て解決するとまで言われている五人である。
「それで薫っち、話ってなんなん?」
「うん。それは……」
唯が代表して聞くと、薫は手を擦り合わせてもじもじし始めた。
「薫きゅん。いつまでも黙っていては分かりませんよ」
「う、うん」
静が優しい顔で促すように言った。
そんな様子を見て、寧々、星羅、早矢はこそこそ話を始めた。
「(これってアレですよね)」
「(ええ、アレね)」
「(こういうのあるんですね)」
真剣に話を聞く唯と静の後ろで三人は、薫の相手が一体誰なのかを予想していた。
「(薫さんの相手って誰なんでしょう)」
「(多分男子よね)」
「(星羅さん、薫さんは一応男子です。まぁ可能性としてはありますけれど)」
「(そっか)」
「(そうですよ)」
勝手に盛り上がり、名前を挙げていく。
しかし、そのどれもハズレであったのだが。
「実は、好きな人がいまして」
「「「「「おお!」」」」」
全員が声を上げると、ビクッとする薫。
「すみません。驚かせてしまいましたね。どうぞ」
静が今度は慈しむような顔で言った。
「は、はい。えっと……」
三回深呼吸すると、真面目な表情になった。覚悟を決めたようだ。
「幼なじみの百合草琹織ちゃんに告白したいんです」
薫がそう言い切ると、五人は笑うでもバカにでもするでもなく、真剣にそれを聞いて頷いた。
「なるほど、琹織さんに告白……」
「それをわたしが作ったフラワーガーデンでしたいと」
「はい」
「で、それは薫さんが呼び出して、告白すればいいんじゃないでしょうか」
早矢が、どうして相談をするのか疑問に思ったらしい。
それは他の四人も同様だ。
わざわざ、それを報告する義務はないはずである。
「えっと、どうやって呼び出したらいいのかなって」
「「「「「え?」」」」」
「え? ボクおかしいこと言った?」
「普通そういうのって直接言うか」
「或いは、ラブレターですね」
「最近はメールとかLINEとかいろいろあるよね」
「あ……」
早矢、寧々、唯の順で言った。
そこでやっと気がついた薫。顔は緋色を超えて茜色になっていた。
今にも沈んで隠れてしまいそうだった。
「じゃあ、ラブレター書いて渡せばいいのかな?」
「下駄箱や机の中に入れるってものありますね」
「琹織さんは従者がいますから、代わりに渡すってのもありますね」
静と寧々が方法を答えた。
「ううー」
薫が頭を抱えた。
そして、ラブレターで渡すという方法に決まったはいいが、どんな内容を書くか迷っていた。
「もう、こういうのは率直に、『来てください』だけでいいと思うよ」
唯がそう言うと、頷いて、可愛らしい丸文字で書いた。
五人は改めて、本当に男子なのかと疑った。
「しかし、それだけだとアレですね。『話があります』ってのも足した方がいいですね」
静が言うと、先ほど書いた文の上に追記した。
しかし、まだ自信がないのか、あれこれと付け足していった結果、果し状のようになってしまった。
「書き直しね」
星羅が呆れたように、嘆息しながら言った。
そして、そんなことをやっていた様子をクラスメイトが見逃さないわけがない。
ドアから中を窺っていた陽菜、蓮、エレナ、操、柚、愛花、優華、美琴が顔を朱くしながら見ていた。
「これは一大事ね」
「みんなに知らせないと」
「そうね。みんなで見守らないとね」
「相手って誰なんだろう」
「そこだけ聞こえなかったね」
そこに琹織の従者の紡希と志乃が来た。
「おや、薫さんと最強の五人ですね」
「なんか映画のタイトルみたいね」
「お、紡希さんと志乃さん。どうしたの?」
「1組に来るなんて珍しいね」
「いえ、うちの主人に見てくるよう言われましたので」
「ええ。ラブコメの波動を感じましたので」
それを聞いた1組のみんなは首を傾げた。
「まぁ、確認に来ただけですよ。ふふふ」
「ええ。最終確認ですね」
そんなことを話している間に、薫が告白するという話が1学年全員に拡散されたのだった。




