26 おかーさん部、発足
生徒会室へ入ると、五人の生徒が出迎えてくれた。
星羅と寧々も少し緊張していた。
それもそのはず。
いくら自治権が認められているとはいえ、漫画やアニメのような生徒会が存在するわけない。
そう思っていた。
だが、この自由奔放な学園。
教師も自由であるが故、生徒会にもそれなりの権限が与えられていたのだ。
イベントの開催、各部活動の内容確認と予算配分、他校との交渉や交流などなど、多岐にわたる。
そして星羅が呼ばれた理由もここにあった。
そしてなぜか寧々の件も知られていた。
「ようこそ、英愛学園生徒会室へ」
そう言ったのは、真ん中の席に座る女子生徒だった。
綺麗な青緑色の髪の毛を星羅と同じハーフアップにしていた。
リボンも今日の星羅と同じ色をしていた。
「申し遅れました。わたくし、生徒会長をしております日高清花と申します」
堂々と、そして凛とした佇まいは、ザ・生徒会長といった出で立ちだった。
生徒会長が名乗ると、右側の机に座る女子生徒二人が席を立って自己紹介をした。
「どうもどうも。副生徒会長をしている宇慶環です」
明るく答えたのは青く煌めく黒髪をしたミディアムヘアの女子生徒だった。頭頂部のアホ毛が揺れる。
「あ、操のお姉さん?」
「むっふっふー。話は聞いてるよー」
姉妹だな、と星羅と寧々は思った。
そんな明るい環と正反対なのが、前髪を七三にして、髪の毛も肩にかかるくらいの短さの栗色の髪の毛で、大きな黒縁眼鏡を掛けた女子生徒だった。
セーラー服を着ていれば、どこぞのアイドルグループのセンターにも見えなくなかった。
「書記の栗栖ティアです」
キラッと眼鏡とおデコが光った。
「ティノのお姉さん!」
星羅がそう言うと、目を細めて顎を上げて、黙ったまま見てきた。
どういう意図があるのかは分からなかった。
続いて自己紹介したのは、左側の席に座る男子生徒だった。
「会計の伏見磨昼だ」
髪の毛は普通なのに、やたらと眼鏡をクイクイと押していた。一度壊れたのか修復された形跡があった。
「庶務の平城一郎だぞ」
どうして小学生が? そう星羅と寧々は思ったが、それは禁句だったようだ。
『しょ』といいかけた瞬間に、ジロリと睨まれた。
この二人も弟と妹にすごく似ているなと思ったのだった。
城一郎は立つと、頭しか見えなくなるので、机に手を置き、椅子の上に乗っかっていた。
そんな空気を一切気にすることなく生徒会長である清花は話を始めた。
「ではまず、喜築星羅さんの方からですね」
星羅も寧々も何を言われるのか分からなかったが、朗らかな顔で清花は言った。
「ああいうことをするのは構いませんが、事前に許可を取ってください」
「あ、はい」
星羅は拍子抜けした。
「いろんな部活動と連携するのは構いませんが、場所の使用許可とか全然取れてません。何かあったら大変なので、許可だけは取ってくださいね」
「分かりました」
大したことじゃなくて良かったと星羅は思ったが、まだ話には続きはあるらしい。
清花の姿勢が変わらないからだ。
机の上で手を組んだままだ。
「それと、どうしてわたくし達に招待状がなかったのでしょうか」
「え?」
「楽しみにしていたんですよ。そしたらいつまで経っても呼ばれずに終わってしまいました。呼ばれていないのに参加するなど出来ませんからね」
尚も、文句を笑顔で言うので、環が慌てて止めた。
「清花さん、そこまでで」
「むぅ。まだ言いたいことの一割も話せてませんが、まぁいいでしょう。次は気をつけてください」
「あっはい」
星羅と寧々は思った。やはり英愛学園の生徒だな、と。
「では、次は喜築寧々さんですね」
「はい」
寧々が言われるまま渡された紙束を清花へ渡した。
「はい、承りました」
軽く全部の紙を確認し、寧々から渡された紙に署名していく。
その紙を環も受け取り署名すると、残りの三人も署名した。
「では、こちらの要望は生徒会全会一致で承認いたしました」
全会一致も何も、何の議論もせず署名しただけでは?
そう思ったのもつかの間、寧々がよく分からないまま話は進んでいく。
「では、こちらの部活の部長、副部長連名での署名がございましたので、これらの部活は全て『おかーさん部』の傘下に入ることを承認いたしました。後で、廊下の掲示板に貼っておきます」
「え? え?」
「寧々……」
星羅が、呆れた顔で寧々を見た。
「いや、違うんです。これを持っていけば、部活を統合するって話だったんです」
寧々にしては珍しく確認しなかった。それが良くなかった。
気がつけば、『おかーさん部』という謎の部活が発足していた。
部長は寧々で、活動内容はそれぞれの部活のままである。
簡単に言えば、『おかーさん部』の部長の下に、それぞれ『製菓部』や『調理部』が課として存在しているようなものだった。
もう部活じゃなくて省庁なんじゃないかと星羅は思った。
既に可決されている。寧々の思惑とは微妙に違うものの、ある意味では望んだ形でもあったため、そのまま受け入れることにした。
「で、では失礼します」
「失礼します」
寧々が、必要事項を記載し終えると、星羅と一緒に部屋を退出した。
その時、隠れていた忍者の一人がその書類の中に一枚紙を仕込んだのだった。
それに気づいた者は誰もいなかった。
清花は改めて、紙をめくって読んでいった。
「それにしても、結構ありますね。調理部、製菓部。裁縫部は衣装部と横でも繋がってるんですね」
「衣装部は演劇部と一緒で独立したままですね」
ティアが補足するように言った。
「あら、こんなのもあったのね」
「どうかしましたか?」
「最後に忍者部もおかーさん部の傘下になるって入ってたのよ。忍者部なんてあったかしら?」
ティアが調べると、なぜか学園の創立年よりも前の年から存在することになっていた。
そして、なぜか顧問は小鳥遊先生になっていた。
「顧問がいるのなら、正式な部活なんでしょう」
「この学園、いろんな部活ありますもんね」
「こうして、統合してくれると管理するのも楽だからいいね」
「確かに」
そうして、生徒会役員全員で、今どんな部活があるのか、確認することにしたのだった。




