25 全部やってみたい
無事にお茶会が終了したあと──
今日の出来事を報告しようと思ったが、あいにくと光司は残業で、『ごめん、先に食べてて』というメッセージがきた。
五人で食事をして、それぞれがお風呂に入った。
星羅だけは、今日のお茶会が楽しかったのか、お風呂の後も、蒸し暑いにも関わらずドレスを着ていた。
それから少し時間が経ち、寧々は一人、部屋でめんだこのぬいぐるみを抱いて悩んでいた。
「うーん」
そこに、一緒の部屋の早矢が入ってきた。
お風呂上がりだからか、わずかに頬が上気していた。
「あれ、なんか悩んでます?」
「あ、早矢さん……、分かります?」
寧々の横に座って、話を聞く態勢になる。
「聞きますよ」
「早矢さん……」
寧々は早矢の目を見て、おずおずと話し始めた。
「今日は星羅がみんなを集めてお茶会をしたじゃないですか」
「ええ、楽しかったですよね」
「ええ」
準備やお茶会中の給仕、片付けなど、結構大変ではあったが、かなり充実した催しだった。
寧々はめんだこのぬいぐるみを少し強く抱いた。
「それで……」
「それで?」
「お菓子作りをしたんですけど、すごく楽しかったんです」
「なるほど」
そこで早矢は察した。
「つまり、寧々さんは部活をしたい。でも家のことも気になる。合ってますか?」
一瞬、目を大きく見開くと、照れたようにめんだこのぬいぐるみに顔を埋めた。
「はい……」
早矢は寧々の言葉を静かに待った。
「楽しかったんです。いや、家で家事やっているのも好きなんですよ。それは本当ですよ。でも、あそこでみんなと話しながら、どういうふうに作っていくか、どうしたらもっと美味しくなるか、それを自分の知識と織り交ぜて話していく……」
身振り手振りを交えて寧々が話すのをじっと早矢は聞いていた。
「それで、一緒に悩んで解決していくのって、すごく楽しいんですよね。それで出来たものをみんなで共有する。その時のみんなの笑顔を見るのが……好きなんですよね」
「えへへ……」と笑いながらはにかんだ。
「いいと思いますよ」
「そ、そうですか?」
「家のことはみんなですればいいのです。みんなの家ですからね。それに、寧々さん、ずっと楽しそうでしたしね」
「…………」
まだ少し戸惑う寧々。
「うちたちをもっと頼ってくれてもいいんじゃないですか?」
「早矢さん……」
「うちもどうしたいのかは、まだ分かりませんが、光司さんが言ってましたよね。自分のしたいことをする。って」
「ええ」
「うちも思うんです。せっかくこの世界に来たんです。後悔のないように生きたいですよ。まぁ、まだそれを見つけている最中ですが、それをもう見つけている寧々さんや星羅さんは、すごいですよ」
「早矢さん……」
しばらく見つめ合う二人。
そして先に口を開いたのは寧々だった。
「ありがとうございます。そうですよね。少し気負いすぎてました。えへへ」
めんだこのぬいぐるみに顎を乗せてはにかんだ。
「でも、どうしようか迷ってて」
寧々は顔だけを横にして言った。
「迷ってる……ですか」
「ええ。製菓部と調理部。それに他にも興味ある部活がありまして……」
どうやら全部入るつもりだったようだ。
「取捨選択できないのなら、全部入ろうかと……」
少し呆れた顔になった早矢。
でも、一理あると思った。
「そこで、一つ案がありまして……」
「聞かせていただけますか?」
「はい」
寧々は語った。
曜日を決めて参加すればいいと。
そうすれば、満遍なく全部の部活に参加できる、と。
それを聞いて、早矢はなるほどと思った。
だが、それを一介の生徒ができるのか。それと他の学校ではどうかは分からないが、英愛学園でも可能なのかは分からなかった。
それに体力の問題もある。そんなに抱えていては大変だと早矢は思った。
でも、もしそれを寧々が成し遂げることが出来たら、自分も、もしかしたらそうするかもしれないと考えた。
「まぁ、それが出来るのかは明日みんなに相談してみます」
「そうですね。それがいいと思います」
『二つ返事で賛成されるだろう』と早矢は思っていたが、口には出さなかった。
翌日そのことを相談しようとしたら、予想外の答えが返ってきた。
「いいと思うわよ」
星羅は、寧ろどうしてそうしないのかと、問いたそうなくらいだ。
「寧々っちも、たまには息抜きしたらいいと思ってたから、いいと思うよー」
唯は、安心させようとそう言った。
「ええ。寧々さんの能力をわたくしたちだけで独占するのもよくありませんからね」
ウインクしながら静は言った。
「みなさんありがとうございます」
寧々は、昨晩相談した早矢と顔を見合わせて微笑んだ。
そして、そのまま生徒会へ承認をもらいにいくという流れになり、各部活の部長が連名で署名した書類を携えていた。
なんなら、他の部員からの承諾書まで添えられていた。
まさか、そんなことになるとは思わず、終始戸惑っていた寧々。
そのまま背中を押されながら生徒会室へ向かうと、なぜか星羅もいたのだった。
「あら寧々」
「星羅はどうしてここに?」
「呼び出しくらって」
「呼び出されるようなことなんて……」
そこまで言って思い当たることしかないと寧々は、それ以降の言葉を飲み込んだのだった。




