24 ようこそ、お嬢様方
そして始まった星羅主催のお茶会──
ここ数日、雨も降らず、ほんの少し湿気はあったが、コンディションはバッチリだった。
星羅シスターズと呼ばれた、星羅ファンクラブの面々は、ホームページに記載された案内に則り、まず家庭科室へ向かった。
そこで、衣装部と演劇部の生徒が、それぞれドレスに着替えさせていった。
初めてドレスを着る人が多く、着ただけなのに色めきだっていた。
靴や手袋、帽子に至るまで全て用意されており、メイク、ヘアメイクと演劇部の生徒が仕上げていく。
とある県の成人式前の衣装店や美容室のような雰囲気があった。
みんなスマホを渡して記念撮影もしていた。
そのまま、案内されるまま庭園へと向かった。
向かう道中も、花瓶やアンティークな小物が机の上に置かれていた。
さすがに机までは、数を揃えられなかったようだ。
そんな雰囲気のまま、庭園へ入ると、全員が息を飲んだ。
王女スタイルの星羅。
その横には執事服を着た唯、寧々、静、早矢。
後ろには、莉奈、志依莉、伊里愛、菊乃がメイド服を着て立っていた。
当初は蘭子にもメイド服を着てもらう予定だったのだが、本人が丁重にお断りしたため、ここにはいない。
「「「「ようこそ、お嬢様方」」」」
唯、寧々、静、早矢がそれぞれ礼をしながら言った。
唯と早矢は髪を編み上げており、寧々は首元で一つに縛って後ろにしているが、静は逆に前へと垂らしていた。
その姿にも黄色い声が庭園にこだました。
そして、本日の主催である星羅はというと、唯特製の豪奢なドレスを身にまとい、髪の毛はまとめ上げて、ティアラをつけていた。もちろん星羅の私物である。
「今日はわたしのお茶会に参加してくれて、嬉しく思うわ」
星羅が小さくお辞儀をしてから言った。そして丁寧な所作で動きながら続けた。
「今日はね、わたしの所属している園芸部で、みんなと一緒にこのお庭を仕上げたの。これがわたしの仲間でね。すっごく綺麗なお庭にしてくれたの」
後ろで控えるメイド服を着た四人が照れる。
「そして、みんなが着ている服は、唯と演劇部、衣装部、裁縫部で作ったのよ。もちろん、わたしも何着か手伝ったけど、どれかは内緒よ」
そのいたずらっ子みたいな表情で口元に指を添えると、何人かの星羅シスターズが意識を失いかけた。
「そして、このお菓子もね、寧々と製菓部と調理部が作ってくれたの。最近美味しい匂いが漂っていたと思うけど、今日のために頑張ってくれたのよ」
この数日、校内に漂う香りに必死に抗ってきたものが目の前にあった。
今すぐにでも駆け寄って頬張りたいが、それはしない。
今日は、星羅シスターズが敬愛する星羅主催のお茶会。粗相はできない。
自分たちも貴族令嬢に徹しなければならない。
星羅の好きなものに少しでも触れていたかった。
「そして、家具と紅茶は静で、食器は早矢ね。わたしよりもいいセンスしてるのよ」
確かにそこに置かれたテーブルや椅子は、この庭園の雰囲気を壊さないどころか、見事に調和していた。
パラソルでさえ、この場所にあると、より高貴さを醸し出していた。
そして、早矢の選んだ食器だ。シンプルながらも縁取られた色が高貴さと優雅さを表していた。
ここで使われた食器や家具は、この後、学園で定期的に催されるお茶会に使用されることになるのだった。
さすがに初夏にドレスを着るのは暑いので、その後のお茶会は、春先と秋の年二回に落ち着くことになる。
そしてこの場所は、いつしか星羅ガーデンと呼ばれるようになるのだが、それはもう少し後のことだった。
「では、みんなも、もう待ちきれないわよね。では、お茶会を始めましょう」
「「「「「「「「「「はい、お姉様……」」」」」」」」」」
それは凛としていて、でもどこか初々しく、咲きかけの蕾のようでもあった。
お茶会が始まれば、みんな楽しくしていた。
初めてドレスを着て、大好きな星羅主催のお茶会。星羅が一人一人に話しかけてくれる。
唯、寧々、静、早矢が給仕をして、莉奈、志依莉、伊里愛、菊乃も駆け回っていた。
庭園の色とりどりの花々とカラフルなドレスが、この場所を華やかにしていた。
寧々たちが焼いたお菓子も評判がよく、毎日食べたいと嘆く子もいるほどだ。
星羅はそれぞれの参加者に挨拶回りをしていると、意外な人物もいた。
「冴と蓮も参加したのね。というか、わたしのファンクラブ……。どうして黙っていたの?」
「いや、言い出しにくくって」
「うん。まさか、こうなるなんて思わなかったしね」
二人とも気まずそうにするどころか、やっと気づいてくれたといった表情をしていた。
「でも、こうしてドレス着てお菓子食べられるなんて最高ね」
「あ、それ分かる。エレナが知ったら、真っ先に入ったでしょうね」
「あ、エレナは違うのね」
「でも、いたら全部お菓子食べ切られそう」
「そんな白アリみたいな言い方しなくても」
結局、クラスメイトの前ではいつものようになるのだった。
「操も知ったら入りそうだよね」
「ね。そういえば、ティノは?」
「いるじゃんあそこに」
冴と蓮が指し示す方を見ると、いつもと雰囲気の違うティノがいた。
それは、本物の貴族令嬢のようであった。
「悔しいけど似合うわね」
「星羅の方が完璧よ」
「そうそう」
そんな感じでお茶会は和やかに進んでいくのだった。




