23 明日もよろしくね
「やっと完成したわね」
「これをわたしたちが……」「凄い……綺麗……」「こんなところで告白されたら、頷いちゃうわね」「お茶会にも最適ですね」「花が喜んでるだす」
みんなが思い思いに完成した庭園を眺めていく。
まずは作った自分たちで、完成した庭園を堪能する。
これ以上の贅沢があるだろうか。みんなそう感じていた。
「修司もありがとね」
「お、おう」
地面で『へ』の形でうずくまる神崎先生。
とうとう、限界が来たようだ。
「あら、玲子ちゃん先生……」
「なぬっ!」
神崎先生は、その言葉で急に立った。
「いないじゃないか」
「でも、腰治ったでしょ?」
「……まぁ……」
そんなことを話していると、莉奈が星羅の袖を引っ張った。
「今度はわたしたちの野菜、手伝ってくれるんでしょ?」
「もちろんよ。ねぇ、先生?」
「本物の農家の技術を教えてやろう」
「うっ……」「うぅ……」
ここで言う先生は、神崎先生ではなく、練馬で農家をやっている菊乃のことである。
そして、その視線に莉奈と伊里愛がたじろんだ。
「苗はうちで用意すっからなー」
蘭子がニコニコしながら言った。
「それは、そうと、そのお茶会ってわたしたちも参加できるの?」
「そうね。してほしいんだけど……」
今回は、自分を慕う人たちに報いたいと、星羅は考えていた。
実際、こうして手伝ってくれた園芸部の仲間にも、報いたいのだが、少し毛色が違うのだ。
そこで、星羅は考えた。
こちら側の人間として参加してもらえればいいと。
「星羅?」
考え込んでいた星羅を伊里愛が覗き込んだ。
「あ、ごめん。あの、さ……相談なんだけど」
「なに?」「なんでしょう」「なあに?」「なにかしら?」「なんだす?」
「メイド服って、好き?」
その言葉に真っ先に頷いたのは志依莉だけだった。
その後、星羅は家庭科室へと向かった。
「待たせたわね、唯」
「お、星羅、できたんだ」
「もう、バッチリよ」
「ふふ。そうなんだ。こっちも最終確認まで、済んでるよ。あとは、当日を待つのみだね……って、わっ!?」
星羅が唯に抱きついた。
「ちょ、ちょっとどうしたの」
「ありがとう、唯」
「ん。どういたしまして」
そんな様子を尊いと言いながら、他の生徒たちが静かに眺めていた。
「わたし、両方のファンクラブ入っててよかったー」「わたしも入ろうかしら」「あなた、片方しか入ってないの? 損よ」「わたし、ファンクラブの存在知らなかった。非公式の方しか」「それは聞き捨てならないわね」
などと、小さく盛り上がっていた。
そして、星羅と唯が、調理室へ行くと、いい匂いがした。
「廊下まで香ってるねー」
「完全にお店よね」
そう言いながら開けると、香りはさらに強烈になった。
「あ、星羅、唯さん」
「寧々すごいわねこれ、いくつ焼いたの?」
「多分、全部で千個はあるんじゃないですかね?」
「多すぎよ」「焼きすぎっしょ」
「あ、大丈夫ですよ。余ったらみんなで分けますから」
チラッと周りを見ると、ここで作業していた生徒が、少しふくよかになっている気がした。
最終確認はこれだけではない。
既に、準備のできている静と早矢は、調理室の片隅で、優雅にお茶会をしていた。
「あんたたちズルいわね」
「味見をしていただけです」
「予行演習をしていただけですよ」
静は堂々としていたが、早矢は少し苦笑いをしていた。
「早矢が買ってきたこの食器、ホントセンスがいいわよね」
「ありがとうございます」
ニッコリ笑顔で返した。
当然、早矢も自信を持っていた。
「で、静」
「準備は出来ておりますよ」
「え、もう?」
「園芸部が撤収したタイミングで、設置しておきました。一応、テーブル、椅子、パラソルは確認しておいてくださいね」
「気づかなかったわ」
「全速力で行っちゃいましたからね」
それを聞いて、少し恥ずかしそうにした星羅。
そんな話を聞いて、調理室内は少しざわついた。
あの星羅が走ったということに。
いつも優雅に歩いているのにと、今回の星羅は本気であると、誰もが確信したのだった。
そして、星羅は四人と、庭園へと戻った。
「静、完璧じゃない」
「当たり前です。星羅さんがちゃんとやっているのに、わたくしが些細なミスをするなどあってはなりませんからね」
「相変わらず凄いわねアンタ」
「まぁ、それはわたくしだけではありませんけどね」
星羅は振り返る。唯、寧々、早矢も満足げに微笑んでいた。
「みんな、ありがとうね」
「それは、全部成功させてからにしましょう」
「そ、そうね」
早矢がそう言うと、星羅は目を瞬いた。
そして、小さくニッと口角を上げると頷いた。
「じゃあ、明日もよろしくね」
「うっし」「はい」「ええ」「こちらこそ」
星羅が手を出すと、四人もそこに手を置いた。
そして、軽く下へ押して、星羅の掛け声とともに、宙へと手を上げた。
「ところで、みんな執事服は好き?」
星羅が、そう言うと、四人ともそれぞれ違った表情で頷いた。




