22 お茶会準備は大忙し
早速五人は動き出した。
ホームページには徐々に小出しにしていった。
最初は参加者のスリーサイズとアレルギーについてだった。
「あー、疲れたー」
唯は衣装部と演劇部、そして裁縫部とタッグを組んで、放課後に家庭科室でドレスを作っていた。
唯が、どこぞの漫画のように一晩で参加者分のドレスをデザインし、手分けして縫っていく。
さすがの唯も、午前中はずっと保健室で眠っていた。
そして、お昼になると、そのまま保健室で採寸し、午後には家庭科室で黙々と仕上げていった。
「もう限界っしょ」
「ちょ、わたしも手伝うから」
「当たり前っしょ」
皮肉もやせ我慢もせずに、唯は言った。
今日だけで十着以上仕上げている。
細かい刺繍や裁縫をするためにトルソーに着せているが、どこぞの舞踏会のようだった。
「でも、星羅はお庭を完成させる方が先でしょ?」
「そ、そうなんだけど、唯に一番負担かけちゃったなって……」
少し余裕が出てきたのか、いつものようににっこりと微笑むと、星羅が差し入れた飲み物を一気に啜った。
「ふぅ……」
そして、ストローを星羅に向けると、真面目な顔で言った。
「いいんだよ、あーしもやりたくてやってるし」
「だけど」
「それにあーしたちが作った服をみんなが着るの見たいんだ」
その言葉にその場にいた生徒たちが、微笑みながら頷いた。
「無理しないでよね」
「あはは。ちょーっと飛ばし過ぎちゃったね」
「ホントよ。なんで初っぱなから徹夜してんのよ」
「あ、大丈夫。保健室で寝てたから」
「そういうのはやめなさいよ、もう」
そうして、他の協力してくれた生徒たちに差し入れを配っていた。
「星羅はマメだねー」
作ったドレスにこぼさないように、お菓子を頬張りながら呟いた。
*
寧々はというと、参加者のアレルギー情報を見る。
今回作る予定のもので引っかかる食材はない。
そして、寧々は調理部と製菓部とともに、当日出す予定の食べ物やお菓子について話し合っていた。
「では、当日もよろしくお願いしますね」
寧々がお辞儀をすると、一人の生徒が手を上げて言った。
「おかーさんが作ったの食べたい」
「え?」
その後に、『私も、私も』と、手をあげるので、寧々は困った声を出してしまった。
「じゃ、じゃあ、試作してみますか?」
その言葉を待っていたとばかりに、割れんばかりの歓声が調理室に響いた。
その衝撃で隠れていた忍者が何人か被害にあった。
隠れていたのが悪いのだが……。忍者とは……。
どうすればもっと喜んでくれるだろうかと考え、試作し、改良を重ね、極めていった。
それにより、みんなの体重が少し増えたのは内緒だった。
寧々は思った。こういう時間もいいものだと。
みんなの喜ぶ顔が。みんなと笑いあいながら作る時間が。みんなで悩みながら試行錯誤していく時間が愛おしいと思ったのだった。
*
静と早矢は星羅に頼まれていたものを調達しに街へ出ていた。
「星羅さんのお茶会が成功するといいですね」
「その点は、わたくしは気にしておりません」
静がすまし顔で言った。
「そうなんですか?」
「ええ、星羅さんのプロデュース力はずば抜けてますからね。心配無用です」
「へぇ、信用してるんですね」
「ええ。……あ、内緒ですよ。言ったら図に乗りますから」
「ふふ、どうしましょうかねー」
そんな話をしながら、目的の場所へ着いた。
「わたくしは、家具とお茶でしたね」
「うちは食器ですね」
「早矢さんのは大変ですよ」
「え、そうなんですか?」
「ええ。星羅さんは光司くんと趣味がほぼ一緒ですから、結構美意識が高いので、下手なものを選ぶと大変です」
「うわぁ、責任重大ですね。でも、光司さんが好きなものを選べばいいんですよね?」
早矢が得意げに答えたが、静が少し口角をあげて言った。
「そこが今回の落とし穴です」
「え?」
「今回は学園でのお茶会です。星羅さん好みのゴシックなごちゃごちゃしたものを選ぶとダメですね。いついかなる時に使っても派手すぎず、華美でない。しかし、気品や優雅さを持ったものでないといけません」
早矢の顔が曇った。
「ですので、わたくしの方は楽で良かったです」
「テーブルや椅子もそうなんじゃないんですか?」
「わたくしを誰だとお思いで?」
「え?」
「気品と優雅さにおいて、わたくしに匹敵するものはおりません。余裕です」
自信満々に言うので、早矢はすかさずお願いした。
「ええ……じゃあ、うちのも手伝ってくださいよ」
「いえ、食器を敢えて、早矢さんに託したのは、早矢さんの視点が欲しかったのでしょう。ですので、助言はできますが、決定するのは早矢さんですね」
「ずるい」
少し拗ねたように早矢が言うと、静は人差し指を立てて言った。
「まぁ、こういう時は、直感でビビビってきたものを選べばいいのです」
「はぁ。ありますかね?」
「ありますよ」
そうして、食器を見ていくが、そこでもう一つ頼まれたものがあることを思い出した早矢。
「そういえば、茶葉はどうするんですか?」
「それはもう、とっくに手配済みです」
「え?」
「まぁ、光司くんの受け売りですが、ティーバッグなんかに使われる細かい茶葉だと、長く置けばどうしても渋みが出やすいですからね。どんなに高くてもダメです。茶葉の形がしっかり残ったものでしたら、長く置いても渋みが出にくいんですよ。光司くんのツテで、既に発送済みですよ」
スマホに届いたメールを見せていた。
「静さんだけ、ずるいです」
「まぁまぁ。最初にその紅茶で、極上のミルクティーを淹れてあげますから。本場仕込みです」
「絶対ですよ?」
「ええ。ちなみにですが、光司くんはアールグレイが苦手です」
「あ、それはうちも知ってます」
「おや」
そんなことを言いながら、家具や食器を選んでいったのだった。




