21 星羅様ファンクラブ
星羅は家に帰ると、早速みんなを集めた。
部活動をしているのは星羅だけなので、他の四人は既に帰宅していた。
寧々はいつも通り夕飯の準備を。
早矢は洗濯物を取り込んでいた。
唯と静はテレビを見ていた。どうやら夕方のニュースを見ていた。
「で、どうかしたんですか?」
星羅が何を決断したのか、興味があった。だが、星羅の口から出た言葉は予想外だった。
「ねぇ、『星羅様ファンクラブ』って知ってる?」
「星羅……様……ファンクラブ? 自分で『様』付けてるんですか?」
「ちっがうわよ。そう言われたの!」
星羅は顔を真っ赤にして反論した。さすがに恥ずかしかったらしい。
「まぁ、噂には聞いたことありますね」
「あー、確か教室でもそんなの話してたの聞いたことあるかも」
「え、マジで?」
寧々と唯が、朧げな記憶を辿っていくが、記憶は曖昧だ。
「あの……、星羅さんを追いかけてる女子生徒がたくさんいるじゃないですか。その方たちなのでは?」
「なるほど」
最近は節度ある追いかけ方に変化していて、星羅の負担も減ってきていたのだが、それが理由なら納得だと思った。
「(星羅さんのファンクラブ。なんか納得です)」
早矢だけが面白そうに見ていた。
「じゃあ、そんなのがあるか調べてみますか?」
「あ、うん。お願い。怖くて調べらんなくて」
「まぁ、分かりますよ」
寧々が光司のパソコンを持ってきて調べ始めた。
意外なことに誰もパソコンを持っていないのだ。
いや、光司のパソコンがあればいいと。これでないとダメ、というのがみんなの共通認識だった。
そんなパソコンで検索すると、あっという間に『星羅様ファンクラブ』のホームページが出てきた。
だが、会員制らしく、パスワードが設定されていた。
「ふぅん」
寧々は軽く喉を鳴らすと、ハッキングでもするのかと思うほどの勢いでタイピングし、一分かからずに解除した。
「ありました」
「どれどれー」
みんなで画面を覗く。そこには隠し撮りされたであろう写真がトップを飾っていた。
「んー、写りがいまいちね」
「今撮って書き換えちゃう?」
唯がそんな提案をした。
「いいわね。ちょっと着替えてくる」
「では、わたくしはカメラを用意してきますね」
「ケーブルとか探してきます」
静と寧々が席を外した。
唯は星羅のために場所のセッティングを始めた。
早矢も花があった方がいいだろうと思い、唯に尋ねた。
「花瓶とお花も必要ですよね」
「あ、そうだね。じゃあ採ってこようか」
「はい」
そうして、準備が整った。
星羅は貴族風のドレスを着て、椅子に座っている。
両サイドには小さなテーブルがあり、その上には趣味のいい花瓶と季節の花が活けられていた。
星羅はドヤ顔で指を突き出していた。
それは星羅の信者であれば、心臓を撃ち抜かれるのも無理はなかった。
「さて、アップロードはいつでもできますが、星羅は相談があったんですよね」
「あ、ああ、そう。そうなのよ」
そして、星羅はドレス姿のまま、身振り手振りを交えて話した。
「わたしね、今、学園の空き地にフラワーガーデンを作ろうとしてるの」
それ自体は、園芸部なのだから、まぁそうだろうなと四人は思っていたので、口を挟まなかった。
「で、そこでね。この子たちを呼んで、お茶会をしようと思うの」
「へぇ……」「へぇ〜」「ほう」「いいですねー」
「前々から考えててね。なんていうか、さ。この子たちの気持ちに応えたいなって思ったの。丁度タイミングもいいしね」
四人は、なるほどと思った。それと同時に少しずるいと思ってしまった。
自分のやりたいことを先に考え実行しようとしているからだ。
「それで、何をお願いしたいんですか?」
寧々が朗らかな表情で聞いた。是非とも手伝いたいと思っていた。
それは他の三人も同じで、期待して、少しうずうずしていた。
「ありがとう。実はね、寧々にはお茶会用のお菓子とか焼いて欲しいの」
「はい。いいですよ。あ、でも家で焼いてとなると、持ち運びが……」
家のことを優先するなら、家で作らなければならない。いつの間にか、そう思い込んでいた寧々。
だが、星羅がその答えをあっさりと言ってのけた。
「学園で焼けばいいじゃない」
「あっ……」
雷に打たれたような表情になる寧々。
「製菓部とかあるじゃない。寧々にはぴったりだと思うんだけどな」
「確かに……いや、はい。そうですね」
寧々が何かを考え、一瞬躊躇ったが、すぐに了承した。寧々にも考えがあるようだ。
「で、唯には衣装部とか演劇部と組んで、衣装を作って欲しいの」
「もしかして、その星羅の着てるドレスみたいなの?」
「そう」
「まぁ、いいけど。あーし結構大変じゃない?」
「お願い。唯じゃないと、同じような感じになりそうだからさ」
「まぁ、そこはあーしを信じてってことなの分かってるからいいよ」
唯はちょっと、困った顔で了承した。
「わたくしたちはどうしますか?」
「そうね」
星羅としては、お茶会のお菓子と衣装が用意できればいいと思っていた。
だが、そこで足りないものを思い出した。
「静には、椅子とテーブルと小物を。あと、静が前に言ってた紅茶を取り寄せて欲しいの」
「ふふ。責任重大ですね。いいでしょう」
静もあっさりと了承した。
「うちはどうしましょうか」
「早矢にはねぇー……」
「ごくり」
早矢は生唾を飲み込んだ。
「開催日と前日に雨が降らないようにして」
「それはうちにも無理です」
「あはは。冗談よ冗談。食器とティーポットをお願い。早矢のセンスって結構いいからさ」
「分かりました。それなら大丈夫です」
全員で頷きあうと、寧々が最終確認をした。
「では、アップロードしますけど、星羅、何かメッセージを入れるんでしょう?」
「あ、うん」
そうしてホームページには、星羅の写真と共に、『一週間後にお茶会をします。詳細は随時更新していきます』とメッセージを添えた。
場所や詳細は入れなかった。だんだんとボルテージを上げたかったらしい。
それをアップロードした数分後には、ファンクラブ内の掲示板が一瞬で埋まったのだった。
「ところでさ、あーしらのもあるのかな」
「どうでしょう」
そうして、好奇心に負けて調べてしまったところ、なんと見つけてしまったのだった。
それも星羅のホームページに負けず劣らずだった。
五人は、そっとパソコンを閉じたのだった。
「これは見なかったことにした方がいいでしょう」
「そうですね」
「早矢っちのは絶対凛ちゃんが作ってるよね」
「凛さんにここまでのが作れるとは思えないんですけどね」
今日は珍しく早矢が毒を吐いたのだった。




