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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第4章

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21 星羅様ファンクラブ


 星羅は家に帰ると、早速みんなを集めた。

 部活動をしているのは星羅だけなので、他の四人は既に帰宅していた。

 寧々はいつも通り夕飯の準備を。

 早矢は洗濯物を取り込んでいた。

 唯と静はテレビを見ていた。どうやら夕方のニュースを見ていた。


 「で、どうかしたんですか?」

 星羅が何を決断したのか、興味があった。だが、星羅の口から出た言葉は予想外だった。


 「ねぇ、『星羅様ファンクラブ』って知ってる?」

 「星羅……様……ファンクラブ? 自分で『様』付けてるんですか?」

 「ちっがうわよ。そう言われたの!」

 星羅は顔を真っ赤にして反論した。さすがに恥ずかしかったらしい。


 「まぁ、噂には聞いたことありますね」

 「あー、確か教室でもそんなの話してたの聞いたことあるかも」

 「え、マジで?」

 寧々と唯が、朧げな記憶を辿っていくが、記憶は曖昧だ。


 「あの……、星羅さんを追いかけてる女子生徒がたくさんいるじゃないですか。その方たちなのでは?」

 「なるほど」

 最近は節度ある追いかけ方に変化していて、星羅の負担も減ってきていたのだが、それが理由なら納得だと思った。


 「(星羅さんのファンクラブ。なんか納得です)」

 早矢だけが面白そうに見ていた。


 「じゃあ、そんなのがあるか調べてみますか?」

 「あ、うん。お願い。怖くて調べらんなくて」

 「まぁ、分かりますよ」


 寧々が光司のパソコンを持ってきて調べ始めた。

 意外なことに誰もパソコンを持っていないのだ。

 いや、光司のパソコンがあればいいと。これでないとダメ、というのがみんなの共通認識だった。


 そんなパソコンで検索すると、あっという間に『星羅様ファンクラブ』のホームページが出てきた。

 だが、会員制らしく、パスワードが設定されていた。


 「ふぅん」

 寧々は軽く喉を鳴らすと、ハッキングでもするのかと思うほどの勢いでタイピングし、一分かからずに解除した。


 「ありました」

 「どれどれー」

 みんなで画面を覗く。そこには隠し撮りされたであろう写真がトップを飾っていた。


 「んー、写りがいまいちね」

 「今撮って書き換えちゃう?」

 唯がそんな提案をした。


 「いいわね。ちょっと着替えてくる」

 「では、わたくしはカメラを用意してきますね」

 「ケーブルとか探してきます」


 静と寧々が席を外した。

 唯は星羅のために場所のセッティングを始めた。

 早矢も花があった方がいいだろうと思い、唯に尋ねた。


 「花瓶とお花も必要ですよね」

 「あ、そうだね。じゃあ採ってこようか」

 「はい」


 そうして、準備が整った。

 星羅は貴族風のドレスを着て、椅子に座っている。

 両サイドには小さなテーブルがあり、その上には趣味のいい花瓶と季節の花が活けられていた。


 星羅はドヤ顔で指を突き出していた。

 それは星羅の信者であれば、心臓を撃ち抜かれるのも無理はなかった。


 「さて、アップロードはいつでもできますが、星羅は相談があったんですよね」

 「あ、ああ、そう。そうなのよ」

 そして、星羅はドレス姿のまま、身振り手振りを交えて話した。


 「わたしね、今、学園の空き地にフラワーガーデンを作ろうとしてるの」

 それ自体は、園芸部なのだから、まぁそうだろうなと四人は思っていたので、口を挟まなかった。


 「で、そこでね。この子たちを呼んで、お茶会をしようと思うの」

 「へぇ……」「へぇ〜」「ほう」「いいですねー」

 「前々から考えててね。なんていうか、さ。この子たちの気持ちに応えたいなって思ったの。丁度タイミングもいいしね」


 四人は、なるほどと思った。それと同時に少しずるいと思ってしまった。

 自分のやりたいことを先に考え実行しようとしているからだ。


 「それで、何をお願いしたいんですか?」

 寧々が朗らかな表情で聞いた。是非とも手伝いたいと思っていた。

 それは他の三人も同じで、期待して、少しうずうずしていた。


 「ありがとう。実はね、寧々にはお茶会用のお菓子とか焼いて欲しいの」

 「はい。いいですよ。あ、でも家で焼いてとなると、持ち運びが……」


 家のことを優先するなら、家で作らなければならない。いつの間にか、そう思い込んでいた寧々。

 だが、星羅がその答えをあっさりと言ってのけた。

 「学園で焼けばいいじゃない」

 「あっ……」

 雷に打たれたような表情になる寧々。


 「製菓部とかあるじゃない。寧々にはぴったりだと思うんだけどな」

 「確かに……いや、はい。そうですね」

 寧々が何かを考え、一瞬躊躇ったが、すぐに了承した。寧々にも考えがあるようだ。


 「で、唯には衣装部とか演劇部と組んで、衣装を作って欲しいの」

 「もしかして、その星羅の着てるドレスみたいなの?」

 「そう」

 「まぁ、いいけど。あーし結構大変じゃない?」

 「お願い。唯じゃないと、同じような感じになりそうだからさ」

 「まぁ、そこはあーしを信じてってことなの分かってるからいいよ」

 唯はちょっと、困った顔で了承した。


 「わたくしたちはどうしますか?」

 「そうね」

 星羅としては、お茶会のお菓子と衣装が用意できればいいと思っていた。

 だが、そこで足りないものを思い出した。


 「静には、椅子とテーブルと小物を。あと、静が前に言ってた紅茶を取り寄せて欲しいの」

 「ふふ。責任重大ですね。いいでしょう」

 静もあっさりと了承した。


 「うちはどうしましょうか」

 「早矢にはねぇー……」

 「ごくり」

 早矢は生唾を飲み込んだ。


 「開催日と前日に雨が降らないようにして」

 「それはうちにも無理です」

 「あはは。冗談よ冗談。食器とティーポットをお願い。早矢のセンスって結構いいからさ」

 「分かりました。それなら大丈夫です」

 全員で頷きあうと、寧々が最終確認をした。


 「では、アップロードしますけど、星羅、何かメッセージを入れるんでしょう?」

 「あ、うん」


 そうしてホームページには、星羅の写真と共に、『一週間後にお茶会をします。詳細は随時更新していきます』とメッセージを添えた。

 場所や詳細は入れなかった。だんだんとボルテージを上げたかったらしい。

 それをアップロードした数分後には、ファンクラブ内の掲示板が一瞬で埋まったのだった。


 「ところでさ、あーしらのもあるのかな」

 「どうでしょう」

 そうして、好奇心に負けて調べてしまったところ、なんと見つけてしまったのだった。

 それも星羅のホームページに負けず劣らずだった。

 五人は、そっとパソコンを閉じたのだった。


 「これは見なかったことにした方がいいでしょう」

 「そうですね」

 「早矢っちのは絶対凛ちゃんが作ってるよね」

 「凛さんにここまでのが作れるとは思えないんですけどね」

 今日は珍しく早矢が毒を吐いたのだった。


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