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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第4章

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12 五人五色のお弁当


 その後、時間を大幅に超えるほど、写真撮影会を行なっていた。

 まさか、教師陣も混ざるとは思わなかった。

 なんなら、各自、自分のスマホで気が済むまで撮影したからだ。

 食べ過ぎた静は、代わる代わる入れ替わる隣の人物に揺り動かされ、途中から顔が引きつっていた。


 そして、次の移動先は彫刻の森美術館だ。

 今日のお昼休憩も兼ねている。

 ということで、早速手頃な場所でお弁当タイムの開始である。


 唯、寧々、星羅、静、早矢の五人は集まって座っていた。

 だが、他の友人たちが放っておくわけもなく、彼女たちのまわりにはかなりの人だかりができている。

 それは、開演前のイベント会場のようだった。


 そして、五人がお弁当を開く瞬間、今か今かという思いで見られていた。

 そして、弁当箱を開いた瞬間どよめきが広がった。


 「「「「「おおー」」」」」

 彼女たちの家主である須永光司が、朝四時に起きて作ったお弁当である。

 ちなみに前日の二十三時帰宅というハードスケジュールでの手作りである。

 それにもかかわらず、それぞれ異なったお弁当である。


 唯は、可愛さ重視。それでいて味も疎かにしない。

 それはお花畑のようなお弁当だった。

 「唯のはやっぱり可愛いね」

 「えへへー」

 「富良野とか美瑛みたいな立体感ある花畑みたいなのすごいよね」

 「えへへへー」

 「野菜だけじゃなくてうずらまで飾り切り……。すごすぎる」

 「えへ……えへ……えへへへへへー」

 あまりの嬉しさに、ただにやけるしかできなかった。

 いつか、二人きりで行くんだと、勝手に旅行計画を立てていた。


 続けて開けたのは早矢である。

 早矢のは見た瞬間にお嬢様感が醸し出されていた。

 それは、全て食べやすいように一口サイズで、しかも取りやすく食べやすく作ってあった。

 周囲は、これを朝から作る努力と気力と胆力と覚悟に圧倒された。

 「早矢様のこれは買ったら普通に高いですよ」

 「うふふふっ」

 「わたし青森の駅弁で食べたことあるよ。これホント手間かかるんだよね」

 「うっふっふっふっふふー」

 「嘘でしょ! 煮こごりに燻製まで。この手のかけよう」

 「はぁはぁ。光司さん……」

 早矢もまた、そのお弁当を見て悦に浸っていた。

 そして、これをいつか自分が作ってあげるのだと、勝手に未来予想図を思い描いていた。


 静はどんなお弁当なのか、ワクワクしながら開けた。

 開けた瞬間、目が点になった。

 それは欲張りさんの静でも予想できなかった。

 なぜならば、お子様ランチだったのだ。

 小さなハンバーグ、ハート形のオムレツ、チキンライス、イカフライとエビフライ。

 唐揚げは二個。シンプルにじゃがいもと人参だけのクリーミーなポテトサラダ。

 わざわざ甘ダレとトマトソースと二種類のミートボール。

 タコさんウインナーが三匹。極めつけはただのサラダではない。

 それぞれを柵に見立てて入れられていた。

 それを見て、口元を手で押さえた。

 「静さんのは大人のお子様ランチだね」

 「ええ」

 「どれもこれも美味しそう。冷めても美味しいようにしてあるっぽいね」

 「ええ、ええ」

 「というか大丈夫?」

 「だい……じょうぶ……です」

 静はなんとか泣きそうになるのを堪えるので必死だった。

 ここで感情に任せて泣くわけにはいかなかった。


 寧々は一体どんなのなんだろうかと期待して開けた。

 だが、そこにはいつもとあまり変わらないお弁当があった。

 いつもどおり、色鮮やかで栄養バランスやカロリーまで計算され尽くしたいつも通りのお弁当だ。

 だが、寧々は気づいていない。味付けを変えてあることを。

 そう。寧々だけは光司からの挑戦状であることを。

 「これ凄いね。デパ地下とかで売ってそう」

 「そ、そうですね」

 「あれ、元気ないね」

 「いつもと同じなので」

 「まぁ、そういう日もあるよ。元気だして」

 「は、はい」

 だが、その後一口食べて、寧々は光司の想いと意図を知った。

 なんて浅はかだったのだろう。疑った自分を厳しく律した。

 まさか、こんなことを仕掛けてくるなんて。そして、それに気づけなかった自分にも腹が立った。

 不敵な笑みを浮かべ、どう光司に返そうかと一人燃えていたのだった。


 最後に開けたのは星羅だった。

 一体どんな高級食材を使ったのだろうか。

 そして、それをどんな風に仕立て上げたのかを期待して開けた。

 開けた瞬間、星羅は固まった。

 それは、キャラ弁だった。しかも可愛らしい猫さんが三匹も。

 猫さんと目が合う星羅。

 「わー、かわいいー!」

 「にゃー」

 「なにこれー! え、星羅のお弁当可愛過ぎない!?」

 「にゃーん」

 「光司さん、こういうのも作れるんだ。凄いねぇ」

 「にゃうにゃうにゃー」

 あまりの衝撃に猫語しか話せなくなってしまった。

 そして、あまりの可愛さに、食べるかレジンで固めて保存するかを真剣に検討していた。

 まず無言で、震える手で掴んだスマホを落とさないようにしっかりと持って、写真を撮った。

 そして、しばらくお弁当とにらめっこしていたのだった。


 なお、お弁当箱を開けて、ここまで三分も経っていないのだった。


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