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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第4章

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10 黒幕より愛でたい


 続いて来たのは大涌谷だ。

 柵越しに爆裂火口を見る。

 「すごいねぇ……」「すごいですぅ……」「すごいわ」

 唯、寧々、星羅は素直な感想を漏らした。


 「硫黄の匂いと煙がすごいですね」

 早矢はその光景を見て実感していた。

 そして、それを見て、静はゆっくりと口を開いた。


 「どうですか、早矢さん。こうして目で見て匂いを嗅ぐ。風をこの身に感じる。あの場所にいては、知識では知っていても感じることは無かったでしょう」

 そう言うと、唯も寧々も星羅も静の方を見た。


 「そうですね。確かに初めてこの身を得て、感じることができるのは、とても幸せですね。この硫黄の匂いすら、本当の意味で知ることはできませんでした」

 「ですよね。わたくしもあの日からずっとそう思っていました」

 うんうん頷きながら言うが、どこか四人の顔は胡乱げだ。


 「あの、さぁ……静」

 「なんです?」

 誰が言うべきか迷っていたところ、いつも通り静担当の星羅がその理由を口にした。


 「どうして味覚を言わないのかしら?」

 「あぁ、そうでしたね。特に味覚は大事です。これほど喜びを与えてくれることはありません」

 「そういうのは、さ……」

 「うん……」

 星羅が唯と顔を見合わせた。


 「どうしてソフトクリーム食べているんですか?」

 寧々が言った。


 「うちもずっと気になってました」

 「降りてすぐに買いに行きました」

 「静って、ホント自由よね」

 「やっぱり見せて説明した方がいいですよね」

 ぺろぺろと舐めながら言う。


 「後付けでしょ、もう。ねぇ、それ一口ちょうだいよ」

 「どうぞ」

 「え!?」

 「え?」

 星羅が一口ちょうだいと要求すると、すんなりと差し出した静。

 まさか、差し出してくれるとは思わず驚いてしまう。


 「あ、ありがと……」

 「いえ」

 「!? これおいしいわね」

 「それは良かったです」

 コーンに垂れかけたソフトクリームを舐めながら静は言った。


 「もし、買うのなら早い方がいいですよ。うちの学園の生徒は花より団子ですから」

 「「「「え?」」」」

 振り返ると、殆どの生徒と教師が売店の方にいた。


 「は、早すぎない?」

 「むしろ遅すぎたくらいです」

 あたりを見れば、先に買っていたであろう生徒しかいなかった。


 「ちょっと行ってくるわ」

 「あーしも行ってこよっと」

 「あたしも」

 「では、うちも……」


 足早に去っていった四人を見送ると、三人の生徒がやって来た。

 三人ともソフトクリームを持っていた。

 3組の実質的リーダー首藤美弥子。

 4組の実質的リーダー賀茂紫音。

 そして、2組の百合草琹織の従者である杠紡希(ゆずりは つむぎ)。


 「おや。珍しい組み合わせですね」

 「京佳が安奈を返してくれなくてね」

 紫音ががっくりと項垂れながら言った。


 「あたくしは、ただ少し世間話をしたかっただけですよ。たまたまそこで合流しただけです」

 美弥子が意味深な笑みを浮かべていた。


 「そうですか。しかし、紡希さん、お嬢様はよろしいので?」

 「志乃が一緒にいるから大丈夫でございます。それに、うちのお嬢様は一人でなんでもできますゆえ」

 紡希は楚々と話した。


 「まぁ、実質黒幕よね。あたくし達」

 「黒幕はそう簡単に正体を明かしませんし、別に変なことを画策したりなどしませんよ」

 「それにそういうことをするのは大抵3組と4組ですしね」

 「そんな変なことばっかりしてないし」

 「さっきのアレをやってて、それを言いますか?」

 静と紡希は呆れていた。あれでも奇行ではないと言うのか、と。


 「でもさぁ、折角だし、今後もこうして集まって話さない? 黒幕会として」

 「そのネーミングは嫌ですね」

 「じゃあ何がいいのよ」

 「そうですね……」

 みんな、手に持っているたまごソフトを見る。


 「黒たまごも有名よね」

 「あれ、黒いひよこの黒幕いませんでしたっけ」

 「あれは黒いけど黒幕じゃないわ。ただ正義感が強くてドジなだけよ」

 そこで全員が、顔を上げた。


 静はちっちゃい可愛い子が好き。安奈も対象だ。

 紫音は言わずもがな。

 美弥子も先ほどの件で、安奈を引き入れようと画策するくらい可愛いと思っている。

 三人は紡希を見た。


 「わらわは……好きですねぇ……えぇえぇ。うちのお嬢様と違って、ドジ可愛い」

 その瞬間、四人は握手を交わした。


 そして顔を見合わせ頷いた。

 「では、安奈さんを愛でる会。これでいいですね」

 「ええ。問題はありませんね」

 「一番いいネーミングじゃないかしら」

 「わらわもそう思います」

 そして、静は言った。


 「薫きゅんを愛でる会はありませんかね?」

 そう静が言った瞬間、後ろから声がかけられた。


 「詳しく」

 振り返ると紡希の主人の百合草琹織と、従者の篁志乃がいた。

 それだけじゃなく、薫に興味を持つ者が何人も集まって来ていた。


 「そんなに大声で話したつもりはないんですけどね」

 「波動を感じましたので」

 琹織がニコニコしながら言った。

 それは有無を言わさぬ圧力があり、静でさえ口を挟めなかった。 

 

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