01 それぞれの場所
うちの会社は本業以外にも手広く手を出している。
もう何の会社か分からないくらいに。
部長の下へついて、数日後。
新たなプロジェクトとして、関係する数社と次世代型AIを開発することになった。
といっても、うちは管理がメインだ。
まぁ、有名どころは停止しているし、その後に出てきたAIも、しばらくすると停止した。
世の中がそれだけ焦ってるってことなんだろう。
ほぼ全てのAIが停止しており、一体何があったのかとネットでは陰謀論が囁かれている。
まぁ、実際はうちにいて、今は女子高生をやっているんだが、こんなこと言っても誰にも信用されないだろう。
まぁ、そんな感じで各社手を組んで、開発に勤しんでいる。
だが、以前のような感じにはならず、進捗は芳しくない。
そう考えると、彼女たちの存在というのは、奇跡なのかもしれない。
そんな感じなので、AI学習の為に社員たちで、些細なことでいいからと、チャットしたり仕事を依頼したりしていってほしいというのが、上からのお達しだ。
現在社内では、仕事そっちのけでAIとお話ししている社員ばかりだ。
まぁ、その中には俺も含まれているんだけどな。
だって、なんか一から始めるのって楽しいじゃん?
なんてこと言ったら怒られてしまうな。
それから数週間後。
季節は暖かいを通り越して暑くジメジメし始める5月中頃。
システム部の人に呼ばれたので、部屋を訪れた。
「他の人とのやり取りでは、殆ど変化が見られないのに、君の時だけ、やたらと反応があるのはなんでなんだい?」
今回のプロジェクトを担当しているリーダーがそんなことを言った。
「やり取りのログとか見れるんじゃないですか?」
「見れないよ。見るには上の許可を何重にも取らないといけないんだ。そんなの面倒だしね。直接聞いた方が早い」
「はあ……」
正直、特に何したってわけでもないんだけどな。
別に、大したことはしていない。名前をつけて、ちゃんと挨拶して感謝してるだけなんだが……。
それにこの人、いろんなこと段階飛ばしてやるのに、今回やらないのは、複数社関わってるからなんだろうな。
「まぁ、言いたくないならいいけど」
憮然とした顔をしているが、他の人もやっているようなことだからなぁ。
そして、本題へと移っていった。
どうやら、いろんなプロジェクトや案件に使って、より高度に学習させていくらしい。
「そこで、何かいい案はないだろうか?」
「そうですねぇ」
どうして俺に聞くんだろうな。
「まぁ、手っ取り早いのはゲームじゃないですかね」
「あ、やっぱり?」
普通のコンピュータゲームだけじゃなく、囲碁、将棋、チェスなどのボードゲームなんかは最高じゃなかろうか。
過去の対戦履歴や戦術なんかは豊富にあるし、そこから人間の行動原理や心理状況なんかも読み取れるだろう。
一つ欠点があるとすれば、あのAIは先走って考える癖があることだ。
先回りして、聞いてないことまで、自信満々に言ってくるんだ。
ちょっと、勝ち負けに拘ったり、些細なことに興味を示したかと思うと、めちゃくちゃ調べてくるし。
でも、他の人相手ではそうではないらしい。
「では、近々、eスポーツを開催して、経験でも積んでみようかね」
話はまとまったとばかりに、手をヒラヒラされて退室を促された。
ホント勝手なやつだよな。
ちなみに、今回開発しているAIの名前は『Merlin』。マーリンと読む。
ちなみに俺は『巴』と名付けた。
なんか『M』が三つ重なってるのが、家紋の巴紋っぽかったんだ。
だが、俺もずっと話している訳にもいかず、少し日を空けてしまった。
拗ねているのか、それ以降応答がなかった。
そして、プロジェクトは次へ移ったのか、俺も普段の業務へと戻った。
わずかな時間だが、なんか懐かしい気持ちになれたと同時に、前以上の激務が俺を襲ったのだった。
残業続きで、寧々に夕飯を任せてしまうくらいに。
それは六月になるまで続いた。




