番外編69 お魚さんを見に行こう9
さて、お待ちかねのアシカとイルカのショーだ。
淡水魚コーナー。そして、北海道のお魚コーナーを過ぎるとこの場所につく。
やっぱり、北海道のお魚コーナーの時は、食欲に傾くんだよな。
入ると、結構人が入っていた。
静を先頭に、なぜか後ろの方の席へ向かった。
「いいのか? 前の方結構空いてるぞ?」
前の方は、小さいお子さん連れが多い。
みんな、売店で買ったのか、レジャーシートやカッパを着ている。
「上から見たいので」
嘘だな。
濡れたくないんだろ。
だって、俺の方見ないで言ったからな。
「や、あーしらも楽しみたいけど、濡れるのはちょっとねー」
「水も滴るいい女とは言うけど、後のこと考えるとね」
ユイと星羅が、困った顔で言う。
「あたしは、いいですよって言ったんですけどね」
「うちも、静さんがそこがいいと言うならって」
なるほど。寧々と早矢は譲ったんだな。
で、静はと言うと……。
「総合的に勘案してやめました」
なんとも言えない複雑な表情をしていた。
まぁ、濡れないギリギリ近い辺りは全部埋まってて、後ろか最前しかないからな。
そういう反応になるのは仕方ないか。
しかし、まだ開演まで時間がある。
三十分くらいあるな。
ということで、待ってる間、今日見た魚やサメや動物のことを話していた。
静はユイと星羅の三人で、撮った写真や動画を見ながら話している。
静と星羅の専門的な会話にユイが振り回されている。
多分、ユイはもっと可愛いとか綺麗だったとか、そういう話をしたかったのかもしれない。
俺もそうだ。
寧々と早矢は、『あのお魚さん帰りに買って帰りましょう』とか、『味が気になる』とか、絶対に水族館で言っちゃいけないようなこと言っている。
まぁ、それもほんの僅かで、後半は可愛いとか綺麗だったって話になって良かった。
ユイが代わって欲しそうに見ているので、場所を交換することにした。
早速、ユイは寧々と早矢と、魚やサメの動きや特徴なんかを年頃の女子っぽく話していた。
その様子はとても絵になっていた。
そして、こっちはと言うと……。
「チンアナゴの警戒心についてですが……」
「あれの縄張り争いはね……」
何で星羅もそっち側なんだよ。
俺も知りうる知識をフル動員して参加したが、あっという間に負けた。
知識量では敵わない。
俺はショーが始まるまで、ずっと両サイドの教授の講義を受け続けていた。
もうこれ、ほとんど放送大学だよ。
ユイが『ごめんねー』とウインクしながら両手でポーズを取っていたが、気持ちは分かる。
さて、お姉さんのアナウンスが流れると、みんな観る態勢になった。
アシカが階段から駆け上ってくると、お姉さんと一緒に、観客席前の高い段差を軽々と駆け抜けていく。
よく滑らないなと、感心していたが、アシカの動きを見ていたら、そんなこと気にならなくなった。
俺の両サイドにいる静と星羅は、スマホを持ったまま、見ていたが、無粋だと思ったんだろう。
早々にしまった。
確かに、これは撮影に集中するより、生で見た方が圧倒的にいいと思う。ライブと同じだな。
記録より記憶に残したいタイプだと思う。
二人もそう思ったんだろう。
星羅なんか、俺の背中をバンバン叩くし、静は俺の肩を掴んで揺りまくる。
まぁ、楽しんでいるようで何よりだよ。
ユイ達の方を見ると、三人とも楽しそうにしていた。
そして、アシカが床をペチペチ叩いて水飛沫を上げているのを見て、「わぁ」と声が上がった。
多分、次に来た時は近い席になるかもしれない。
続いてイルカのショーが始まる。
先程とは別のアシカが登場しており、これまたいろいろと演技していた。
昔なら、いろいろ言っただろうに、「お利口さんですね」とか「上手だわ!」と、褒めていた。
あの頃から、だいぶ経つけど、随分変わったよなぁ。
続くイルカのジャンプは、声を上げるのすら忘れてしまうくらいすごかった。
かなり高く飛んだり、何回も短い間隔でジャンプしたり、高い位置のボールを飛ばしたり、打ち返したり。
これは、確かに人が集まるなと思ったし、また観たいとも思った。
横を見れば、みんな嬉しそうに手を叩いていた。
「見れて良かったです」
静は、感極まって声が震えていた。
「良かったな」「良かったわね」
俺と星羅で声をかけると、眦を細めて「はい!」と、返した。
ユイの方はというと、寧々と早矢と興奮しながら、身振り手振りを交えてはしゃいでいた。
公演が終わったので、ホールを出ると、「ハズレのないクジ」をやっていた。
静がそれを見て、たたたーと俺達の前に回った。
「一等当てましょう」
ふんす、と鼻息荒く、胸の前で両拳を握っていた。
「仕方ないわねぇ」
星羅が、やれやれといった感じで腰に手を当てると、みんなが財布から千円札を取り出した。
「当たるかは分からないぞ?」
「いえ、当ててください」
全然譲歩しないな。
棚には、一等、二等、三等と、イルカと子ペンギンのぬいぐるみがあった。
二等まで当てている人は見かけるが、一等はいないようだ。
さて、どうなるかな。
先程の場所から外に出る。
外にもいくつか水槽がある。
ハゼとかヤドカリとかヒトデとか小さめの生き物がいるな。
そんな様子をユイと寧々と星羅と見ていたのだが、やっぱり気になって振り返ってしまった。
「大丈夫か? 重くないか?」
「問題……ないです……」
「ええ、大丈夫ですよー」
まさか一等当てるなんてな。
静は子ペンギンを。早矢はイルカを抱えている。体が隠れるくらい大きい。
「光司から頂いたこちらの三等の子ペンギンは光司と名付けますね」
「まぁ、それは好きにしていいけど」
俺はと言うと、三等の子ペンギンだった。
とってすぐに、「ありがとうございます」と言われたから渡したんだが、まさかその後に一等当てるとは思わなかった。
ユイ、星羅は三等のイルカ。寧々は子ペンギンだった。
まさか早矢まで一等のイルカとはなぁ。本人が一番驚いていた。
で、ペンギンとは違って、イルカは持ちづらいのか難儀している。
「光司、車の鍵を貸してください。マッハでしまってきます」
「お、おう……」
まぁ、再入場できるからいいか。




