番外編67 お魚さんを見に行こう7
その後、順路の先へ向かうと、そこにもサメがいた。
なんというか、サメもいろんな種類がいるんだなと思った。
そして案の定、予想していたことを言われた。
「このサメってさぁ、でーんって寝てるわね。ホント光司みたい」
「はっはっは。何を言いますか星羅さん。こちらの子の方が光司そっくりです」
「いやいや、こっちのがコージっぽいよ? かわいいし」
「光司さんの扱いが酷すぎます」
「早矢、もっと言ってくれ」
「ええ……」
サメはやはりお休みモードらしく、下で眠っていた。いろんな種類のサメが同じ場所に固まって眠っているのは可愛いが、全部俺と言われるのもなんだかな。
「そんなに言うなら、今度は旅行はなしにするぞ?」
「それはそれ、これはこれです」
まさか寧々に背中から撃たれるとは思わなかった。
「まぁいいじゃないですか。光司さんが寝ていたら、一緒に寝ればいいし、なんなら膝枕すればいいのです」
言ってやりましたよって顔をしているが、論点がずれている気がする。
「まぁ、いいか」
「はい。いいのです!」
元気いっぱいにそう答えるので、他のみんなも、それ以降何も言えなかった。
いや、何か別のことを考えているようだ。
そうして、その後、小さな水槽にいる生き物を見ていくと、大きなサメの歯や卵の標本などがある場所へ出た。
途中、タツノオトシゴやクマノミとイソギンチャクの辺りであれこれ言いながら眺めていた。
色々見ながら感想を言い合うのはいいんだが、どうも違うことを考えているような気がするのは気のせいだよな。
「しっかし、これ大きいな」
一体何のサメの標本かは分からないが、かなり大きい歯の標本があった。
「こんだけ大きいと、食費大変そうですよね」
「ねぇー。コージの腕がパンパンになっちゃう」
どうして俺が料理作る前提で話が進むんだよ。
「あれ、星羅と早矢と静は?」
「あそこにいますね」
そこには、とあるキャラクターの描かれたパネルが置いてあった。
みんなで写真を撮っているようだ。
「ほら、コージも行こ」
「そうですよ。ほらほらー」
ユイと寧々に引かれるまま、そのパネルの前に行き、一緒に写真を撮った。
どんどんメモリーが増えていくな。
そして、案の定お土産コーナーで、ぬいぐるみの前から離れない静を引きずりながらエスカレーターで上へ行った。
すると、先程までの雰囲気は霧消した。
まず、エトピリカを目撃したユイ、星羅、静がその前から一切離れなかった。
「え、これペンギン?」
「違います。これはエトピリカです。全くの別ですよ」
「へぇ、そうなの。……あら、水の中でも飛ぶように泳ぐのね」
俺と寧々と早矢が、後ろから眺める。
結構いるんだな。浮かんだり、水中を泳いだり、飛び込んだりしている。
「あれ、あの子泳ぎ下手だね」
「ホントね。全然進んでない」
「行水しているんですかねー」
確かにバシャバシャさせるだけで、ちっとも進んでいないのもいる。
「あ、あの子羽を咥えてますね」
その個体はお気に入りなのか、羽を咥えて水面をぷかぷか泳いでいる。
「わー、かわいいー」
「落としても、咥え直すんですね」
「そんなキュートな仕草見せつけてくるなんて、やるわね」
お魚さん以上に食いついてるな。
そんな風に見ていると、アナウンスが流れた。
どうやら、エトピリカのもぐもぐタイムが始まるらしい。
それを聞いたみんなが動揺した。
「こ、光司、もぐもぐタイムだそうです」
「分かってるよ。見たいんだろ?」
「はい」
「わたし達のご飯より、この子達のご飯を食べる姿を見る方が大事よね」
「間違いないです」「当然っしょ」「それ以外の選択肢がありませんね」
ホントにこういうの好きだなぁ。
ま、俺も好きだし、そういうのを見てるみんなが好きだわ。
そして、暫くすると、飼育員さんが出てきて、説明を始めた。
どうやら、ガラスが厚いのか、こっちの声は聞こえないらしい。
ユイ、寧々、星羅が手を振って応じた。
飼育員さんは、腰につけた餌入れからそれぞれ説明しながら、与えていた。
丸呑みなので、もぐもぐはしないのが難点みたいなことを言っていた。
エトピリカ達は器用に嘴で取ったり、水中で食べたりしていた。
難点と言えば、食べたら出すところだろうか。
しかし、今の時間の方が動きが多い。
かなりの数が飛び込んでいる。
かと思えば、陸に上がるのもいる。
ペンギンと違ってキビキビしているな。
そんな様子をみんな楽しそうに見ている。
「うちの娘達そのものですねぇ」
寧々が母親みたいなことを言う。
「本当に、どちらもかわいいですね光司さん」
早矢まで、頬に手を当てて同じように言う。
「ほら、なかなか見れないんだから、もっと見た方がいいぞ」
寧々と早矢の背中をポンと押す。
「むぅ」「なるほど。これは手強いですね」
今は俺よりエトピリカ見た方がいいと思うんだ。
そして、飼育員さんの説明もそろそろ終わりという頃。ツガイは毎回異なるのだが、嘴を当ててキスのようなことをするらしい。
残念ながら、飼育員さんがいる間にはそれは見られなかったが、約十分。いい時間だったんじゃないだろうか。
次はアザラシのもぐもぐタイムとのことらしい。
それまで少し時間があるのだが、みんなはその場を離れない。
静に至っては、ずっとスマホで撮影していた。
道理で静かな訳だ。
他のお客さんが離れ、人数が少なくなってきた。
どうやら上からも見られるらしく、そっちに移動するらしい。
そんな時、一つのツガイが嘴を当てていた。
「あっ!? コージ、見て! キス!」
「したわ! キスしてるわ! うわぁ!」
「はわわわわ! きっ、キスしてます。キスしてます光司さん!」
「ほう……(なんと大胆な……。予想外です……。ふえぇ……)」
「(あんな堂々としているなんて。大胆ですけど、参考になりますね)」
「見てる! 見えてるから」
全く、色恋沙汰には敏感に反応するんだから。
ユイ、星羅、寧々が俺の前に立って見上げてくる。
一歩出遅れた早矢があわあわしている。
「ほら、コージ。んー」
「どうしたの? しなさいよ」
「光司さんっ!」
「さっきまでの母親マウントはなんだったんですか」
早矢の鋭いツッコミにも、寧々はスルーして、爪先立ちしている。
俺は、手で三人のおでこを軽く押して、嘆息した。
「しないぞ」
「なんで?」「なんでよ!」「なんでですか!」
息ぴったりだな。
エトピリカに流されて、やることではない。
「ほら、エトピリカもこっち見てるぞ?」
「「「え?」」」
振り返ると、十羽くらいのエトピリカがこっちを見ていた。
まさか、見られる側になるなんてな。
しかし、静はさすがだよ。微動だにしないもんな。
代わりに早矢がその様子を撮影していた。
「家族の様子も撮らないといけませんものね」
やはり、早矢は少し強いなと思った。




