番外編65 お魚さんを見に行こう5
「もう、光司ったら大胆ね」
「いや、あそこで踊るのはちょっとな」
「折角いい雰囲気だったのにー」
後ろからユイ達もやってきた。
すまんな。さすがにあそこで踊るのは違うと思ったんだ。
と、いうことでまだ顔が熱いが、この空間が暗くて良かった。
ただ、俺の顔が水槽の照明とおんなじ状態になっているのがな。
だからだろうか、みんな俺の顔を見てニマニマしていた。
今度は深海魚のコーナーだな。
やはり深海だと、変わったのが多いな。
俺も大概だが、とある生物の前でずっとそれを見てしまっていた。
なぜかユイと寧々と早矢もそれを一緒になって見ていた。
「なんかきも可愛いのはずっと見ちゃうよね」
「ね。なんか目を離せないっていうか」
「光司さんが好きなものはうちも見ます」
早矢は無理しなくてもいいんだぞ?
「かわ……いい?」
星羅は好みがはっきり分かれるな。
ミミズとか平気なのに、意外だ。
でも、チラチラ見てるな。やはり気にはなるようだ。
静はちゃんと説明のところを読んでいる。さすがだ。
そして、全員の関心は次の水槽だった。
「タカアシガニだな」
「あつ森でも大きかったですが、リアルも大きいですね」
「ちゃんと六匹以上いますねー」
寧々よ、食べる気で言ってないよな?
「あーし、カニ大好き」
ユイはカニの絵文字よく使うもんな。ピースマークの意味で。カニ的には全然平和じゃないが。
横を見ると、静が何やらスマホを操作しており、明らかに写真目的で操作していない。
星羅が覗き込み、早矢がスマホを静に向けて三人で何か話してうなずき合っている。
一体何をそんなに相談しているのかは分からないが、ロクなことじゃないだろうな。
だって、タカアシガニを指差しながらスマホを交互に見比べているんだからな。
「決定ですね」
「決まりね」
「決まりましたね」
なんでそんな満足そうな顔しているんだ?
ユイと寧々も明らかに感想がおかしいからか、タカアシガニがどんどんと奥へと引っ込んでしまった。
すまんな。
その後、バックスペースが覗ける位置にあるクラゲを見る。
それは、まるで星のように小さく煌めいていた。
「うちでもアクアリウムしたいですね」
静がそんなことを言った。
「静がちゃんと管理するなら」
「?」
どうしてそこで首を傾げるんだよ。
「いえ、うちにあれば光司の練習になるかな、と」
「配慮痛み入るわ」
毎回、クラゲの水槽の前で告白の練習させられたら身が持たんがな。
エスカレーターに乗って、上を見上げると、サメが泳いでいた。
どうやら上部にも水槽があるようだ。
静がずっと、俺の服をツンツン引っ張ってくるが、自分でお世話しないなら飼わないぞ?
うちに地植えした盆栽も、ほとんど俺が世話してるんだから。
だが、そんな静を含めてみんなサメを見ると、一気に興味はそっちへ移ったようだ。
登り切るあたりから横側にも水槽があった。
いろんな種類のサメが泳いでいた。
それにしても大きいな。
エスカレーターから降りて、小窓から覗くと目の前を泳いでいく。
「すごいねぇ」
俺の横からユイも一緒になって覗く。
「な。臨場感あるよな」
「パクっていっちゃうね」
「はは。そうだな」
「あーしもパクパクしちゃうよー」
そう言って、手で俺のお腹をパクパクさせるユイ。
「なんでお腹なんだよ」
「や、ここに貼られたキャラが少しお腹出てるかなーって」
これはそういうデザインというか、そういうポーズなんだろ?
というか、それだと俺のお腹が出ていることになるんだが?
ちゃんと動いて減らしたはず。…………減らしたはず…………。
ユイのパクパク攻撃から逃げるように進むと、大きく見られる場所に出た。
丁度、係員さんがサメについて説明を始めたので、みんなで聞きながら見ることにした。
その説明を聞きながら、サメを見る。
確かにそれぞれ似てるようで全然違う。
サメにもいろんな種類がいるんだなと思った。
そして、餌の時間らしく、上から餌が降ってくるが、先に下にいるサメに分け与えるのは、意外だった。
ちゃんと他のサメのことを考えているんだなと、少し心が温かくなった。
ただ、お腹いっぱいなのか、殆どのサメは寄り集まって眠っていた。
下には結構な数の餌がそのままになっていた。
「なんかかわいいね」
「そうだな」
ぐでーっと同じ方向を向いて眠っている。
なんか平和でいいなと、なんか理想だなって思ってしまった。
上の方で泳いでいる方のシロワニはいかにも、ザ・サメって感じがする。
端の方で、別の係員さんが、どの個体がどれだけ食べたかを記録していた。
「なんですか?」
静がチラッと見る。
「いや、別に」
どうして俺のお腹を見るんだよ。
静だって、最近また戻りかけてるんじゃないか?
そう思うと、うちもやったほうがいいのかななんて思ってしまった。
だって、いっぱい食べるんだもん。
「ずっと見ていたいですけど、やっぱり人気ですね」
「サメがメインだもんな」
「まぁ、お昼寝タイムですから、仕方ありませんね」
次の水槽にもいろんな種類のサメがいたが、やはり食べた後は眠くなるんだな。
眠らずに動き回っているうちのほうがおかしいのか考えてしまった。
だが、次の水槽に行ったら、俺も動けなくなってしまった。
なぜって? ノコギリザメが可愛いんだ。
この水槽、イモリザメの方がメインなのかもしれないが、俺はこっちの方が好きだ。
だって、地面でノコギリにあたる部分を上に持ち上げているんだ。
どうしてこんな体勢をとっているのか分からないが、俺の琴線を鷲掴みにしている。
「光司さんって結構こういう感じの好きですよね?」
「まぁな。なんというか、こうポーズとか仕草が可愛いのがな」
「「なるほど」」
寧々と早矢が同じポーズで考え事をしていた。
「ヨガみたいなポーズだよね」
「確かに」
ユイと星羅がそんなことを言う。
「うちでもやってるよね」
「そうね。なんで光司は同じポーズとってるのに、可愛いって言わないの?」
そんなこと言われてもなぁ。だって、サメがやるから可愛いんであって。
まぁ、そんなこと言えるわけもないので、どう言い訳しようか考えていると、静がそっと呟いた。
「察してあげてください。照れ隠しですよ」
「「「「へ?」」」」
「つまり、面と向かって言えなかったのです。ですよね光司」
「え、違うけど」
「……………………」
なんでそんな冷たい目で睨むんだよ。
そして、その場に留まると迷惑だからと、みんなに真ん中へ連れて行かれた。
暫く答えを言うまで解放されなかった。
何を言っても納得してくれなくて困ったよ。




