番外編62 お魚さんを見に行こう2
「絶対にこの中に雨女がいるわね」
「昨日の天気予報では、朝のうちに止む予報でしたね」
星羅と寧々が窓の外を見ながら言う。
まぁ、季節的に仕方ないだろう。梅雨だし。
しかし、今年はちゃんと雨降ってるなぁ。
「まぁまぁ。雨でも水族館は楽しめますから」
早矢がどこか申し訳なさそうに言う。
「そうですよ。イルカさんとアシカさんのショーの場合、晴れだと逆光で見にくい時がありますから」
静のはフォローになってるんかな?
「ほーらー、早くしないと雨足強くなるって」
ユイが玄関に向かいながら急かした。
早矢のは、多分偶然だと思うんだ。ずっと土日は雨のイメージあるし。
しかし、本当によく買ったな俺。
見た目も内装も真逆だわ。
だが、憎めない見た目してるよな。そこに惹かれたんだろう。
と、いうことでこの車を選んだ寧々と静が前列に。
後ろは、星羅、ユイ、早矢の順で乗った。
「早矢っちはそこでいーの?」
「はい。左後方確認する時、目が合いますもんね」
「「変わって!」」
「ほらほら行くぞー」
しかし、これ結構キビキビ走るな。十分だわ。
でも、走ってる最中、みんなこっちを見てくるんだよな。
俺も走ってたらおんなじ行動するけど、そんなに見なくても良くないか?
そんな車の中におっさん一人と美少女五人乗ってるんだ。
悔しそうな顔をして走り去っていくやつの多いこと。
止むと言われていた雨は止んだり降ったりを繰り返していた。
そして、相変わらず、寧々のナビは完璧だよな。
「前方アスファルトの状態がよくありません。左空いてますね」「今抜いて行った軽バンが風に煽られて左に来てます。速度を落としましょう」「後ろの車がスマホいじってますね。左なら影響ありませんから今のうちに移動しましょう」「二分後に雨脚が強くなりますが、五分後に抜けるでしょう」
そんな感じで、全く危なげなく友部SAまで着いた。
束の間の曇りだ。
早速ユイと星羅がトイレへ。寧々と静はお土産コーナーへ向かった。
俺は早矢と一緒に店内を巡っている。
「みなさん結構慣れてますね」
「最初からああだぞ?」
「そうなんですか?」
「ああ。だから、もっと早矢もわがままを言っていいんだぞ?」
「でも、大変じゃないですか?」
まだ、少し慣れていない感じがする。
性格だからなんとも言えないが、もう少しわがままを言って欲しい。
「そんなことないさ。いろいろ言ってくれた方が、何を思ってるのか分かるし、何より俺もそれに応えたいからな」
「そうですか。みなさん。光司さんをオカンだのオトンだの言いますが、ちゃんと恋人してますね」
「あっ、そうか」
「そうか? もしかして忘れてました?」
寧々みたいにニコニコしながら距離を詰めてくる。
「い、いや、忘れてない。ちゃんと考えてたよ」
「本当ですかー?」
寧々みたいな感じで圧を与えないでくれ。
本当に、最近保護者目線になっていたことは、絶対に言うべきではないな。
「では、うちは、もう少しわがまま言ってもいいんですね?」
「もちろんさ。だって、抑えてたって楽しくないだろ?」
「まぁ、そうですけど」
「徐々に慣れていけばいい。自分を押し殺して他人の顔色を伺う人生なんてつまんないぞ?」
「うちはそこまで拗らせてませんよ」
「すまんすまん。俺の体験談だ」
つい、自分の価値観で言ってしまうな。
「では、光司さんもうちも、もっと好きを見つけましょう」
「そうだな」
「光司さん?」
「どうした?」
「目の前の好きに気づいてくださいよ、もう」
そう言われて、慌てて視線を横にずらしてしまった。
今日は涼しいはずなんだが、めちゃくちゃ暑いな。
「ほらぁ、こっち見てください」
頬を膨らませる早矢。これは敵わないな。
「あっ! なんかいい雰囲気になってる」
「本当ね。でも場所を考えるべきね」
ユイと星羅に見つかったようだ。
「あ、そうですね。もう少し人のいないところの方が良かったですね」
「そうだな」
納豆売り場の前で、ロマンチックなこと言っても締まらないもんな。
そして、そんな場所の奥から、寧々と静が、早速大量のお土産を買って出てきた。
「ラブコメの波動を感じまして」
「光司さんが、またやらかしたんじゃないかと思いまして」
どうしてそんなピンポイントで当てるかな?
「とりあえず、ご飯にしましょうか」
「そうだな」
朝ごはん食べてなかったもんな。
しかし、食べた後に、ハムカツやらたい焼きやらよく食うな。
焼きたてのパンまで買ってさ。
静が納豆ドッグを勧めてきたが、流石に遠慮した。
そんなに入らないし、何より好奇心より怖さの方が勝ってしまった。
それに、言い出しっぺの静も買わなかったしな。
そして、北関東道に入り、大洗ICで降り、下道を走る。
水族館に着く頃には、買ったもの全部食べてしまったようだ。
寧々がパンを差し出してくれるが、もう少し汚れないものが良かったな。いや、おいしいけどさ。
そして、この区間、めちゃくちゃ雨に降られた。
もしかして、雨女じゃなくて雨男なんじゃないかな。
それだと俺が当てはまる。
だって、今駐車場から降りられないくらい雨に降られている。
他の車も、出るに出られないようだ。
「じゃあ、今日はここでイチャイチャするん?」
ユイがそんなことを言うが、わざわざここまできて車から降りないなんて選択肢はない。
というか、イチャイチャってなんだ?
そんなことを言っていたら、少し雨が弱くなってきたので、この瞬間に、駆け足で入り口へ向かった。
「くっそー」
ユイが走りながらそんなことを言うが、雨に対してだと思いたい。




