番外編60 もふもふさんに会いに行こう18
「……ふぅ。朝から露天風呂。沁みるなぁ……」
早起きしてしまったので、露天風呂にいる。
なぜか、ベッドとベッドの間に挟まっていて、変な態勢で寝ていたからから、身体中が筋肉痛のような痛みがある。
なんとか這い出したら、昨日見たウッドチャックみたいな感じになっていた。
起こすのも悪いと思ったので、そのまま温泉へ直行したのだ。
言い訳するつもりはないが、浴衣がはだけて、とんでもないことになっていたから逃げた訳じゃないと自分に言い聞かせた。
「はぁ〜〜」
ため息を吐くと、どこからか「「「「「はぁあああああっ〜〜〜〜〜……」」」」」と、長いため息が聞こえた。
温泉もそこそこに、朝食を食堂で食べる。
ビュッフェスタイルだから、食べる量が調整できるのはいいよな。
普段そこまで食べないのに、ついつい取っちゃうんだよな。
家であまり作れない野菜の煮物なんかが取り皿の上に増えていく。
自分達のテーブルへ戻ると、俺のが試食程度に見える不思議。
寧々と早矢は俺と似たようなおかずを取っていたが、分析しながら食べていた。
どうやら再現するつもりのようだ。
ユイはとりあえず食べたいものを取るというスタンダードなタイプらしい。
かなり色とりどりだ。
星羅は遊んでるのか真面目なのか分からないが、よくそんなに、綺麗に盛り付けられたな。
もはやアートだよ。
最後に静。綺麗に積んできたな。
よく倒れなかったと感心する。
そうして、朝食を取り、部屋で少し寛ぐ。
「今日はどうするんだ? また王国に行くのか? それとも別のサファリやモンキーのとこ?」
俺が尋ねると、ユイ、寧々、星羅、早矢が静を見た。
「流石にお疲れでしょう。今日は光司がよく行くお店とか案内してくれるとありがたいですね」
「そうか」
よく行くって言ったって、殆ど買い物だぞ?
その後、お米を買ったり、味噌を買ったり、パンチェッタベーコンを買ったり、お酒を買ったり、コーヒー豆を買ったり、パン買ったり、ラスク買ったり、チーズ買ったりといろいろ回っていった。
ステンドグラスやドレスなんか見たり、チーズ屋さんの一つに行く途中にある山の上の方の式場も見た。
石造りだけど小さめで可愛いんだ。
みんなそれを見て、ここで挙げたいとかいいだしたり、ウェディングドレスを着てくるべきだったとか言い出した。
もちろん、カフェにも寄った。
どこのカフェにするか迷ったが、行き慣れたところの一つにした。
みんなどのスイーツにするか迷っていた。
俺は硬めのこのプリンと平日限定のマロンムースが好きなんだが、生憎と休日だから無い。
その後、お昼ご飯として、お餅を食べて、再度カフェへ。今度は紅茶だ。
「なるほど。光司の焼き菓子はここがベースなのね」
「まぁ、そうだな。価値観変わるだろ?」
「ええ。塗り替えられました」
「コージ、ホールで買えないの?」
「予約しないとダメだなぁ」
「なんで予約してないんですか?」
まさか、寧々からそんなこと言われるとは思わなかった。
「では、帰ったらうちが焼きましょう」
「あっ、ずるい」
「寧々はたまにポカするのよね」
「はうぅ……」
そんな感じで回っていたら、気がつけば夕方だ。
まだ見て回りたいところは沢山あるんだが、行くとこ行くとこでかなりお菓子を買うからな。
もう、トランクがパンパンだ。
後ろの窓が半分以上埋もれている。
その上に昨日買ったぬいぐるみ達が鎮座していた。
「じゃあ帰るか」
「帰りはわたしに任せてよね」
行きは早矢。道中はユイ。そして帰りは星羅が真ん中に座った。
この車を選んだのは三人だからな。
ちなみに助手席には早矢が。
後ろは、運転席側から寧々、静、ユイとなっていて、静の上には大きなペンギンが乗っていた。
那須ICに着く頃には、疲れていたのか、星羅以外が口を開けて眠っていた。
「ここからはわたしのターンね」
嬉しそうに言う星羅。
「いいのか、疲れてないか? 眠いから寝てても」
「そんな勿体ないことできないわよ」
「??? まぁ、星羅が大丈夫ならそれでいいけど」
「ふふん。ちゃんとナビしてあげるからね」
「お、おう」
「(ふふ。唯の言う通りね。おでかけの帰りが一番独占できるのね)」
両方の拳を口元にあてて、クスクス笑っていた。
「何か言ったか?」
「いいえー。あ、そうそう、わたしね、学園のお昼にラジオやってるのよ」
「へー、それは凄いな」
「でしょう? 折角だからわたしとラジオっぽくお話ししない?」
面白そうな提案をしてきた星羅。これはのらないワケにはいかない。
「いいぞ」
「やたっ! じゃーあー、わたしが『星羅に』って言うから、光司は、『光司が』って言ってね」
「接続詞おかしくないか?」
「合ってるわよ。ほらほらいくわよ。……星羅にー」
「光司がー」
「跪きなさいラジオー!」
「待て」
「何よ?」
「そのラジオ名合ってるんか?」
「学園では、『星羅とティノのおねだりラジオ』でやってるわ」
なんだ。部長の娘さんとやってるのか。
というより……。
「それでいいじゃないか」
「ダメよ。これはティノとの番組だもん。光司とは一から始めるんだから、これでいいでしょ?」
「せめて、もう少しマトモなタイトルにしてくれ」
「えー」
非難の声を上げる星羅。
そして、そんなやりとりがおかしかったのか、クスクスと聞こえてきた。
「起こしちゃったな」
「ええ!? 独占終了?」
「星羅が悪いんだよー。譲ってあげたのに、変なこと始めるから」
「そうですよ。それに星羅の話は面白いですからね」
「そうですね。うちも初めて聞いた時は驚きましたけど、今では学園で一、二位を争う人気番組ですね」
「学園で何やってんの」
「や、そこまで人気でるなんて思ってなくてー」
「嘘です。毎回サイゼでティノと打ち合わせしてますから」
「毎回じゃないわよ。ココスの時もあったし」
「星羅そこじゃない」
「ふぇ?」
そんな感じで、星羅とラジオごっこをしながら走っていった。
お陰で眠くなることも疲れることもなく利根川を超えた。
「じゃあ、夕飯羽生で食ってくか」
「さんせー」「賛成です」「賛成よ」「賛成ですよ」「異論はありません」
静だけ毎回少し変えてくるな。
と、いうことで、休憩も兼ねて食事をとることにした。
俺は親子丼を。みんなは体力あるのか、全員肉を頼んでいた。
そうして食べて、いつも通り大量のお土産を買った。
流石にもう入らないのか、後部座席の足元に置いていた。
そして、家に着いたのは二十時になろうかという頃だった。
随分と長旅だったなと思いを巡らせた。
まさか荷物を下ろすだけで十分もかかるとは思わなかった。
だって、みんな疲れて寝落ちしていたからな。
「ほら、着いたぞ」
「んー」「んんー」「んー」「ふぅー」「ふぅ」
伸びをして起き始める。
「また行きたいわね」
そう星羅が呟くと静が満面の笑みで言った。
「来月はアメリカビーバーの誕生日です。月曜日ですから、お休みして行きましょう」
「じゃあ、光司さん有給取るんですねー」
「平日のおでかけいいねー」
「えっ? えっ?」
やはり早矢だけがまだ着いていけてないようだ。
だが、一つ思い違いをしている。
「お前ら学生だろ?」
「それが?」
キリッとした表情で言うもんだから、言葉が出なかった。
そして、本当に有給取って行くことになるとは思わなかった。
そして翌月の六日月曜日。今日も生憎の雨だった。
雨の中、一心不乱に、葉っぱとアルファベットにカットしたにんじんと星形のさつまいもとりんごを食べる二匹のビーバーを、みんなで一時間近く見ていた。
一匹はずっとハモハモしていたが、もう一匹は食べながら泳ぐを繰り返していた。
しかし、飼育員さんにヨチヨチとついていく姿は愛らしかった。
ふと、静と顔を見合わせた時、年パス買って良かったと思ったのだった。




