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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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番外編58 もふもふさんに会いに行こう16


 「んーおいしいー!」

 「このジュンサイって美味しいですね」

 「光司これ作れる?」

 「いやぁ、これは無理かなぁ」

 流石に俺でも難しい。

 この繊細な味というか、そもそも食材があっちでは手に入らない。


 「では、うちが作りましょう」

 「早矢さん、ここはあたしが」

 「いえいえ、たまにはうちが……」

 そんなことを和気藹々と言いながら食べていたが、一人食が進まないのが静だ。


 「どうした静」

 「いえ、動物さんを見てきた後にお肉は……」

 まぁ、そうだな。確かに一理ある。


 「んー! これがA5ランクのお肉!」

 「口の中でとろけて……」

 「甘いですー」

 「あら、静食べないの? こんなに美味しいのに、仕方ないわねぇ」

 星羅がお箸を近づけると、静が手で覆った。


 「いえ、食べますよ…………ん! おいひぃ……」

 「そ、そうか。よかったな」

 その涙はどっちなんだろうな。流石に聞けなかった。


 夕食は、ビュッフェやしゃぶしゃぶの食べ放題ではなく、懐石料理だった。

 うちでは作れないものもあり、新鮮な感覚だ。

 というか、この料理を見て思ったのは、絶対に高いであろうことが分かる。

 だが、うちでも出来そうだと思える料理がいくつかあり、後で家でも出してみようと思っていた。

 まずは、味を覚える…………。うん、出来そうだ。

 星羅と寧々が目を輝かせて俺を見ている。

 

 「これ、朴葉あったら出来るわよね光司」

 「まぁ、そうだな」

 「あと、この容器が必要ですね」

 もう俺と寧々で作ることが確定になっている。これは期待に応えないといけないな。

 そう思って、寧々を見ると、なぜか顔を朱らめた。

 お酒は頼んでいないはずだが……。

 それにこんなことで惚気るとも思えない。謎だ……。


 しかし、旅館なんて久しぶりだな。

 こんな機会でもなければこなかっただろうな。みんなには感謝しかないな。


 「光司、お酒飲んでもいいのよ?」

 「いや、気持ちだけ受け取っておくよ」

 「そう?」

 「ああ」

 俺が遠慮しないと、星羅が何をしでかすか分からないからな。

 寧々を見ると、目と目で通じ合ったらしい。同時に頷いてしまった。

 寧々は先ほどより顔を真っ赤にしていた。


 「なーに〜今のはー!」

 「なんでもないですよー」

 「そうだぞ。はい醤油」

 「ふふっ!」

 誤魔化しも完璧だ。

 だが、なぜだろうな。ユイと早矢が真顔で見てくるんだよ。

 静さんや、ご飯を無心で食べるのをやめて助けてくれませんかねぇ。

 「(自業自得ですよ)」

 静が小声で何かを言っていた。


 その後、温泉に入り、部屋に戻る。

 ここで俺は重大なことに気がついた。

 俺が部屋に戻ってから、一時間後くらいだろうか。

 そのタイミングで尋ねた。

 「なぁ、もしかして寝る部屋って一緒か?」

 「何を今更」

 「当たり前でしょ! なんで分ける必要があるし!」

 「全く。どうしてそういうところで引くんですかねぇ。理解に苦しみます」

 ユイと静からキツメのお言葉をいただいた。


 「ほら、バカ言ってないで」

 星羅が俺を引っ張る。

 星羅の横に座ると、寧々がお茶を淹れてくれた。

 「もう、あの時の言葉忘れたんですか?」

 「あ、すまん」

 「あの時の言葉?」

 早矢が首を傾げながら聞いた。


 「そ、池袋の水族館で約束したことがあるんだ」

 ユイが早矢の隣に座って言った。

 「ああ、前に言ってたやつですね」

 まさか早矢にまで共有されていたとは。

 「では、うちも求めてもらわないといけませんね」

 「善処します」

 「もう、そこはちゃんと積極的になってください」

 拗ねたように頬を膨らませる早矢。

 「分かった」

 「まぁ、今日は疲れてるでしょうし、それ以上の言葉は期待できませんね」

 評価が厳しい。


 寧々に淹れてもらったお茶を飲みながら、部屋を眺める。 

 それにしてもいい部屋だな。

 なんというか、広い。

 いい木材を使っているし、室内の見た目がいい。

 部屋も多いし、絶対に高いであろうことは分かる。

 もう何度目か分からないが同じ感想ばっかり言っている気がする。

 だって、テレビが三台もあるし、ベッドも四つあるんだもん。

 ソファも大きいし、眺めもいい。


 だが、そんな高級な部屋だが、どうやらそこまで堪能できそうにない。

 なぜなら、長距離運転して、いっぱい歩いて、温泉入ったらそりゃあ疲れるってもんで、眠くなってきた。

 ここ最近の仕事の疲れもあったろうしな。


 「すまんな。先に寝るわ」

 「まぁ、仕方ないかー」

 「光司さんお疲れ様です」

 ユイと寧々が微笑んで返してくれた。


 「今日は、なんかありがとな」

 「こちらこそ」

 「まぁ、たまにはいいでしょ」

 「ゆっくり休んでください」

 静、星羅、早矢が労ってくれた。

 そして寝ようと、布団を離れた部屋まで引っ張っていき、そこで眠った。

 疲れていたからだろうか、すぐに意識が遠のいた。


 だが、なぜだろうな。

 朝目覚めたら、ベッドとベッドの隙間で目覚めたんだよ。

 サンドイッチの中のハムの気持ちってこうなんだろうな。

 しかし、なぜベッドの隙間で眠っているのだろうか。

 そして、隙間から這い出ると、ベッドで五人が川の字になって眠っている。


 俺の記憶が全くないんだが、一体何があったのか分からない。

 分からないのなら仕方ない。

 朝風呂に入ってこよう。


 朝の半分寝ぼけた状態で入る温泉のなんて気持ちのいいことか。

 肌に染み渡るというか、いろんなものが溶け出すというか、心が洗われる気がするよ。

 それも、露天風呂を貸し切り気分で楽しめるからかな。

 景色がいい。

 「…………夢遊病じゃないよな?」


 一方その頃──

 「光司くんがいません」

 「逃げられましたねー」

 「ちゃんとみんなで運んだよね?」

 「光司さん早起きですから」

 「というか、なんでここ、こんな隙間空いてんの?」

 「もしかして、ここに挟まってたのでしょうか」

 「まさかー…………え?」

 「はは……え?」

 「そんなはずは……」

 「でも、ここ暖かいね」

 「知らなかったことにしましょうか」

 「そうね」

 「そうした方がいいかもね」

 「こんなはずじゃなかったんですけどね」

 五人がベッドとベッドの隙間を見ながら苦笑していた。


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