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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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番外編56 もふもふさんに会いに行こう15


 「「「「「ああああああああ〜〜〜〜〜」」」」」

 浴室に響き渡る五人の声。


 「ああ〜。うち、今日温泉来て良かったです」

 「そうよね。急遽予定したけど、やっぱり泊まりにして正解だったわね」

 「コージへのサプライズにもなったしねー」

 「あの、戸惑った顔が可愛かったですね」

 「ただ、一緒に入らなかったのが難点ですねー」


 寧々が混浴の話題を切り出すと、それぞれの顔が朱くなった。きっと長いこと湯船に浸かっていたからだろう。

 それもそのはず。既に二時間近く入っているのだ。


 最初は、他の宿泊客の奥様やおばあちゃん。後は海外から来た人などと話していたが、みんなそこそこに出ていった。

 流暢な言葉遣いで話すものだから、相手の方がびっくりしていたくらいだ。


 「お嬢ちゃん達すごいねぇ」

 「オー! パーフェクト!」

 などと絶賛され、「いやぁ、それほどでも〜」と、照れていた。


 尤も、彼女達にしてみれば、世界中の言語で話すことなど造作もない。

 静に言わせれば、動物さんの声が聞こえなければ意味がないと考えている。

 しかし、今だけはそんな煩悩も全てお湯に溶けていくというもの。


 「ああ〜。これずっと入っていられるっしょ」

 「ホントですねぇ。温度も泉質も完璧です」

 「これはますます美人になっちゃうわね」

 「ええ。光司くんもイチコロです」

 「貸し切り露天風呂借りられれば良かったんですけどねぇ」


 寧々だけが、まだ諦めきれないようだ。

 ロビーで、奥様扱いされると思ったら娘さん扱いされたからだ。

 当たり前の話ではあるのだが、衝撃か疲れからか、その場で固まってしまったくらいだ。


 「寧々は、光司の前じゃないと大胆になるわよね」

 「はうぅ」

 顔をさらに朱くさせた寧々。


 そこで、ふと気になったことを聞いた早矢。

 「そういえば、気になったのですが、どうして静さんは、光司さんがいないところでは『光司くん』って言うんですか?」

 「あ、いいところ気づいたねー」

 ユイが早矢に寄りかかりながらニマニマしながら言った。


 「みなさん知ってるんですか?」

 その答えは静本人が言ってくれるようだ。

 「コホン」と咳払いしてから、うっすらと目を開けた。


 「最初は『光司君』呼びしてたのですが、ご本人が恥ずかしいからと言うので、こっそりいない時につけてます。『君』ではなく『くん』なのは、より対等な感じがしますので」

 なるほどと早矢は思ったが、『くん』付けした時の方が、表情が柔らかいことに気づいた。


 「ちなみにわたしも最初は『様』付けしてたけどやめたわ。やっぱり、自分で言うより言われる方がいいわよね」

 「星羅さんは変わらないでいいですね」

 「そう思うでしょー?」

 ユイが早矢に聞き返した。


 「え、違うんですか?」

 「照れ隠しです」

 寧々が答えを言った。


 星羅は恥ずかしさのあまり、ブクブク言いながら湯船に沈んでいった。


 「ちなみに静さんのも照れ隠しです」

 静が目を閉じて、同様に沈んでいった。


 「それにしても、皆さん旅慣れしすぎてませんか?」

 「まぁ、前も出かけたからねー」

 「はい。いちご狩りが最初ですね」

 「へぇ。それはいいですね」

 「次回は早矢も一緒だからね」

 「はい。楽しみにしてます」

 ユイと寧々と早矢がニコニコしながら語っていた。


 「あ、でも折角ですし、何かそういったフルーツ狩りに、うちも行きたいですね」

 「お、早矢っちいいねー!」

 「もう少ししたら、さくらんぼ狩りができますね」

 「今年は早いから、もう行けるんじゃない?」

 早々に復活した星羅が混ざった。


 「あら、そうなんですか?」

 「今年はどのフルーツも早いですよねー」

 「たけのこも早かったねー」

 「メロンもですね」

 復活した静がしれっと混ざった。


 「今年のメロンは美味しかったねー」

 「では、また機会があったらいただいてきますね」

 「あ、その時はわたくしもご一緒します」

 「あ、わたしも行ってみたいかも」

 「じゃあ、あーしも」

 「うちもご挨拶してみたいですね。ちなみにどんな方なんですか?」

 いつの間にか全員で挨拶に行くことになった。


 「はい。升農さんっていう女性の方で、すごい美人さんですね」

 「わたしより?」

 「うーん…………はい」

 寧々は少し考えたが、途中でめんどくさくなってやめた。


 「なんか農業強そうな人ね」

 「そもそも寧々はそこで何をしているの?」

 星羅が目を輝かせ、唯がどうしても気になったので聞いた。


 「まぁ、いろいろと……」

 視線を横にずらして、言い淀んでしまった。


 「じゃあ、あとで答え合わせしましょうか」

 「そうですね」

 「あーしはねー、お片づけしてると思う」

 「わたしはそうね…………同じだわ」

 「意外とスマホの使い方教えてたり」

 「縁側でお茶を飲んでる可能性も否定できません」

 みな好き勝手言い合っていた。


 「ちなみにその人、いくつなの?」

 唯がヒントを貰おうと寧々に尋ねた。


 「えーっと、人間の年齢だと十九か二十くらいらしいです」

 「どゆこと?」

 唯の怪訝なツッコミに、他の三人もじーっと寧々を見てしまった。


 「わ、分からないですよーもうー。あ、そういえば夕食って何時からでしたっけ」

 それ以上突っ込まれても困ると思った寧々は、無理矢理に話題を変えた。


 「確か十八時にしたんでしたっけ」

 「十九時じゃなかった?」

 「十八時半じゃない?」

 「今何時よ」

 「ここに来たのが、十七時前ごろ……。で、もう二時間近く入って……」

 五人は慌てて立ち上がった。


 「早くするっしょ」

 「そうよ。つい。話に花を咲かせちゃったわ」

 「もう、もっと早くに気づくべきですよ」

 「気持ちよすぎたのがいけないんです」

 「とりあえず、早くいきましょう」

 そうして、五人は急いで脱衣所へ向かったが、髪の毛を乾かしたり、化粧水を塗ったりで随分と時間が掛かってしまった。


 「随分とゆっくりしてたんだな」

 光司がマッサージチェアで気持ち良さそうにしながら出てきた五人に声をかけた。


 「光司、夕飯って何時だっけ?」

 「もう過ぎてる」

 「「「「「え?」」」」」

 「大丈夫だ。十八時から十九時半の間にいけばいいから」

 みな、ほっと胸を撫で下ろした。

 「じゃ行こっか」

 そう言って立ち上がった光司。


 星羅がニマニマした顔で言った。

 「ねぇ、光司ー。そんな疲れてるなら、食べ終わったあとに踏み踏みしてあげよっか?」

 「え?」

 早矢が、そんな羨ましいことを? みたいな感じで反応した。


 「いや、食べた後に踏まれたら苦しいからいいよ」

 「えー」

 「ほら、お腹空いてるんだから行こうよー」

 「待ってください」

 「何?」「どしたん?」

 星羅と唯が振り返って聞き返した。

 寧々と早矢もどうしたのかと首を傾げた。


 「まず、化粧品とタオルを部屋に置いてからにしましょう」

 それぞれが自分の持っているものを見て、そして光司を見た。

 「なんで俺を見た?」

 そして、さっと顔を背けたのだった。

 

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