番外編56 もふもふさんに会いに行こう14
さて、お土産屋さんに来たのだが、案の定って感じだな。
静は速攻でハシビロコウのぬいぐるみを手に取っていた。それも二種類。
立つやつと、座ってるタイプのもの。合計一万円弱。
外のUFOキャッチャーでも違うの取っていたよな。星羅が。
そして───
「静、それは?」
「これですか? これはペンギンですよ? 見たら分かるじゃないですか」
あ、うん。そうだな。
「それは分かるんだが、それ、でかくないか?」
「はい。副隊長のお嫁さんにどうかな、と」
「副隊長…………?」
「はい。わたくしの──」
「あ、長くなりそうだからいいや」
「え?」
その場で見つめ合ってしまった。なんだこれ?
「まぁ、自分で出すならいいけど」
「もちろんです」
まぁ、全種類買わずに取捨選択出来るだけ、成長したと思うよ、ホント。
でも、その副隊長だけで一万五千円弱するんだよ。かなりずっしりしてるし。
お土産コーナーを俺も見て回る。
寧々はクリアファイルを買っていた。
星羅と、早矢はお菓子を買うようだ。
「ユイは何も買わないのか?」
「や、迷っちゃって」
結局ユイもお菓子を買っていた。
だが、カゴがいっぱいになるくらい買わなくてもいいと思うんだ。
というか、早矢まで、そんなに買って……。
「あ、違うんです。ただ、箱に描かれた動物さんが可愛くて」
「分かる」「分かるわぁ」「分かります」「当然ですね」
ここぞとばかりに賛同するなぁ。
「早矢も段々とうちに染まってきたわね」
「はい!」
そういうところは真似しなくてもいいと思うんだが、まぁいいか。
静一人だけすごい量を抱えていた。
「む!」
「どうかしたか?」
「ハシビロコウの和パフェ……」
「寄ってくか?」
「是非」
ということで、みんなでハシビロコウ和パフェを頼んだ。
ゴマのアイスクリームで作ってあるんだな。間にわらび餅。下にゴマのプリンかな。アクセントで抹茶クリーム。
目、くちばし、頭の毛はチョコレートだ。
「これは困ったわ」
「はい。困りました」
「困ったねー」
星羅、静、ユイがにらめっこしていた。
どうやら可愛くて食べられないらしい。
じゃあ、どうして買ったんだって話になるんだけどな。
しかし、寧々と早矢は「おいしー」「これ好きですねー」と言いながら食べている。
そんな中真っ先に食べたのはユイだ。
「和スイーツと言ったらあーしだよね」
かわいいから評価にシフトしたらしい。
スプーンを刺すと、「「あっ!」」と声が上がる。
ハシビロコウカレーも食べたんだからいけるだろうに。
「んー!! おいしい! あーしこれ好きかも」
「ですよね。美味しいですよね」
「星羅も静さんも食べないと溶けちゃいますよ」
「そ、そうね」
「そうですね」
結局一口食べたら、「おいしい、おいしい」言いながら、綺麗に食べ終わっていた。
「見た目だけでなく、味も完璧でした」
どんだけ好きなんだよ……。
そして、そのままゲートを潜る訳ないのは分かっていた。
もう一つのお土産屋さんに吸い込まれるように、そのまま入っていった。
「あ、あーしこれがいい」
それはホッキョクオオカミのぬいぐるみだった。
「ふわふわー」
「唯さん、わたくしの分も代わりにお願いします。手がふさがってまして」
「オッケー」
「ありがとうございます。お代はあとで」
「いいっていいって、あーしが出したげるよ」
「唯さん、ありがとうございます」
ホントに可愛いもの好きだなぁ。
早矢はトートバッグを。
寧々と星羅はTシャツを買っていた。
そして、お土産屋さんを出て、すんなりゲートをくぐらないんだなこれが。
「星羅さんすいません。御獣印を全種類お願いします」
「分かったわ」
自分の分と合わせて全種類二枚ずつ買う星羅。
なんだかんだで、協力しているのは素晴らしいことだと思う。
だがな、俺らもいく必要があるんだ。
出来るのに時間がかかるからと、帰りに年間パスポート受け取る予定だったからな。
ただ、やっぱり代表者が静なのはなんか笑えるな。
今度こそ、ゲートを出る。
時間は十六時を過ぎていた。
ユイと星羅がトランクに荷物をせっせと詰めていた。
静はというと、後部座席の真ん中に座り、大きなペンギンとハシビロコウのぬいぐるみを抱えてご満悦だ。
「じゃあ、次はあーしのナビだね」
ユイが前列の真ん中に座った。早矢は助手席側だ。
「もういい時間だな」
夕飯は何にしようかそんなことを漠然と考えながら、エンジンをかけた。
「じゃあ、あーしがナビするからねー」
「お、おう」
別に那須の道は分かるんだけどな。
とりあえず、やる気満々のユイに従う。
そして、着いた場所は──
「旅館だな」
「おつかれー」
言われるまま駐車場に車を止めると、俺と静を除いて車を降りた。
まぁ、静はぬいぐるみを抱えているからな。
静は、ぬいぐるみを横に丁寧に置いてから降りた。
一体どういうことだ? 日帰りのはずじゃなかったのか?
そう思って俺も降りると、トランクから大きなスーツケースを二つ寧々と早矢が下ろしていた。
「え、スーツケース?」
いつのまにそんなものを積んでいたんだ?
というか、俺今日トランク見てないや。率先して荷物積んでいたのは、もしかしてサプライズってことか?
「はい。ということで、今日泊まるのはこちらの旅館です」
寧々がにっこりとスーツケースの取っ手を持ち上げて言った。
「聞いてないんだが」
「敢えて黙ってたのよ」
「そうか」
温泉か。久しぶりだな。
「で、誰が予約したんだ?」
「ウチですよ」
まさかの早矢。
「みんなで調べて決めたんだー」
「そうよ。感謝なさい」
「あ、ああ」
驚きっぱなしで、さっきから生返事ばかりだな。
「なんでここにしたんだ?」
「はい。こちらの泉質はアルカリ性と──」
「あ、いや、そういうことじゃなくて」
「夕食が美味しそうだったので」
「温泉が広いの」
「あと、値段も少し安かったですね」
「まぁ、空いてるところが少なくてね。六人泊まれるのがここしかなかったの」
「ラスト一部屋でした」
「そうか」
ここ結構高い方だと思うんだが、よく取れたな。
しかし、昨日の今日でいつそんな準備をしていたのだろうか。
もしかして、結構前から計画していたのではないだろうか。
まぁ、いいか。明日も休みだしな。
そうしてフロントへ入っていく。
俺と静でスーツケースを持っていく。
先頭を寧々が歩いていく。
「あ、『須永』で予約したものですがー」
「はい。承っておりますよ」
恭しくフロントの人が会釈した。
そして、書類にサインしたのだが、今の俺は父親に見えるんだろうか。




