番外編54 もふもふさんに会いに行こう12
そうして始まったイベント。
鳥が飛ぶだけと言うが、それだけでこんなに集まるわけがない。
慣れた感じで、お姉さんが説明しながら登場した。
「実は、既にこちらに向かってまーす!」
なんと。既にどこからかここのステージ目掛けて飛んでくるらしい。
「あ、あそこですね」
真っ先に気づいたのは静だ。
数秒遅れてユイ達も気付いた。
「あ、いたねー」
「あら、あんなところから」
「よく逃げないわね」
「凄い猛スピードですねー」
そうして、三人のお姉さんの元へ飛んできた。
その後、前から後ろへ。後ろから前へ。
右から左へ。左から右と、頭スレスレの位置を大きく羽を広げて飛んでいた。
迫力が凄い。目の前や頭の上をスレスレで飛んでいくその姿はやっぱりかっこいい
それに、それはもう飛べることが楽しい! 気持ちいい! といった感覚が伝わってくるくらいだ。
途中で、ヨウムと会話できるイベントや、自分の腕に乗せてもらえる体験もあった。
お姉さんの小粋なギャグも素晴らしい。
参加希望者を募っていて、各所で手が上がる。
ユイが腕を垂直に勢いよく上げたが、残念ながら当たらなかった。
「ざんねーん」
「まぁ、こういうのは子供優先だからな」
「そうだねー」
「そういえば、こういうのって星羅とか静が真っ先に手を上げそうだと思ったんだが」
「いやぁ、子供に譲った方がいいかなって」
「(見るのに夢中で上げ忘れたなんて言えませんね)」
「そうか」
そうしてユイを見る。
「や、ほら、あーしまだ子供だし?」
「ふふ。そうだな」
ユイと目が合う。
間に挟まる星羅が俺とユイを交互に見る。
「こ、子供は子供でも、わたしお姉さんだもの」
「分かってるよ」
「ん」
満足したのか、短く反応する星羅を、俺とユイは微笑んで見守るに留めた。
そして、そのままイベントは続いていった。
途中、『エレナ』という名前のミミズクがいたが、途中で降りてしまった。
「あらあら」
「ちょこんと立っててかわいい!」
「うちの『エレナ』と似てるわね」
「確かに」
「それって、あのめっちゃ食う子?」
「そう」「そうよ」「そうですね」
あのエレナって子はそういう認識の仕方されてるのか。でも、似てるか?
その後、お姉さんの腕に『回収』されたエレナは、上の方へと戻っていった。
最後はハクトウワシがこれでもかと飛んで終わりとなった。
正直見て良かったし、凄く楽しかった。
みんなも満足したのか、拍手をしていた。
「これは、迫力があっていいですね」
「ホント。オウムもキレイだけど、あんなに羽広げて飛ぶのね」
「やっぱ、生で見ないとね」
「満足度がやばいです!」
「また見たいですね」
「そうだな」
最後にハクトウワシを撮影出来るようだ。
イベントに夢中でスマホで撮るなんて発想なかったからな。
というか、そんな余裕も無かったし。
それに、こういうのは動画で見るより、直接見たほうが楽しいし面白い。
俺だけじゃなくて、ユイ達もそうだったようだ。
真っ先にスマホを掲げそうな静と星羅も、レンズ越しじゃなくてそのまま見て楽しんでいた。
だが、最後にハクトウワシと青いオウムをこれでもかと撮るのはどうかと思う。
撮られる側が、気まずそうに顔をぷいっと逸らしてしまったくらいだ。
「で、この後はどうするんだ?」
「そうですね。食べたいのはやまやまなんですが、まだ見たい方が優ってますね」
「私も、もう一回寧々が見たい」
「レッサーパンダですよね?」
「あ、そうだったわ」
星羅、それわざとだろ。
「じゃあー、戻ろっか」
「そうですね」
行きに乗った園内バスと同じだった。
「閉園まで今暫くお楽しみください」というような声掛けがあった。
確かに、閉園まではまだ時間があるが、いい時間でもある。
時刻は十五時を回ったところだ。
「では、もう一度回りましょう」
そう静が言うもんだから、着いていく。
午前中ずっと寝ていたユーラシアカワウソはまだ寝ていた。
「むぅ、あのご尊顔を少しでも拝見したいのですが」
「まぁ、そんな時もあるさ」
「はぁ〜」
その後、いくつか回っていった。
ビーバーも今は暗い巣の中で動いていた。
暫くはこのままな気がした。
中央の方へ行くと、犬のレッスンをやっていた。
「エレナそっくりのワンちゃんがいるー」
「あらホントね」
「それって、あそこで寝そべってるやつか?」
「「「そう」」」
「ひどい」
ユイ、寧々、星羅と口を揃えて言うと、早矢が苦笑しながら返した。
そんな中で静がじーっと見ていた。
「どうした静」
「うちもワンちゃんが欲しいです」
「……」
簡単に頷けないんだよな。
うち、出かける時はみんなで行くから、お世話とか出来ないんだよ。
カメラ設置しても不安なところはあるし、何よりイタズラでもされたら堪らんからな。
まぁ、ちゃんと躾けて世話出来れば、考えなくもないが、どうせ俺任せにするんだろう?
そんなことを考えながら静を見ていたら、何かを思い出したかのように、ハッとした顔になった。
「どうした?」
「帰る前に挨拶を忘れてました」
「「「「「???」」」」」
挨拶とは……?
一斉に首を傾げた。
ワンちゃんも何故か傾げていた。
その後、同じルートを回っていく。
ヨタカは夫婦なんだろうか。隣り合って並んでいた。
それをユイ、寧々、星羅、早矢が目をキラキラさせながら見ていた。
静は係員さんと一緒にいたオウムとお話ししていた。
変な言葉教えるんじゃないぞ?
そして、その途中にあるアメリカビーバーのところで足止めになった。
なぜかって? そんなの決まってる。もぐもぐタイムだからだ。
りんご、にんじん、さつまいもが好きなのか、率先して手に取りもぐもぐしていた。
「器用に持って食べますね」
早矢が感心したように言う。
「カジカジしてるけど、中々減らないわね」
星羅がまじまじと眺めている。
「葉っぱも好きなんですねぇ」
寧々が意外といった感じで言った。
「あの木は食うのかな?」
つい、気になって言ってしまった。
「食べながら泳いでるー」
ユイが指し示す方では、食べるのに飽きたビーバーが泳いでいた。
「キャベツはお魚さんの餌になっちゃってますね」
静がキャベツを啄む魚を見て言った。細かいところまでよく見ているよ。
そして、餌がほとんどなくなるまでそのまま見入ってしまった。
そして、再度チャンスがあるかと思ったが、ユーラシアカワウソは木の中に入って眠っていた。
顔を見るチャンスはついぞ訪れなかった。




