番外編52 もふもふさんに会いに行こう10
園内バスに乗って奥へと向かう。
アップダウンのある細い道をマイクロバスで行くのだが、すごい運転技術だ。
あそこのカーブなんて、俺曲がるの無理かもって思ったし。
「エンブレが効いてますね」
静の感想は正しいのだが、なぜそこを気になったのかを考えていたらおかしくなって笑ってしまった。
「どうかしましたか?」
「いいや、なんでも」
到着して降りると、山の稜線が見えた。
そんな中、星羅と静がある方向を見ていた。
カレー屋さんだ。確かにとうがらしカレーは気になる。
気にはなるが、お昼はカレーだっただろう……。
「さっき食べたばかりだろう?」
「そうなんですが……」
「いつもこうなんですか?」
早矢がフラットな表情で聞いた。
「そうだぞ」
「ちょ、光司!」
「だから、早矢も気にせずガンガン行っていいんだからな」
「あはは……はい……。そうしますよ」
変なツボに入ってしまったらしい。まぁわかる。
「もうー。行くよー」
「そうですよ。張り切ってた二人がここで引っかかってどうするんですかー」
気まずそうな顔をして、がっくしと肩を落として星羅と静が歩き出した。
せめて、もう少し経ってからにして欲しいな。俺もお腹空いてないし。
と、早速羊の群れがお出迎えだ。
「この前、羊さんたちが探偵の映画見たわ」
「ここの子達も、推理するんでしょうか」
「どうかなー」
そんな羊達は見上げて近づいてくる。
そして、餌のある方に首を振った。
「餌欲しいみたいだね」
随分とお利口なことで。本当に推理するかもしれないな。
「じゃああげるよー。ほら」
ユイが手ずからあげている。
そしたら、どんどんと他の羊が集まってきた。
「も、もうないよー」
「こっちにも……わひゃっ!」
「んふふー。そんなにわたしから欲しいのー? あっ! ああっ……」
ユイに続いて寧々と星羅も餌をあげていた。
ものすごい勢いで食べるものだから驚いている。
「静と早矢はいいのか?」
「わたくしがやると餌を買い占めてしまいそうなので、見てるだけにします」
「うちも眺めてるだけにしておきます」
珍しく遠慮してる二人。
なんか、心なしか少し引いてる気がする。
餌をあげ終わり、そのまま横へ行く。
「ポニーだー」
「髪型おしゃれですね」
「なかなかいいセンスしてるじゃない」
先程同様にユイ、寧々、星羅はニコニコだ。
「ふわぁ。かわいいですねぇ」
早矢も近づいて見ている。
そんな中静の様子がおかしい。
「あ……ああっ!」
破顔させて、ポニーを愛でまくる静。
どうやら静的には、琴線に触れまくったらしい。
だが、その後、お馬さんの方に行くと、眦を細めて微笑むに留めた。
もしかして、小さくてかわいいほうがいいのか?
そう思ったら、優しく撫でる撫でる。手慣れたもんだ。経験ある撫で方だった。
しかし、馬のオブジェに最初お辞儀した時はどうしたもんかと思ったよ。
その後、猛禽類の方へ向かった。
「イベント準備中?」
「多分何かのイベントに出るからお留守なんだろうな」
「そうなんだ」
「しかし、ちゃんとおとなしくとまってるわね」
「そうだな。まぁ、天気悪いからかもな」
そうして一羽ずつ見て回る。
一羽目は凛々しく、二羽目はアニメに出てきそうな目つきをしている。
そして三羽目の鳥、ハクトウワシだ。
「なんか○田裕也みたいな見た目してるな」
そんなことを迂闊に言ってしまったもんだから、激しく羽ばたき始める。
「怒ってるー」
「光司が変なこと言うから」
「悪かったって、ごめんて」
だが、全然収まる気配がない。
嘴を突き出し、俺に向かってずっとバッサバッサしている。
「今のはコージが悪いよー」
「すまんて……」
そうして、鳥を見ていくが、あそこまで怒ったのはアイツだけだったな。
ワシやフクロウといろんな種類がいるが、静が全然動かない場所があった。
「アメリカミミズクか……」
「おっきいねぇ」
「ホント大きくてかわいい」
「餌代が凄そうです」
寧々だけ現実的な感想を言うな。
「うちの実家に飛んでくるやつより大きいな」
「えっ! 光司さんの家にもフクロウさん飛んでくるんですか?」
「稀にな。すごい田舎だから」
早矢が目を輝かせて聞き返してきた。
懐かしいな。そう思っていたら、ずっとミミズクを凝視していた静が俺を見ていた。
「今度、お邪魔させていただきますね」
「いや、そんな都合よく飛んでこないって」
「でしたら暫く滞在しましょう」
早矢までそんなこと言う。
「ご両親にご挨拶が必要ですね」
寧々まで何を言って……。
「まぁ、挨拶は必要よね。何を買っていけばいいのかしら」
星羅が珍しくお土産を思案していた。いやいや、行かないから。
「今度お伺いしますってLINEしといたよ」
「待て! なんで連絡先知ってるんだよ」
「おしえなーい!」
ユイを筆頭に小走りで去っていく。
俺の知らないことが増えていくな。
そんな中で、俺の話なんて聞こえていないように、静はずっとミミズクを見つめていた。




