番外編51もふもふさんに会いに行こう9
「そういえばお腹空いたねー」
「丁度いい時間だな」
「だねー」
雨も降っているし、食べている間に止むかもしれない。
「もうペコペコよー」
「流石のわたくしも動けそうにありません」
「じゃあ、ご飯にしよう」
ということで、お昼ご飯にすることにした。
「で、何にするんだ?」
俺は今しか食べられないというハシビロコウカレーだ。
「そんなの決まってるっしょ。ハシビロコウカレーだよ」
「ええ、目を引くハシビロコウカレーに決まってます!」
「そうね。ネコのは売り切れてるみたいだし? 静カレーでいいわ」
「ふっ……。わたくしは当然ハシビロコウカレーです」
「では、うちもハシビロコウカレーにしましょう。かわいいですしね」
と、いうことで全員でハシビロコウカレーを頼んだのだが……。
「どうしよう可愛すぎて食べられないわ」
星羅が困った顔をしている。
「仕方ないですね。星羅さんの分はわたくしが食べておきましょう」
「た、食べるわよー……もう……。あら、おいしい」
「くちばしはヒレカツになってるんですね」
「ご飯はすりごま…………よく考えられてますねぇ」
寧々と早矢が感心しながら食べている。
いや、ホント美味しいんだ。
うちはカレーの時、五穀米にしてるから、何の違和感もないし、肉もひき肉っぽいのが食べやすくていい。
それに、ブロッコリーもカレーに合うしな。
「この目のところって何で作ってるんだろうね」
「黒目は海苔ですけど……」
ユイと早矢がスプーンを持って見ていた。
「多分チーズじゃないか?」
「あー、なるほどー」
「小さいから分かりづらいですけど、言われてみれば」
口に含んで食べてるけど、俺もちょっと自信ないんだよな。
今度は星羅が、スプーンの上に福神漬けを乗せてしげしげと見ていた。
「赤い福神漬けって新鮮ね」
「うちはカレーに合うように茶色い方だからな。普通福神漬けってこっちのがポピュラーなんだよ」
「へぇ。そうなの。…………うんおいしいわ」
星羅はなんでも食べるなぁ。
「(これを食べればわたくしも先輩のように)」
静が何かモゴモゴ言いながら食べてるな。
「で、この後どうするの?」
「まだ見てない動物いるだろ?」
「あ、そうだね」
ユイがにっこりしながら頷いた。
「光司」
「どうかしたか?」
「これで、キャラ弁作れませんか?」
「まぁ、写真撮ってるし、作れないことはないかな」
作れないことはないが、静はついにのり弁やめることになるのか。
「あ、わたしもお願い」
「あたしもお願いしますね」
「じゃあ、あーしも」
「では、うちもお願いしますね」
全員分のキャラ弁か…………。ふっ……。腕が鳴るな。
食事を終えると、静が俺の手を引っ張っていく。
「な、どうした!?」
「猫さんのショーが始まります」
「それは急がないとダメね」
「ほら急ぐっしょ」
星羅とユイが俺の背中を押す。
そんな押さなくても行くって。
寧々と早矢がおかしそうに笑いながらついてきた。
そして待っている間、先ほどのカピバラを見る。
やはりずっとお湯に浸かっていた。
静は撮った動物の画像と動画を星羅と一緒に見ていた。
寧々と早矢はスマホで何かを調べていた。
そして、ユイはこっそりと俺にくっついていた。
「にっしっし」
「ご機嫌だな」
「そりゃそうでしょ」
「並んでて退屈してないか?」
「待ってるこの時間も楽しいよ」
「そうか」
先頭の方では、代表者が並んで、他の人は見て回っていたりする。
俺もここで待ってるから、見てきていいと言ったのだが、頑なにここで待つと言いだした。
待つこと三十分くらい経つと、招待券を配られた。
そして、時間になり、中へ入る。
どこがいいのか分からないが、最前列が空いていたので、そこに座る。
あっという間に満員になると、係員の人が、静に輪っかを渡していた。
「こんな大役をわたくしがしていいんでしょうか」
「いいんじゃない?」
「そうそう。一番楽しみにしてたんだし、良かったじゃない」
静が口をモニョモニョとさせて、目を潤ませた。
「良かったな」
「はい」
そして、イベントが始まり、いろんな猫ちゃんがそれぞれ芸を見せてくれた。
これは並んででも見たいと思った。
俺達の膝の上を歩いて行った時には、みんなが口元を押さえていた。こんなところで鼻血は出すなよ?
あと、ネネという雄猫が障害物を駆け抜け、最後に高いところへ一直線に登っていった。
よくあんな高いところに登って降りられると、感心していた。
俺が猫だったら怖くてできないよ。
楽しい時間はあっという間だったようで、気がつけば終わっていた。
特に静と星羅は放心していた。かなりの衝撃だったようで、しきりに猫を飼いたいと言いだすくらいだ。
「光司、お願いします。ちゃんとお世話します」
「そうよ。ちゃんとバランスボールに乗れるようにするから」
「待て待て、そんな急に言うなって」
というか、そんな曲芸を覚えさせるために猫を飼うのはどうかと思うんだ。
でも、なぜだろうな。曲芸だけでなく喋らせられるんじゃないかとすら思ってしまった。
そんな風に宥めていたら、気がつけば最後になっていた。
ユイ、寧々、早矢は先に出てしまっていたようだ。
項垂れている二人の手を引いて、出口へ向かい、坂を降りていく。
降りている最中に、カピバラのいる広場を見る。
ユイ、寧々、早矢は既にカピバラのところへ行って、カピバラを撫でていた。
「ほら、まだ見て回るんだろ?」
「そ、そうよ。ほら静!」
「ええ。あまりの感動におかしくなっていました」
星羅と静が、項垂れながらも復活したので、三人の元へ行くことにした。
「コージ、すっごくわしゃわしゃ」
「なぜか毛が逆立ってました」
「でもごわごわでしたね」
そんなカピバラは後から来た星羅と静に黙って撫でられていた。
「俺も撫でてみようかな」
あんまり動かないカピバラが、すっくと立って歩きだしてしまう。
「あ、あれ?」
そして、草のあるところへ入ってしまった。
もしゃもしゃと草を頬張っていた。
『餌を食べているときは触らないでね』って書いてある。
食べているときは邪魔しちゃ悪いよな……。
「代わりにあーしの髪の毛撫でていいよ」
「あ、あたしのも……」
「あとでな」
ちょっとセンチメンタルになってるから。
「あ、そうだ。今ならツシマヤマネコ見れるんじゃね?」
ユイがそう言うと、星羅と静の目が光った。
「では、行きましょうか」
「あ、ああ」
カピバラは全然戻ってきてくれなかった。
「ほら、行きますよ」
寧々と早矢に引きずられるように向かった。
「ねぇ、見えないんだけど」
「どこにいるんですかね」
「あれじゃないか?」
暗くて分かりづらいけど、ちょろちょろと動いてる。
「あ、ほんとだー」
「光司さんは見つけるのが上手いですね」
「いや……」
「わたしも思うわ」
「ええ、わたくしも思います」
みんなで俺を見るが、せっかく来たんだから、もっと動物を見たらいいのに。
そんなことを考えていたら、雲の切れ間から光が差していた。
「晴れたな」
「そうですねー」
「じゃあ、折角晴れたんだ。奥の方に行こうか」
「さんせーい」「ええ。いいですね」
ユイと寧々が楽しそうに笑う。
「何してんの? 早くいくわよー」
星羅と静は先に園内バスの方へと歩いていた。
というか、静は黙々と歩いて行ったな。
「じゃあ、行きましょうか」
早矢が腕を掴んだ。
「早くー」
星羅が先で、両方の腰に手を当てて呼んでいた。




