番外編49 もふもふさんに会いに行こう7
時間もいい頃合いだが、みんなはまだ動物が見たいらしい。
「食事も大事ですが、まだ半分も見れていません」
静にとっては『食事<動物さん』らしい。
「当たり前でしょう。せっかくこんなにお出迎えしてくれてるんだもの。ちゃんと挨拶回りしないと失礼でしょう」
星羅も静寄りのようだ。まぁ、静の一番の理解者なところあるしな。
「そうだよー。もう少しでお昼だしね」
「ええ、レストランは今の時間帯の方が混んでるかもしれませんし、その間に見て回るのがベストです」
ユイと寧々はちゃんと把握しているようだ。
まぁ、普段会えないような動物がいたらそうなるか。
「うちが言うのもなんですが、もっと見たいです」
「そんな遠慮しなくていいぞ。もっと素直に言っていいんだから。なぁ?」
「うん」「ええ」「もちろんよ」「当然です」
「だそうだ」
「ありがとうございます。うちもまだ慣れてなくて……」
早矢が頬をかきながら苦笑いする。
俺は何の気なしにポンと早矢の頭に手を乗せた。
「あっ……」
「あ、すまんつい」
「いえ、嬉しいですよ。えへへ……」
そんな様子をペンギンさん達とユイ達四人がじーっと見ていた。
手をどかすタイミングがなかなかみつからないな。
ペンギンさん達が飽きて、それぞれ四方八方にヨチヨチ歩いて行ったタイミングで手を下ろした。
「あう……」
「雨降りそうだから、少し早めに見ようか」
「そうだねー」「ですねー」「そうね」「そうですね」「…………はい」
早矢が頭に手を当てて名残惜しそうにしている。
そうして、少し進む。
スカンクがちょこまかと動き回っていた。
意外と大きい。リスくらいのイメージだった。
「あ、アニメで見たことあるやつ!」
「CSでやってるやつな」
あれ系のキャラって可愛いんだよな。もちろんイジられている方限定で。
そんなことを思っていたら、みんなで少し距離を取って見ていた。
「臭そう……」
「ここのは臭腺とってるらしいぞ」
「じゃあ安心ですね」
みんな一歩前に近づく。
「ちなみにどのくらい臭いのかしら」
「なんか腐ったラーメンみたいな臭いらしいぞ」
「分かるような分からないような」
「ええ。腐らせるどころか、残りませんからね」
「静さん、そういうことじゃないですよ」
「え、違うの?」
「星羅まで……」
「…………」
「唯さんもこっち見てください」
「ふふっ……」
そんなやりとりを見て、早矢が可笑しそうに笑った。
当然だ。どこかずれた感想だからな。
だが、そこがみんならしいというか。俺は好きだな。
そして、そのまま大きな池の方に行く。真ん中にダムを模したおっきな家がある。
「わぁ! ちゃんと口に枝を咥えてるー」
ビーバーが枝を咥えて泳いでいた。
気持ち良さそうに泳いでるな。
上半分しか見せてくれないが、まぁそういう時もあるだろう。
別の一匹は水の中に沈むと、そのまま穴に潜って中へ入っていった。肺活量すごいな。
その横にある斜面ではヤマアラシが器用に木から降りていた。
それにしてもすごいトゲトゲだ。
「ヤマアラシのジレンマ……」
なぜか昔の俺を思い出してしまった。
そんなヤマアラシをどこか懐かしく見てしまった。
「コージ?」
ユイが不安そうに俺の袖を引っ張った。
「ん?」
「疲れた?」
「いや、大丈夫だぞ」
「そ」
「ん」
短いやり取りだが、ちゃんと伝わる。俺もトゲトゲで防御しなくてもいいんだ。
でも、俺ハリネズミとかヤマアラシみたいなの好きなんだよな。
そんなことを思っていたら、ポツポツと雨が降ってきた。
「わ!」
「マジか。本格的に降り出してきたな」
少し駆け足で屋根のあるところへ向かった。
本格的に降り出した雨はいつ止むか分からない。
山の天気は変わりやすいと言うが、いつ止むんだろうな。
他のお客さんはこの機会に食事に行くようだ。まだまだ混んでいそうだ。
丁度、目の前に保全の森というコーナーがあったので、そこに入ることにした。
入って早々に星羅が釘付けになった。
「にゃああ! にゃーんてかわいいのかしらぁ!」
星羅がスナネコを見て、普段のお嬢様キャラを捨てた。
スナネコも窓越しに星羅と見つめ合っている。
そりゃあこんなにもなるか。
そんなスナネコではなく星羅を撮る静。
「あ、つい」
「いや、分かるぞ」
静の肩をポンポンと叩いた。
そして、丸くなって寝ているスナネコや雷鳥などを見て回った。
スバールバルライチョウがずっと自分の巣をツンツンと突いていて、みんなでいつ止めるんだろうかと見ていたが、全然止める気配はなかった。
「わたし達の負けね」
「そーだね。完敗だねぇ」
「たまにこっち見るんだけどね」
「何がそこまで駆り立てるんだろうな」
そう言いながら、名前を見た。スバールバル……か。マップで見たRXー8ってまだあるんかな。そんなことをふと思い出してしまった。
次にアムールヤマネコ。
何周も同じルートを歩き続け、巣に入り、また出てきて、同じルートを歩く。
ネコ科の動物さんは、結構同じ感じで歩いてたな。
「これプログラミングされてるわけじゃないよね?」
「いやぁ、流石にそれはないだろ」
「だよねぇ」
「でも、同じルート三回目だね」
「でも、楽しそうに歩いてるわ」
「お気に入りの散歩コースなんじゃない?」
「なるほど」
まぁ、疑うのは分かる。躊躇いとかないしな。
しかし、猫科が好きなのか、小動物が好きなのか、それともかわいいもの好きなのかは分からないが、星羅はずっと眺めているな。
「歩くの好きなんですねえ」
「ぶっとい尻尾が可愛いわ」
星羅も『ぶっとい』呼びをしていた。
寧々と星羅がずーっとかじりつくように眺めていた。
その間ずっと、ずんずんと歩いていた。
外に出たら本降りになっていた。
「ツシマヤマネコ見れないね」
「外だからな」
止むのを待つしかないな。
「だが、まだ沢山いるんだから、そっちからいこうか」
「そうだねー」「ええ」「そうですね」
ユイ、寧々、早矢は了承の意を示すが、静と星羅は動かない。
一応屋根のあるところからは見えるが……。
「こっちに来てくれないにゃん」
「こっちに来てくれませんにゃー」
語尾に猫語を付けても、そう簡単に来ないだろ。




