番外編48 もふもふさんに会いに行こう6
さて、動かない静をなんとか宥めて次のコーナーへ行く。
といってもすぐ隣なんだが。
「あれー、何もいないねー」
「そうですねぇ。ここは何がいるんでしょうか?」
「何だろうな……ジャガーって書いてある」
「ピューって吹くやつ?」
「それは違う」
辺りを見回す。
「あ、いた」
「え、どこ?」
アーチになっているところに優雅に座っているジャガー。
その後、サービスとばかりに前に来てウロウロし始める。
だが、すぐに疲れたのか飽きたのか、木の棒に寄りかかるようにしてあくびをしていた。
「普段の星羅みたい」
「一日の終わりの時の寧々みたい」
「休日の光司みたい」
「朝起きた時の唯みたい」
「みなさんひどいですね」
「わたくしは完璧なので、あんな格好はしませんよ」
ふふんと静がドヤ顔で言うが、確かに見たことないな。
「ねぇ、わたしのが一番ひどいんだけど」
「大体合ってるし」
「合ってないわよ! もう……。それにしてもかわいいわね」
「そうだな。星羅みたいだ」
「この状態で言われても嬉しくないんだけど」
ジャガーさんは相も変わらずあくびをしていた。
「待って!」
星羅の制止する声で止まる。
「どうした?」
「ほら、上見て」
「上?」
みんなで上を見ると、窓際でワオキツネザルが自分の尻尾をこれでもかというくらい、毛づくろいしていた。
そして、ペロペロとしっぽを舐めていた。
「わぁ! すごいぶっといしっぽですねぇ」
「ぶっといって、寧々ったら……」
「でも事実じゃないですかー」
寧々はぶっとくてもふもふの尻尾のある動物が好きなんだな。
「しかし、ずっと見ていていられるなぁ」
「ホントよね」
俺も尻尾もってたら、日がな一日しっぽで遊んでたろうな。
しかし、根元から先までずっといじってるな。
たまに、首を回したり辺りを気にしているが、すぐに尻尾の手入れに戻る。
よっぽど尻尾が好きなんだな。
六人でずっと、黙ってそれを見ていてしまった。
その後は、コツメカワウソのコーナーだ。
全員が動かない。
カワウソも一匹除いて、集まってぎゅうぎゅうになって眠っている。
「静の部屋みたい」
「ありがとうございます」
「お……おう……」
星羅が気圧されている。ここでは静が一枚上手だな。
だが、その中の一匹が凄いのだ。
栗のようなものを、お手玉のようにして遊んでいる。
遠くに飛ばしそうになっても、上手いこと掴んで、手から手へ投げて遊んでいる。
こんなのを見てしまったら、もう離れることなんてできない。
「めっちゃ楽しそうにしてるね」
「それに上手ですね。こんなに長くできるなんてよっぽど練習したんでしょうね」
ユイと寧々が慈しむような表情で見ている。
「よく見たらさぁ、披露してるようにも見えるわよね」
「そうですね。壁に寄りかかって眺めてるようにも見えます」
「ということは発表会ってことですね。貴重な瞬間に巡り会えたんですねぇ」
星羅と静と早矢が一時も見逃すまいとユイと寧々の頭や肩に手や頭を乗せて見ていた。
全く文句を言わないのは集中しているからなんだろう。
カワウソもそれに応えるように、どんどんとパフォーマンスを繰り広げていく。
木の上に乗って、さらに魅せていく。隙間に落としてもちゃんと回収して、再びやっていく。
「なんか、こうしてやってるのを見ると、寧々よりユイって感じよね」
「ほぇ?」
「確かに、ユイさんは器用ですしね。よくソファの上で似たようなことしてますもんね」
「や、あれはー…………でも、うん。嬉しいかな」
「早矢にも似てるんじゃない?」
「え、そうですか?」
「あざと…………可愛いところとか」
「星羅さんもう一度、どうぞ」
「なんでもないです……」
変なことを言い合っている様子をカワウソ達が立って見ていた。
「あうう……」
そんな中、寧々の様子がおかしかった。
「あたしが一番カワウソさんに似てるんですーーーー!」
餌のガチャポンへ向かい、100円を入れて回す。
そして、出てきた餌を持って、上から投げ入れていた。
一瞬、静かになるのがなんともシュールだ。
カワウソ達も餌に夢中だが、すぐに元の位置に戻って続きを求めていた。
栗のようなものを持っていたカワウソもパフォーマンスを止めて眺めていた。
「寧々、あなたがカワウソさんの王よ」
星羅が少し困ったように言った。
「はい」
それから暫くカワウソさんが元の位置に戻るのを待ってから、その場を離れた。
レアでなかなか見れないと評判のミゾゴイが呆れたような顔でこっちを見ていた。
外に出て、ビーバースワンプの方へ向かう。
静がスマホを見て、歩みを止めた。
「どうした?」
「ペンギンさんのもぐもぐタイムを逃してしまいました」
「そりゃあ、あんだけいたらな」
「でも、ワンちゃんいけるかもしれません。まずはペンギンさんのところへ行きましょう」
「そうだな」
ということで、少し急ぎながらペンギン村へ向かった。
少し曇天だった空は、少しポツポツと水滴が落ち始めていた。
「降りそうだね」
「今日は曇りだって聞いたんだけどな」
みんなで空を見上げた。
額に雨滴が当たった。
そして、そんな天気の中ペンギン村へ向かうと、異質な雰囲気だった。
全部のペンギンが同じ方角を向いて、同じ方をじっと見上げていた。
ドラゴン◯ッドの映画のラストってこんなだったよな。
「なんか、全然動かないね」
「雨が降る前兆かもしれませんね」
「そうなの?」
「いや、知りませんけど」
静でも知らないことがあるんだな。
いや、冗談で言っただけの可能性もあるが、何せ静だ。どっちか分からない。
建物の横の池では一匹のアザラシが楽しそうに泳いでいた。
「でかいねぇ」
「おっきいです」
「光司も泳いだらこんなんよね」
「え、そうなんですか?」
「早矢さん、本気にしなくていいですよ」
「星羅さん?」
「うっ……」
気まずそうな顔で俺を見る星羅。そんな顔をするなら言わなければいいのに。
そろりそろりと離れた星羅は「!?」と何かを見つけると、慌てて戻ってきた。
「光司! 光司がいたわ」
「どういうことだよ」
星羅に引っ張られるまま向かうと、地面の上にでーんと寝転がったアザラシがいた。
「確かに休日前の夜はこんな感じですね」
「たしかにそっくり……かも?」
「いやいや、光司さんはこんなに丸っこくないです」
「でも、こんなポーズしてるじゃない」
「うっ……」
アザラシがこっちを見つめる。
「そんなに似てるんですか?」
「似てるよー」
ユイがスマホを操作した。
「ほら」
「あら」
「待て、なんでそんなもん撮ってるんだよ」
「え? 普通撮るっしょ。ちなみにこっちがー」
もしかして毎回撮られてたのか?
─だって仕方がないじゃんか 疲れているんだもん こうじ─
中に入ると、水槽の中でペンギンが餌を食べていた。
水の中にはイワシのような餌が大量に入っていて、それぞれが慣れた感じで啄んで食べていた。
しかし、泳いでる姿もかわいいな。
そんな中で唯一違和感のある場所が。
「どうしてミーアキャットはここなんだろうな」
「うーん転勤?」
間違っちゃいないんだけどな。
「コージは転勤しないよね?」
「ああ。多分ないと思う」
「良かった」
ユイが嬉しそう後ろ手にはにかんだ。
そんな様子を二匹のミーアキャットが立って見ていた。
なんか、動物を見にきたのに、動物側に見られるの多くないか?




