番外編47 もふもふさんに会いに行こう5
入ってすぐ前に滝があり、その先にはクロエリセイタカギシが水浴びしていた。
それにしても、なんて細くて長い足なんだ。体のフォルムが白黒なのに、フラミンゴみたいにピンクの足をしている。
他にはマガモも水浴びしていた。いろんな鳥が共生しているようですごくいい。
そんな中で全然人を恐れない鳥がいる。
アカツクシガモだ。堂々と道の真ん中を歩き、立ち止まり寝てしまったり、石垣を超えていったりと自由すぎる。
小高い坂を登り、左手に見覚えのある後ろ姿が見えた。
「静! あれ!」
「静っち、あれだよね」
「まぁまぁ、慌てなさんな。他にもキュートな鳥さんがいるのです。他の鳥さんに失礼ですよ。ハシビロコウ先輩は逃げません。ゆっくり堪能しながら行きましょう」
静の言うことはもっともだな。
他の人は我先に向かうが、他の鳥もかわいい。
入り口にマダガスカルトキが三匹、堂々と招待してくれたしな。
寧々と早矢がお辞儀していた。
「そうですよ。触っちゃダメですけど、こんなに愛らしい姿を見せてくれるんです。ちゃんと愛でてあげましょう」
「そうですね。よちよち歩きがとてもツボに……入って…………あぁダメ、かわいい……」
早矢がだんだんと染まってきてる気がする、それも星羅みたいなハマり方。
「そうね。その通りよ。せっかく来たんだもの、全部の動物を堪能するのは当然よね」
「さすが、静っち。はやる気持ちを抑えられませんでした!」
別に敬礼しなくていいのに律儀だな。
そして、静も大仰に敬礼し返した。
何やってんだとアカツクシガモが見上げていた。
ユイと星羅と静は、性格全然違うのに、こういうところで一致するんだよな。
緩やかな坂を下ると、マガモとクロエリセイタカギシに囲まれて一匹のイノシシのようなのがいた。
アカカワイノシシというらしい。アフリカにいそうな色合いだ。飼育員さんに遊んでもらっている。嬉しそうにしているな。
そんなイノシシを見て、ユイと早矢が俺を見る。
いや、こんなところで何をするというのか。
ほら、もう少しで、本日の目的のお方がおられますよ?
一歩、また一歩と近づくたび、心臓が早鐘を打つ。
やばい……俺まで震えてきた。
あのグレイリッシュな水色は、ホントにすごい。唯一無二である。
いろんな鳥がいる中で池の中で目立っているのは四匹のフラミンゴとハシビロコウだ。
ピンクと水色。うちにもいるけど、やはりすごく目立つ。
そして、人がいなくなったのを見計らい、俺達は木柵の前に一列に並んだ。
「ハシビロコウ先輩に、礼!」
静がそんなことを言うもんだからついついみんなで頭を下げてしまった。
そして、頭を上げるが、ハシビロコウはじーーーーっとこっちを見たまま微動だにしなかった。
「む、おかしいですね。ボンゴくんは礼儀正しいはずなんですが……」
「おかしいのはあんたじゃないかしら?」
「むぅ。まだ顔を覚えてもらってないからでしょうか」
「かもな」
しかし、動かないと言いながら、結構動くな。
絶えず見ていた静のレポートがこちらだ。
まず、首は結構動かします。
意外とキョロキョロしてます。
白目になることもありますが、それもまたいい。
そして、背中の羽を少しもぞもぞさせたりします。その時は何かをする合図ですね。よく注視しましょう。
そして、えづくようにあくびをしますが、この時の顔がとってもキュート! ゆっくり嘴を閉じるのがもうかわいい。犯罪的かわいさですね。
最後にパチクリと瞬きもする仕草に心臓を鷲掴みされます。
あとは、片足で嘴や首元を掻くと、羽を動かしたり、首をぐりんぐりんと動かします。結構長時間カキカキしてますね。
そして、結構羽をバサバサさせるんですが、内側の綿毛がふわふわしていて、もう溜まりません!
あれがチラ見せの極意かと思うと、非常に勉強になりますね。
後は、思いっきり羽を広げると、そのまま何回もバサバサさせています。風を起こせそうなくらいバサバサさせていて、きっと嵐を起こせるかもしれません。
敢えて名付けるならば、『ハシビロコウエフェクト』ハシビロコウが羽を広げて羽ばたくと、わたくしが満足します。
そして、光司を含めみんなが笑顔になりますね。
惜しむらくは、寝姿と挨拶。あと歩く姿が見れなかったことですが、これは足繁く通う必要がありますね。
以上が、静のレポートだ。
一字一句同意しかない。
だが、ハシビロコウだけに注視するのも勿体ない。
フラミンゴもよく頭でつつくように争ったりしているが、あれも何か意味があるんだろうか。
「唯が唯と喧嘩してる……」
「いや、あーしあんな感じでやらないし」
「ツッコミがおかしい」
それにしても、薄いピンクと鮮やかなピンクと二種類いるけど、やっぱりエサなんだろうか?
そんな感じでこの場で六人でずっと見ていた。気がつけば三十分は経っていただろうか?
マガモがバシャバシャと泳ぐ中、それでもハシビロコウだけは、時間に取り残されたかのように悠然としている。
「名残惜しいですが、まだまだモフモフさん達がいますからね。では、一同ボンゴ先輩に礼!」
最後に再び全員で礼をするが、顔を上げたら、そっぽを向いていた。
「まぁ、そんな日もあるさ」
「はい……。今日は機嫌が悪かったのでしょうかね?」
「いや、ハシビロコウにもそんな日あるでしょ?」
気落ちしている静に星羅が追い討ちをかける。
そんな時、一歩だけ、前に進んだハシビロコウ。
「!? ほらあ!?」
星羅の肩を掴んで、ハシビロコウを指さす静。
それはいつもの静ではなく、空港で有名芸能人を見にきた奥様方のような動きだった。
「いー……いいい、今のは偶然よー……」
グラグラ揺らされるもんだから、声が震える星羅。
「そこまでにしとけ。ハシビロコウ先輩が見てるぞ?」
「光司……」
急にハシビロコウのようにじっと俺を見る静。
「ボンゴ先輩です。光司」
「お、おう……」
その圧にはただただ頷くしか出来なかった。
「ところで、何で先輩なんだ?」
「それわたしも気になるわ」
「あーしも」「あたしも」「うちも」
俺と星羅が聞き返すと、ユイ、寧々、早矢も続いた。
だが、その質問には答えず、忍び足でそっと横へ抜けると、再びハシビロコウの方を向いてしまった。
次のコーナーへ行くまであと十分は要するのだった。




