番外編43 もふもふさんに会いに行こう1
マイカーを買ったのならば、お出かけだろう。
そう言われて、早速遠出をすることになったのだが……。
「那須の動物さんに会いに行きます」
静が夕食時にそう宣言した。
前日のゲーム勝負で静が勝ち、行き先を決める権利を得たらしい。
他のみんなも、決まった内容に異論は無いらしい。
寧ろ、行きたくて前日の夜からそわそわしていたくらいだ。
その後、みんながお風呂に入り、リビングで思い思いに寛いでいた。
ユイも寧々も星羅も早矢もなぜかぬいぐるみを抱いていた。
ユイはサーバルを。
寧々と星羅はペンギンを。
早矢はどういうセンスなのかアリクイを持っていた。
「すいません。わたくしの部屋からロマネとコンティとバカルディと鳥飼がいなくなりました」
お風呂から出て、部屋へ一度戻っていた静がそんなことを言い出した。
「待て。静は部屋にお酒を隠しているのか?」
その歳でお酒は良くない。というか、何でそんなに持ってるんだよ。
というか、鳥飼は俺の好きな三大米焼酎の一つだな。少し分けてもらおうかな。ここ半年お酒は飲まないようにしていたから。
いや、明日早いだろうから飲まない方がいいんだろうが……。しかし、あの香り高い焼酎はロックで飲みたい。吟香と言うくらいだからな。
だが、俺の考えは全然違ったようだ。
「何を言っているんですか光司。ぬいぐるみさん達の名前に決まってるじゃないですか」
「いや……そのネーミングセンスはおかしいだろう」
「あーしもそう思う」
「あたしも」
「前々からそう思ってたのよね。光司が隠してるお酒以上の名前があるし」
「待て。星羅、お前なんで隠してるの知ってるんだ? まさか飲んでないだろうな?」
「大丈夫ですよ光司さん。星羅さんはファッションで言ってますから」
「そうです。ウイスキーなら麦茶を。ワインならウェルチをグラスに入れてますから」
寧々と早矢が星羅の趣味を暴露した。
「ならいいけど」
「待って! そんなこと今暴露しなくてもいいじゃない!」
星羅が顔を真っ赤にさせて訴える。
まぁ、見つからないところに隠してるから大丈夫だとは思うが、しかし真似でジュースやお茶をねぇ……。
そんなことを話していたら、静がずんずんと近づいて、それぞれからぬいぐるみを回収していった。
「こんなところにいたのですね。ロマネ。コンティ。バカルディ。鳥飼」
ペンギンがワイン。アリクイがラム酒。サーバルキャットが焼酎。いや、ネコ科が焼酎なのかな。
どうしてそんな区分分けしているのかは分からないが、何か意味があるのだろう。
「えー、いいじゃん。たまには貸してよー」
「そうです。寧ろ部屋に入れないくらいじゃないですか」
「そうよ。わたしがちゃんと可愛がってあげるわよ」
「まぁまぁ、そこまでにしておきましょう。明日は本物の動物さんに会いに行くわけですし」
「むぅー」「はい……」「そうね」
「ただ、静さんも少し整理しないと……」
「仕方ありません。考えておきます」
憮然としながらも渋々納得の意を示した静。一体何が静をそんなに駆り立てるんだろうな。
「ところで、明日は何時に出ればいいんだ?」
「そうですね。開園と同時に入りたいですから……」
「二時間半あれば余裕で着くよ」
静が思案すると、ユイが速攻で時間を算出した。
「そうか。じゃあ七時くらいを目安にするか」
「どうせ、他にも寄るんだから、早めにしたら?」
「ですね。まぁ、起きられるかが、一番の問題ではありますが」
と、いろいろ話も決まった。明日の朝は早いから俺も早めに寝ることにした。
*
翌朝──
今日はエディの方で行くことになる。
エディックスだと長いから、愛称だと言っていた。
ちなみにムルティプラの方の愛称はミニーなんだが、『醜い』からとってはいないだろうな?
……違うよな?
早速用意しようと思ったら、既に用意は済んでいると言われた。
どうやら俺よりも一時間も早く起きて用意していたらしい。楽しみにしすぎだろう。
普段起きるのが遅いメンバーがこんなに朝から元気なのが、その証拠だろう。
しかし、意外なことがあった。
こんな話をしているのに、既に早矢は前列の真ん中に座って、黙って待っていた。
「早矢もそんなに楽しみだったんだな」
「はい!」
髪の毛をポニーテールにして、よほど張り切ってると見える。
早矢の横にはユイが座り、後ろには寧々、星羅、静の順で座った。
しかし、やっぱりというか、当然と言うべきか、早矢のナビゲーションも完璧だった。
「光司さん今すぐに車線を左に移ってください」
言われてすぐに移る。その数十秒後にトラックがすごい勢いで去っていった。少しふらついていたが気のせいだと思いたい。
その後も「必要ありませんが、左前方のトラックの前に覆面がいますね」「今追い越しをかけるのは得策ではありません。猛スピードで黒いSUVとミニバンが競い合うように突っ込んできます」「今のところ渋滞の気配はないですね」
優秀すぎませんかね。バックミラー越しに三人が悔しそうな顔をしている。
だが、東北道ならこの辺で声が掛かるはずだ。
「コージ、ミニクロワッサン買お?」
「そうだな」
「えっ!?」
早矢が驚くが、まぁ我々の行軍では予定通りなんだ。
「え、えっと……、今なら前列に空きがあります。頭から突っ込んで止められますね」
戸惑いながらもちゃんと案内してくれる。流石です。
ということで、いつも通り羽生PAに到着した。
朝早くからやっているから助かるよ。
「いいか? お土産は帰りに、な?」
「はーい」と手を上げて言うが、やはり買ってきたよ。
だが、流石に今回は紙袋一つで済んで良かった。
「じゃあしまってくるわね」
「ああ」
星羅がトランクにしまいに行った。星羅も結構率先して動くようになったよな。
ということで、買い物も早々に羽生PAを後にした。




