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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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番外編42 車を買いに行こう


 毎回レンタカーを借りての遠出は結構費用が掛かる。

 大人数が乗れる車となると、金額は上がるし、何より返却時が怖い。


 毎回借りるところでは、そこまで言われることはないが、車体に付いた傷などないか確認されるときはドキドキする。

 それに最近はガソリン代も高いし、満タン返しだと、結構キツイ。


 それならばマイカーを買ってしまった方が気が楽になろうというもの。

 車の中でアホみたいに食べて零すしな。あと、毎回車種が変わるとちょっと大変だ。


 と言うことで、車を買いに来た。

 別に新車を買う予定は無い。中古車で十分だ。カツアゲみたいな税金や維持費は確かに痛いが、今回目当ての車は中古でしか無い。


 ミニバンやSUVはどうもな。横からの風とかもあるが、俺はどうも上から見下ろしての運転が性に合わない。

 なんと言うか、地に足がついてる方がいい。


 それに一部の車種は運転マナー悪いのばかりだし、イメージも悪い。

 持っているだけで後ろ指指されるような車は要らない。

 まぁ、候補の中には指を指されて笑われるのが入ってるんだが、それはまぁいいだろう。

 しかし──


 「なんで来たんだ?」

 俺一人で検討しようと来たのだが、みんな付いてきてしまった。


 「そりゃあ、光司がどんな車を選ぶのかわたしがジャッジしないとね」

 腰に両手を当てて言うのは星羅だ。どうやら、トランクに土とか支柱とかちゃんと詰めるものがいいらしい。


 「そうですね。みんな乗れて、実用的ならあたしはなんでもいいですね」

 両手を合わせて、ニコニコしているのは寧々だ。収納や利便性重視なのはいかにもだ。


 「あーしは、みんな乗れればなんでもいいかなー」

 「うちも乗れれば、特に希望はないですね」

 要求が低いのがユイと早矢だ。

 どうせ、選んだ後にいろいろ難癖つけそうな気がしそうなのは気のせいだと思いたい。


 「わたくしは荷物が積めればそれ以外は望みません」

 絶対にお土産が積めること前提で言ってるな。大丈夫だ。それも織り込み済みだ。


 「みんな乗れるなら、リムジンとかどう? ちょうどあるし」

 「あ、いいね。みんなでシャンメリー飲みながらいけるもんね」

 「それはいいアイデアですね」

 星羅とユイと静がとんでもないアイデアを出す。


 「別に買ってもいいけど、この長さだと、横にしても駐車場に入らないし、行ける場所限られるぞ。それに、うちを出て最初の曲がり角が曲がれない」

 そう。都内の住宅街の道は狭いのだ。場所によっては電柱が出ているし、すれ違えない。


 「それはダメですね」

 「そうですね」

 「それはいけませんね」

 「じゃあ却下ね」

 「いろんなとこ行けないのは良くないもんね」

 分かっていただけたようで何よりだよ。


 それにしても、本当に都内かここ?

 この前、大神先生に聞いたお店だが、品揃えがマニアックすぎる。


 まず、軽自動車だな。

 初代と二代目のキャロル、R1、R2、i、ミニカトッポ、ネイキッド、AZー1、カプチーノ、ツイン、Z……。

 普通の軽自動車の方が少ない。


 SUVもそうだな。ミュー、ビークロス、初代HRーV、CXー7、Xー90……やべえな。独り身だったらあそこのパジェロエボとか買ってるわ。


 そんな感じで見ていたら、オーナーだろうか。ツナギを着た男性がやってきた。


 「いらっしゃい」

 「あ、どうも」

 「ボクはここのオーナーやってる加納集って言うんだ。よろしくね」

 「あ、はい。須永です」

 「どうだい。珍しいのばっかりだろう?」

 「はい。ゲームでも見ないのばっかりですね」


 見渡すと、街中では多分見られないだろう車ばかりだ。

 まぁ、メジャーなのもあるが、きっと特別仕様車とかだろう。


 「そうだろうそうだろう」

 嬉しそうに破顔するオーナー。

 「うちで買ったのはちゃんと整備もするからね。パーツも可能な限り見つけてくるし、無いなら作るよ」

 すごいな、確実に生産終了どころか金型もなさそうな車あるんだが。


 「ちなみに、うちは何で知ったの? ネット? 広告?」

 アンケートみたいだな。やっぱりニッチな車扱ってると売上とか低いんだろうか。


 「実は知り合いに聞いて」

 「へぇーそうなんだ」

 「ええ。大神い──」

 「あの人かー。変わった人だよねー」

 あの人結構顔広いんだな。


 「それで今日は何をお探しかい?」

 そう言って指し示したのは古いオープンカーだった。


 「S800とかどうだい?」

 「いやー流石に……」

 「あ、そう? じゃあこっちは?」

 トヨタ2000GTとかどこから見つけてきたんだよ。

 というか、この辺クラシックカーばっかだな。イオタにミウラ、328GTSとか絶対に買えない。

 あ、でもこのフルビアはイイ。凄くそそられるが、値段は……無理だな。

 流石にこの辺のは買えないな。人数も乗らないし。


 というか、こんだけあったら人が結構居てもいいと思うんだよ。土地柄的にもそんなに過疎ってるわけじゃないし。


 「ふむ。ちなみに、どんなのをお探しで?」

 「六人乗れる低重心な車かな」

 「普通ならミニバンとか3列のSUVとかなんだけどね」

 エスパスF1くらい尖ってれば考えるんだが……って、あれ四人しか乗れないな。却下だわ。


 そんな時、静が俺の袖を引っ張った。

 「光司、キタキツネを見つけました」

 「キタキツネ?」

 「はい」

 連れられていくと、一台のセレナがあった。そこには、セレナ・キタキツネと書いてあった。


 あー、あったなぁそんな車。だが、八人乗れるけど、ちょっとミニバンはなぁ。

 もっと増えたら考えてもいいかもしれないが。

 ……って、なんで増えること前提で考えてるんだ俺。


 「これ新車だとぬいぐるみ付いてきたんだが、これはついてないな」

 「では仕方ありませんね」

 諦めが早いな。キリッとした顔で身を引いた静。

 「ごめんねー。さすがに買取時にぬいぐるみはなかったよ。はは……」

 ぬいぐるみで車選ぶのもなんか凄いな。

 「あ、ウミボウズなら……」

 って、全く見向きもしない。流石だよ。


 ということで、当初の目的通り、少し低めの車を案内してもらうことに。

 「じゃあ、こっちだね」

 案内されたところに俺が買おうか検討している車があった。

 ついつい珍しい車があって見て回り過ぎたな。

 ある意味、一日中いられるよここ。


 一台目はティーノ。軽く内装を見る。

 真ん中は補助シートみたいな感じなんだな。流石に遠出するのに、それだとみんなが大変かな。


 二台目はエディックス。今回の本命だ。

 そこそこの見た目だし、特に可もなく不可もなくって感じかな。そこそこ馬力もあるから六人乗って、荷物を乗せても余裕だろう。


 三台目は、リアルでは初めて見たよ、ムルティプラ。それも、初代の方。

 後期型は……無いらしい。

 これも前列と後列三人なんだよな。しかもマニュアル。

 マニュアルってところがそそられるが、この見た目は流石に躊躇する。

 しかし、内装も結構凄いな。

 高熱を出した時に薬と酒を飲んで、目隠しして左手で書いたに違いない。

 さて、どうするかな。どっちも値段は安いが……。


 振り返ると、五人がそれぞれ見て考えていた。

 そうだな。どうせならこの五人に決めてもらおうか。


 「じゃあ、一番票の多かったやつ買うわ」

 そう言った瞬間、審査員モードに移る五人。


 静はどこから出したのかメガネをかけて、車を一周回り、内装、トランク、エンジンルームと確認していた。


 寧々は内装重視だ。椅子の硬さや、収納がどんな感じになるかを見ていた。


 早矢はなぜか前列真ん中に座り、そこからの眺めを見ていた。


 ユイはなぜか運転席に座り、左後方や椅子の座り心地を見ていた。


 星羅は、後ろの席の座り心地とトランクを押したりしながら確認していた。なぜか天井の確認をしていたのは星羅だけだった。


 「なんか娘さん達すごいね」

 「ええ。俺より詳しいですからね」

 「え、そうなのかい?」

 「ええ」

 「将来有望だ」

 まぁ、間違っちゃいないけどね。


 ということで、審査が終わったようだ。

 静がメガネを外して、どこかにしまったからだ。


 結果としては、ユイ、星羅、早矢がエディックス。

 寧々、静がムルティプラを選んだ。


 静はなんとなく分かるが、寧々がこっちを選ぶのは意外だ。

 「実用性はどちらも良かったですが、やはりこのかわいい見た目ですね」

 「かわいい……」

 「かわいいですよね?」

 寧々と静に挟まれるように言われるが、俺にはその感性は分からん。

 前に三人。後ろに三人乗れればなんでもいいとしか思ってなかったからな。

 その後、試乗して、俺の判断待ちとなった。

 


 それから数日後の休日、自宅駐車場前──

 俺を含めて、家の前に立って車を見ている。

 「まさか両方買うとは思いませんでした」

 静が意外といった感じで言う。俺も意外だったよ。

 まぁ、うちの駐車場二台停められるしな。

 それに、気分で選んでもいいだろう。

 出費は高くついたが、少し割引してもらったしな。

 それに俺もこっちが少し気になってしまったんだ。


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