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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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番外編40 お姫様も大変らしい


 それは、星羅に新しい可能性を見出され、クラス内でも話題になっていたのが原因だった。

 「早矢様、お話があります」

 早矢の机の前に、早矢を敬愛する白鷺凛が、どこか目が据わった状態で立っていた。


 「はい。聞きますよ」

 いつもの調子で、にこやかに返すと、凛は大きくかぶりを振った。

 「ここではなんですから、……そうですね。行きつけのお店で話しましょう」

 「はい。分かりました」

 人に聞かれると困る内容なのかな、と早矢は考えていたが、それが間違いだとすぐに気づいた。


 「では、行きましょうか。小春、準備を」

 「はーい。じゃあ早矢ちー、失礼するねー」

 一体どこにそんな力があるのか分からないが、4組の忍者のように、春日小春は早矢を音もなく抱きかかえると、そのまま素早く移動を開始した。


 普段のほほんとしているのに、この素早さはなんなのかと戸惑う早矢。

 幸いにも、肩に担がれるのではなく、お姫様抱っこなので、そこまで苦ではないし、早すぎて恥ずかしがる余裕もなかった。

 凛もその横を武士のような走り方で付いてきた。

 一体この二人はなんなのだろうか。

 そう考える間もなく、目的の喫茶店へと着いた。


 そこは、学園の近くにある喫茶店で、生徒や先生なんかもよく利用しているお店だ。

 なんなら、普通に他の席にもいるので、別に教室でも良かったんじゃないかと思う早矢。


 「では、折角なので、何か頼みましょうか」

 多分、これが目当てなんだなと察したのだった。


 「なんでもいいですが、おすすめはありますか?」

 「こちらのパフェなど、どうでしょうか」

 写真に映るパフェは、普通の喫茶店のものより、量も値段も桁違いだった。

 商売になるのだろうかというくらい、大きく、そしてかなりのクリームとフルーツが盛られていた。

 場所が場所なら一万円近く行くのではないかと思えるほどだ。


 よく見ると、それはこのお店の看板メニューの爆盛りパフェらしい。

 しかも、『初級』と書いてあるが、重量3キロと書かれている。

 その後に、『中級』『上級』『煉獄級』『地獄級』『深淵級』『冥王級』と凄いのか凄くないのかよく分からなかった。


 今は気分ではないので、やんわりと断る。

 「いえ、うちはコーヒーだけでいいですよ。えっと、そうですね……ブレンドをホットで」

 ブレンドは、そのお店のこだわりが分かるので、初めて入ったお店ではブレンドを頼むという、光司のこだわりを早矢も守っているのだ。


 「よろしいのですか? こちらのプリンアラモードなどもオススメですよ?」

 だから、どうして『爆盛り』の方を薦めるのか気になった早矢。


 「あの、出来れば普通サイズの方が」

 「そ、そうですか? 早矢様のご家族も量の多い方をペロリと平らげてるので、てっきり」

 そう言って上の方を見ると、『地獄級爆盛り十分以内完食!』と書かれた色紙に、唯、寧々、星羅、静の四人がピースサインで、一緒に貼られた写真に映っていた。

 

 どうりで。と、思った早矢。

 出来ないことはないが、今日は相談ごとを聞くのが優先なので、気が散ることはしない。

 とりあえず、薦めるので普通サイズのカスタードプリンを頼んだ。


 凛はミルクセーキと『初級』のプリンアラモードを。

 小春はメロンソーダと『初級』のパフェを頼んでいた。

 そして、目の前に置かれたそれは、普通サイズであるはずなのに大きかった。


 「えっ!?」

 まさか、ミルクセーキとメロンソーダが腕の長さくらいありそうなジョッキで来るとは思わなかった。

 早矢のコーヒーもそれなりに大きなカップに入っていた。

 どおりで、すぐに満席になるのだと理解した。

 しかし、普通の定義が狂うお店だなとも思った。


 二人に連れられて、五分しないうちに、うちの生徒達でいっぱいになってしまった。

 尚のこと、教室内でも良かったのでは? と、凛を見ながら思うが、美味しそうにプリンを食べているので、もしかしたら、こういうのがやりたかっただけなのかもしれないと思った。


 暫くコーヒーとプリンを楽しむ早矢。

 食べても食べても減らない。

 大きいから、大味と思いきや、ちゃんと作ってある。

 どこぞの有名店並みの味をしており、何度も驚き、目を見開いてしまう。


 コーヒーもコクと酸味と苦味と甘味のバランスが良く、複雑な味わいと飲んだ後の余韻が素晴らしかった。そして何より香りが良く、どこか異国にいるかのような気分になった。


 半分程平らげたところで、凛がスプーンを置いた。

 流石に限界だろうか? そう思ったが、神妙な顔つきになったため、本題に入るのだなと感じとった。


 「早矢様……」

 もう、様づけも慣れた。

 いや、慣れないと話が進まないのだ。


 「はい。なんでしょうか」

 早矢も佇まいを直して、聞く態勢になる。

 「どうして、わたくしを呼んでくれなかったのでしょうか」

 「はい?」


 相も変わらず、パフェを黙々と食べる小春。

 「あの……、話が見えないのですが……」

 「小春」

 凛が小春の名を呼ぶと、小春はスプーンを咥えたまま、スマホを取り出した。

 そして、それを素早く操作して、凛に手渡した。


 「これです」

 「これは!」

 そこには、この前、星羅に服をコーディネートしてもらった時の画像があった。

 凛が次々とスワイプしていく。


 「こんな……くっ……羨ましい……」

 嗚咽まじりにそんなことを言うが、早矢の関心はそこではない。

 そう。斜め上からだったり、下からだったり、人の間からだったり、どこか隠し撮りしたような画角だった。


 「どうして、呼んでくれなかったのです?」

 小春も首を傾げて問いかけてきた。

 「急に決まったので。というか、小春さんもいたなら、参加すればよかったのでは? 燈さんと柚さんもいましたし」

 「それは盲点! 次からは参加するねー」

 「待ってください小春。裏切るのですか?」

 「小春はー、早矢しゃまと楽しくできればいいかなー」

 「せめて食べるか喋るかどっちかにしてください」

 凛がそう言うと、食べる方にシフトした。


 「では、この後、わたくしが早矢様のお召し物を選びたいのですが」

 凛がそう言うが、星羅以上にゴテゴテしていそうだと考えた。


 「今は、着れていないものが多いので、またの機会に」

 「絶対ですよ、絶対!」

 「はいはい」

 慕ってくれるのは嬉しいが、少し慕いすぎではないかと思う早矢。


 そして、思っていたことを口にした。

 「姫様扱いされるのはいいんですが、うちはそんなに弱い姫じゃないですよ?」

 そう言うと、目をパチパチと瞬きさせると、「ふははははは」と豪快に笑い出した。

 店内にいた全員が凛の方を見た。


 「ちょ」

 「分かりました。では、早矢様が強いところを見せてくださいな」

 「え!?」

 「やめといた方がいいと思うけどなー」

 小春がボソッと言った。


 そして、食べ終わると、そのまま学園へ戻った三人。

 学園内にある武道館へ移った。

 なぜか、四方には生徒や先生達が大勢観客として集まっていた。

 いくらイベンド事が好きでも、流石にこんなに集まるのは想定外だった。


 「どうしてこんなことに」

 もちろん、唯、寧々、星羅、静、他クラスメイト達も見ていた。

 「早矢っちがんばれー」

 「はわわわわわ」

 「ふーん、剣道ねぇ。いいじゃない」

 「早矢さんがこういうことするとは意外でした」


 道着と武具を着けて、凛と相対する早矢。

 どうして剣道で勝負になったのかは分からないが、手を抜くのはやめようと思った。

 「手加減はしませんよ?」

 「ええ。負けても大丈夫ですよ。ちゃんとわたくしがお守りしますから」


 どうやら、勝つ気でいるようだ。

 早矢はすでに真顔になっていた。

 「では、行きます」

 「はい!」

 早矢が一気に距離を詰めるべく、地面を蹴った。


 「きえぇええええええっ!」

 凛が叫びながら、駆け寄る早矢に竹刀を振り下ろすが、軽く薙ぐとそのまま胴に打ち込んだ。

 「へ!?」

 それは、一分もかからなかった。


 「そんな」

 「もう一回やりますか?」

 その後、三回やったが、早矢の圧勝だった。

 早矢が面を外すと、唯達が駆け寄ってきた。


 「早矢っちすごいじゃん」

 唯が手を握って喜ぶ。

 「やっぱり早矢さんもすごいんですねぇ」

 寧々が含みのある笑顔で言った。

 「やっぱり派手なの好きじゃない」

 星羅が腕を組んで、呆れたように言った。

 「でも、かっこよかったですよ」

 静が口角を上げて言った。


 そして、クラスメイト達が言ったことで知ったことがある。

 なんと、凛は全国大会に出る程の実力者で、四強の一人なんだそうだ。

 そして、男子と闘っても勝ってしまうくらいの実力者なのだが、そんな凛に圧勝してしまったのだ。

 みんながお祭り騒ぎになるのも不思議ではない。


 3組では、賭け事をしていたらしく、その周りで天国と地獄になっている者もいた。

 そして、凛はと言うと、いつの間にか面を外して傅いていた。


 「流石、早矢様ですね。わたくしの目に狂いは無かった」

 「いや、たまたまで……」

 「これからも一生ついていきますね」

 にっこりと笑顔を向けた凛。やはり、ぶんぶんと振る尻尾が見えた。


 そして、上から何かが落ちてきたかと思うと、それは小春だった。

 「すごいねー。小春も付いていくねー」

 早矢に抱きついて言った小春。小春にも何かの尻尾が見えた気がした。


 そんな中、早矢だけが付いていけなかった。

 「ええ……なんなんですかこれ……」

 「早矢っち、輝いてるよ!」

 唯がサムズアップするので、周りを見るとみんなキラキラした目で見ていた。

 こういうのも悪くないと思ったが、やはり少し恥ずかしかったのだった。


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