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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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番外編38 星羅の美学②


 さっそく向かうと、唯と出くわした三人。

 「あれ、唯」

 「あ、あれー、ぐ、偶然だねー」

 なぜか挙動不審の唯。

 「今日ここ来るって言ってたっけ?」

 星羅が顎に手を当てて考える。


 「えっ! あー、いや、そのー、コージがいそうな気がして……」

 「すごい勘だな」

 光司がそう言うと、星羅と早矢が疑うような目で唯を見た。


 「本当は?」

 「じーぴー…………勘だよ。ホント!」

 「まぁ、そういうことにしておきましょうか」

 何かを言いかけて止めたが、星羅と早矢の耳には聞こえていた。


 「まぁいいじゃないか」

 光司一人がのほほんとしていた。

 唯と一緒にモール内へ入ると、今度は静がいた。


 「おや、みなさんお揃いで」

 「あんたは何してんのよ」

 「ここにはガチャポンがありますからね。めじるしGLAYを全種類集めようと来たんです」

 「あんたも多趣味よねー。で、わたしの分はあるの?」

 「ご自身で集めればいいんじゃないでしょうか?」

 「被ってるのはないの?」

 「ちゃんと二個ずつ被ってます」

 「じゃあ、ちょうだいよ」

 「え、嫌ですけど」

 静が珍しく拒否をしていた。


 星羅と静がそんなやりとりをしていれば、残りは寧々も来るだろうとみんなが予想をしていた。

 「あれ、寧々?」

 唯が雑貨屋の前にいる寧々に気づいた。


 「あれ、みんなでどうしたんです? 今日はみんなで何かする予定はなかったはずですよね?」

 「あーしはさっきそこで」

 「わたくしもそこで」

 「俺はそこのニトリで」

 「そうなんですね。…………本当に偶然、ですよね?」

 なぜか黒い表情で聞く寧々。


 「偶然って怖いよな」

 「ソウダネー」

 「そうですよ。あろうことかわたくしが集めたものを奪おうとするくらいですから」

 「そうですかー」

 手のひらを合わせて微笑む寧々。早矢と光司以外の三人は少し気まずそうだ。


 「寧々ー、どうしたのー」

 寧々の友人の燈と柚がお店の中から出てきた。

 どうやら寧々は二人とショッピングに来ていたようだ。


 「あれれー、寧々の家族全員集合じゃん」

 「こんにちはー。この前の勉強会以来ですね」

 燈は明るく、柚は礼儀正しく言った。


 「こんにちは。俺達はたまたまそこで一緒になったんだよ」

 「そうなんですねー。(ホントかなー)」

 「そうなんですね。仲が良くて羨ましいです」

 ということで、燈と柚も含めてモール内の星羅の目当てのお店まで向かった。


 「わたし達まですいません」

 「いいのよー。いろんな意見聞きたいし。ね?」

 「そ、そうですね」

 顔が朱くなる早矢。


 目的のお店の前に着くと、オーディエンスがたくさん集まってきた。

 どうやら、何かが始まると期待して集まったようだ。

 「えっ! えっ!?」

 戸惑いを隠せない早矢。


 そして、集まったお店の人達が光司、唯、寧々、静、燈、柚に点数棒を渡した。

 「えー、あたし達も参加ー? やったー」

 「ええ……。いいんですかね?」

 「大丈夫です。気にせず、忌憚ない意見をお聞かせください」

 「そーだよ。ガンガン言っちゃっていいからねー」


 その様子に満面の笑みを浮かべた星羅が、早矢の手を引いてお店の中へ入っていく。

 お店の人のサポートも万全だ。

 中に入って数分。

 出てきた早矢の顔は真っ赤だ。初日の出よりも真っ赤だった。

 「あうう……」


 星羅は自信満々に片手を突き出して宣言するように説明した。


 「まずはこれよ! 早矢の好きなラベンダー色を『差し色』に使うの。

 全体は高級感のある黒の厚手サテン生地のパフスリーブワンピース。

 胸元はスクエアカットで、白いレースを重ねて露出を控えめにしつつ、スカートはこれでもかとパニエを仕込んでドーム状に膨らませるゴシックロリータスタイル!

 ウエストは太い黒サテンリボンでギュッとホールドして、足元は早矢の好きな白ニーハイに黒の厚底おでこ靴。

 頭には黒レースのヘッドドレスを飾るわ。

 普段ふんわりしてる早矢が、人形みたいにミステリアスな闇の美少女に変身しちゃうんだからねっ!

 どうよっ!!!」


 まるで何かに取り憑かれたかのように、演技がかった言い方で一気に言い切った。


 唯、寧々の二人は5点満点で1点の評価を出した。

 光司は5点。静、燈、柚は3点だった。

 どこの店員さんだろうか、マイクを持っていた。


 「唯さん、どうぞ」

 頭を下げてマイクを受け取る唯。

 これは一体何のイベントなんだろうかと、点数棒を持ったまま、光司、燈、柚はただただ戸惑うだけだった。


 ユイは苦笑しながらもちゃんと評価を出した。

 「星羅のコーデは星羅色が強すぎる。それにこれは完全に星羅の趣味。早矢には重すぎてるよ」


 「星羅の趣味全開ですね。やりすぎです。飾って美しくするのはいいですが、もう少し抑えましょう」


 「まぁ、これを基準とすればですが、わたくしは嫌いじゃありません」


 実際に早矢の顔真っ赤で、少し震えながら俯いていた。

 そんな三人の評価に手を突き出したまま固まる星羅。

 「そ、そう……。じゃ、じゃあ次ね……」

 すごすごと戻っていく星羅と早矢。


 点数棒を持ったまま、光司、燈、柚は呆気にとられて固まっていた。

 自分が評価を言わされなくて良かったと、心底安堵していた。


 先ほどの気落ちなど、着替えとともに置いてきたらしい星羅は、再び自信満々に両方の腰に手を当てていた。

 早矢も少し困惑程度の笑顔だった。


 「ふふん! 次よ次!

 まずは早矢の好きな『レース』と、わたしの絶対に譲れない癖である『最高級サテン生地』を完璧に融合させた、普段のわたしを彷彿とさせる大人ゴシック・スタイルよ!

 トップスは、早矢の好きな白の刺繍ブラウス……なんだけど、その上に重ねるビスチェ。コルセット風のトップスを、光沢がこれでもかと美しい漆黒のサテン生地にするの。

 ボトムは、早矢の好みのマキシ丈フレアスカートを、あえて深みのあるラベンダーカラーにして、裾からチラリと黒のレースフリルが覗くデザインに。

 髪型は高めのハーフアップにして、黒のサテンリボンで気高くホールド。

 清楚なお嬢様のはずなのに、わたしの癖であるサテンの艶やかさと大人っぽさがプラグインされて、光司の視線を1秒で完全ロックオンしちゃうこと間違いなしよ! どうかしら?」


 先程と違う演技で言う星羅。

 それだけでも一つのパフォーマンスだった。


 マイクを持った唯が、真顔で審査した。

 「はい。えっと、星羅らしさ全開で綺麗だけど、早矢には少し重め。黒サテンが強すぎて早矢の清楚感が薄れる。ただ、星羅にしてはまぁまぁだと思う」


 相変わらず困り顔で審査する寧々。

 「そうですね。先ほどより抑えられてますが、もう少し抑えればいいと思いますよ」


 いつも通りの表情で審査する静。

 心なしか、ワクワクしているようにも見えた。

 「わたくしは嫌いじゃありません。ただ先ほどよりは早矢さんに寄り添っているのでいいと思いますね」

 今回は、光司以外は3点を出していた。

 もちろん、光司は5点だ。


 「光司さんずっと5点なんですね」

 柚が問うと、光司は何てことはないと言った感じで言った。

 「どれもいいと思ったんだ。俺はファッションは詳しくないけど、可愛ければいいかなって思って。ダメかな?」

 「あー、男の人目線だとそうかもしれませんね」

 「それにしても、唯の評価はガチだよねー」

 光司の回答に柚と燈がそれぞれ反応した。


 「ユイは我が家のファッションリーダーだからな」

 そんな光司の言葉を聞いて、唯は照れながら顔を真っ赤にしたのだった。


 そして、そんな光司の言葉を聞いていたのは他にもいた。

 「(こ、光司さんの好み…………っ!?)」

 早矢も少し考えを変えたらしい。


 「星羅さん」

 「ふぇ?」

 「光司さんの好みでお願いします」

 「ふっ……。もちろんよ早矢。でも、唯の言うことももっともだわ。ちゃんとマリアージュさせないとね」

 星羅と早矢は試着室前で硬く握手したのだった。

 

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