番外編32 SS1 放送委員会のお仕事
それは、毎日お昼に流れる放送で、各クラスの担当がそれぞれ考えて流しているものだ。
普通は音楽を流すだけだったりするのだが、今年の一年生は一味違っていた。
もちろん毎回というわけではないが、たまに変わった内容をやることがある。
二組はラジオドラマを。
三組は漫談や落語など文化的な内容を。
四組は毎回ゲストを招いて討論会なぞ開いていた。だが、四組に関しては、毎回コメディのようになってしまうのが、難点であり、他のクラスからは高度なテクニックと称される一方、ふざけすぎとの評価もあった。
そんな中で、一組はというとーー
ティナ「さぁ、今回も始まりました。学園ラジオ」
星羅「星羅と」
ティノ「ティノの」
星羅・ティノ「おねだりランチー」
ティノ「パーソナリティは、わたくし、栗栖ティノと」
星羅「喜築星羅でお送りしていきますー」
ティノ「はいー。今回で三回目ですねー」
星羅「ええ。本当は毎週やりたいんですが、三学年、四クラスありますから、そうわがままは言えないですねー」
ティノ「ですねー。ところで星羅は最近何かハマってるものってあるんですかー?」
星羅「あるわよー。でも内緒。いつかみんながあっと驚くようなことで発表しようと思うの」
ティノ「へー。めっちゃ気になるけど、それはわたしにも内緒なんでしょ?」
星羅「そうねー。ただ、最近唯達にはバレちゃってねー」
ティノ「じゃあ、言っちゃってもいいんじゃない?」
星羅「だーめ。じゃあ、まずはこの辺で曲行ってみましょうか」
ティノ「仕方なわいね」
星羅「では、一曲目。A応Pで『全力バタンキュー』」
「あの……これって……」
カフェテリアで流れるラジオに戸惑う早矢。
「あー、これ? これは放送委員の仕事だねー」
「そうそう。曲かけるだけってのもアレだから、うちは星羅とティノが勝手にやってるんだよね」
美羽と蓮が早矢の疑問に答える。
「そうですか。大変ですね」
「いや、結構楽しんでるよ?」
唯がミートボールを頬張りながら言った。
「そうなんですか?」
「ええ。こんなことならわたくしが放送委員になればよかったです」
「そしたら全力で阻止するわ。」
静の後悔に追い討ちをかける冴。
そんな感じで、二人のラジオに耳を傾けていた。
星羅「はい。ということで、いただいたお便りでも読んでいきましょうかね」
ティノ「そうですねー。えーっと、ラジオネーム『もふもふ至上主義さん』からですね」
星羅「どうせ静でしょそれ? で、なんて書いてあるの?」
ティノ「では、読んでいきますねー。『こんばんはー』こんばんはー」
星羅「こんばんはー」
ティノ「『僕は好きな人がいるんですが、どうしてもその人とは釣り合いが取れないんじゃないかと思ってます。彼女の好きなタイプがどんなかも分からず、このままの自分でいいのか。それとも自分を変えてから告白した方がいいのでしょうか。ご回答お願いします』これは、恋のお悩みですね」
星羅「あれ、これ静じゃないの? えっと、そうね。私の経験上、自分を変えて告白しても長続きしません。上手く付き合えても、その後は我慢の連続です。きっとぎこちないまま、上手く意思疎通もできないまま別れてしまうかもしれません。わたしなら、そのままの自分を打ち明けてみます。相手も心を開いてくれるかもしれませんからね」
ティノ「はい。そうですね。わたしもそう思いますね。もしかしたら、相手もそのままで告白してもらった方が受け入れてくれるかもしれませんね」
星羅「まぁ、当たって砕けろってことね」
ティノ「台無し」
星羅「まぁ、告白なんてそういうもんでしょ? ということで、次の曲ですね。オメでたい頭で何よりで『ピ』」
「え、星羅さんってこんなちゃんとしたこと言えるんですか?」
「ね。意外だよねー」
早矢が驚いて、箸を落としてしまうくらいだ。
そのくらいの衝撃であったが、他のみんなは既に慣れているようだ。
燈も寧々のお弁当からおかずをパクリながら早矢に相槌を打った。
「ところで、あれは静じゃないの?」
優華が胡乱げな目で静を見る。
「確かに素晴らしいラジオネームですね。ただ、わたくしは毛がなくても愛でますよ。アルマジロとかゾウとかサイとか。なので、わたくしの場合はケモノフレンズですかね」
「多分それはアウトだと思うなー」
美琴が軽いツッコミを入れた。
しかし、間近に告白イベントがあるらしい。
それを聞いて、みんなの目が変わった。この告白イベントを逃すことはできないと。
寧々が軽く手を挙げると、七人の人物が寧々の背後に現れて跪いた。
「ちょっとお調べ頂いてもいいですか?」
「「「「「「「全ては寧々様のために」」」」」」」
「やっぱりー」
それを見て燈が、軽く引きながら呟いた。
ティノ「はい。お便りの方もどしどし募集してますからねー。お便りは公式ホームページからご入力ください」
星羅「はい。お便り待ってまーす」
ティノ「では、次のお便りですね。ラジオネーム『浮気したらブロッコリー』さんからですねー」
星羅「物騒なラジオネームね」
ティノ「『ごきげんよう』ごきげんよう」
星羅「ごきげんよう」
ティノ「『わたくしは、彼氏がいるのですが、そんな彼が取っ替え引っ替え新しい彼氏を作ってくるんです』」
星羅「……待って」
ティノ「どうかした?」
星羅「これ、登場人物全員男?」
ティノ「まさかー……。多分書き間違いじゃない? じゃあ続きね。『あんなにも熱く抱きしめ、わたくしに愛の囁きをしてくれたのに、あれは嘘だったのでしょうか? 彼はとても人気で、同性異性両方から人気があります。きっと勘違いだと思いますし、わたくしだけを見て愛でて欲しいのです。彼を信じていいのか分かりません。わたくしは一体どうしたらいいのでしょうか?』だって」
星羅「つまり、浮気してるかどうかが知りたいのね?」
ティノ「みたいよ」
星羅「じゃあ、いつも通りに愛を求めたらどうかしら」
ティノ「どゆこと?」
星羅「今まで通りなら、グイグイいっても戸惑うのが関の山だけど、浮気してたら、後ろめたさから、嗜めるような言動するんじゃないかしら」
ティノ「バレてるかもって、一旦引いて見ちゃうんだ」
星羅「まぁ、一つの方法だけどね。他にもあるけど、ここで言うと対策取られちゃうかもしれないから、この辺でやめとくわ」
ティノ「経験あるの?」
星羅「ないわ。じゃあ、次の曲ねP丸様。で『シル•ヴ•プレジデント』」
「流石、普段から一人の人を取り合ってるだけあるね」
ラジオを聴きながら操が言うと、唯、寧々、静、早矢は少し気まずそうにした。
「ある意味浮気と言えるのでは?」
凛がキリッとした表情のまま言う。
「いいえ。まだ誰ともお付き合いしてないので、それには当たりません」
早矢が凛にからあげを餌付けしながら言った。
「早矢っちがそう言うならそうなんだろうねー」
小春が早矢のお弁当から玉子焼きを取りながら言った。
「あ、光司さんお手製の玉子焼きっ!」
「ごちそうさまー」
「もう……最後に食べようと思ったのにー」
「では、わたくしめの玉子焼きをどうぞ早矢様」
「あーん」と玉子焼きを差し出してきたので、折角だからと頬張る早矢。
「あら、美味しい」
「それは良かった。早矢様のお気に召す味を再現する為千回ほど作りました」
凛なら本当に比喩ではないと、普段の行動力からそう思わせた。
「そ、それは……すごいですね」
「はい。失敗したのは全部小春に食べてもらいました」
だからこんなに丸くなってるのかと納得した早矢とクラスメイト達だった。
ティノ「さて、残念ながら本日のお時間もそろそろ終了となりますね」
星羅「今日は恋の相談が多かったわね」
ティノ「そうね。では、半月後にまたお会いしましょう」
星羅「では、最後にこの曲を掛けて、終わりにしたいと思います。ナナヲアカリで『ダダダダ堕天使』」
ティノ「バイバーイ」
星羅「バイバーイ」
「ふぅ。お疲れ様ー」
「お疲れー」
曲が流れている間に、笑顔で労いあう二人。
曲が終わり、片付けも済むと、丁度チャイムが鳴ったので教室へ向かったのだった。
尚、現在英愛学園でも人気のチャンネルであり、星羅ファンクラブの人達は毎度、このラジオを聞くと失神してしまい、まともに聞くことが出来ないくらいだ。
また、星羅が何の気無しに掛けた曲を、ファンクラブの会合で、勝手に考察したりと話題に事欠かないのだが、それはまた別のお話。




