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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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36 が、おー


 お風呂を出て、身体を拭いたところで早矢は気がついた。

 パジャマを用意していないし、ドライヤーも無いことに。


 「早矢さんこれを」

 「あ、ありがとうございます」

 そう言って手渡してくれたのは静のドライヤーだった。

 だが、差し出しただけで中々手を離さない。


 「あの……」

 「乾かしてあげますよ」

 「ふぇ!?」

 手慣れた手つきで早矢の髪の毛を乾かしていく。

 親が子供にするように髪の毛を乾かしていく。それにものすごく心地よくなった。

 この心地よさは、お風呂にも匹敵するかもしれないと思った。

 そして髪の毛が乾いたと同時にドライヤーの大きな音が止む。


 「早矢さんの髪の毛は綺麗ですね。まるで夜空のよう」

 「静さんのは雲一つない青空のようですね」

 「ええ、お気に入りです」

 全く否定せず肯定するところがすごいなと感心してしまった早矢。

 ドライヤーを棚にしまうと、パジャマのようなものを差し出した。


 「パジャマ持ってきてないですよね」

 「ええ。下着しか持って来てなかったです」

 「貸しますよ」

 「ありがとうございます」

 早矢は普通のパジャマだと思っていた。


 脱衣所を出てリビングに戻ると、光司の左隣には唯がソファに足まで乗っけて体育座りで座っていた。

 光司の右側では、光司に寄りかかるように寧々が座っていた。

 その対面では星羅が、すました顔でマグカップに口をつけながら雑誌を読んでいた。


 「お、随分長かった……な……」

 「お! お風呂良かったっ……しょ……」

 「静さんも随分……と……」

 「全くみんな長風呂なんだか……ら……」

 みんなが早矢を見て、絶句してしまった。


 「や、やっぱり、これおかしいですよね?」

 早矢は静の灰色のうさぎさんの着ぐるみを着ていた。

 尚、静は茶色のうさぎさんの着ぐるみだ。


 「はやっちかわいいよ!」

 早速ソファから立ち上がり、抱きつく唯。


 「わっ!」

 「ええ、とてもかわいいですね」

 「そうねぇ。うさぎさん似合ってるじゃない」

 「あ、ありがとうございます……」

 顔を真っ赤にしている早矢。


 「こ、光司さんはどうですか?」

 「ああ。すごくかわいい。似合ってるな」

 「!?」

 まさか素直に褒めてくれると思っていなかったのか、軽く仰反るように驚くと、噛み締めるようにはにかんだ。

 「……えへへ」

 腰にしがみつく唯の頭を撫でながら、早矢は照れていた。

 その顔は朱く、湯上がりなのか、光司に褒められたからなのかは分からない。


 その時、寧々が立ち上がり静の前へ行った。

 「し、静さん、あたしにも何か貸してもらえませんか?」

 そう言われた静の口元は今まで以上に上がっていた。


 先に出て来たのは、光司だ。

 「なぁ、なんで俺まで着る必要あるんだ?」

 「光司かわいいですよ」

 「はい。とってもかわいいです」

 「特にやさぐれているところがポイント高いです。89点」

 「そんな低いんですか? うちは100点です」

 「……そうか……」

 パンダの着ぐるみを着た光司は、どこから持って来たのか、笹を手にしていた。


 次に出て来たのは唯と星羅だ。

 二人ともペンギンの着ぐるみだ。

 唯はロイヤルペンギンを。星羅はキタイワトビペンギンだ。

 わざとペンギンらしくよちよちとガニ股で戻ってきた。


 「静はいったいいくつ持ってるの?」

 「ホントよね。ペンギンだけで何種類あるのよ」

 「全種類はなくて、今のところ十二種類ですね」

 「あといくつあるか聞くのが怖いね」

 「聞かない方がいいわ。話が長くなるもの」

 少し残念そうな顔をする静。

 そんなみんなの表情をみて早矢はニコニコしていた。

 「最後は、寧々さんですね」

 「ええ。楽しみです」


 そして、恥ずかしそうにしているのかと思ったら、意外とノリノリで寧々が出て来た。

 「が、おー!」

 両腕を上げ、怪獣の鳴き声を出す寧々。

 そう。寧々が着ているのは怪獣の着ぐるみだ。

 緑色の生地にトゲトゲがついている。


 そして、そんな寧々を見て光司と星羅が固まった。

 「が、がおー?」

 「うっ!」「ぐふっ!」

 二人とも口元を手で押さえた。


 「寧々さん、もっと腕を高く上げるといいですよ」

 「そうだねー。もっとかわいく言ってみようか」

 軽く頷いて、寧々は二人の前で両腕を高々と上げた。


 「が、おーーー!」

 「ぶはぁあああっ!」

 「ぐはぁああああっ!」

 光司と星羅は盛大に血を吹き出して、前のめりに突っ伏してしまった。


 「え、え!? だ、大丈夫ですかー」

 オロオロとする寧々。

 そんな様子を見て可笑しそうに笑う早矢。

 唯はちょっと悔しそうにしており、静は腕を組んでうんうんと頷いていた。


 「……ね、寧々の優勝よ……」

 星羅が絞り出すように言った。

 ちなみに光司は小さく「(破壊力がやばい)」と言っていたが、星羅の耳にしか届いていなかった。

 「(同感よ、光司……)」

 二人は顔を血で真っ赤にし、突っ伏したまま、目と目で通じ合っていた。


 「やはり、着ぐるみは世界を平和にしますね」

 「ねぇ、これが平和に見えるの?」

 ユイが淡々とツッコミを入れた。

 「(うちは平和だと思うんですけどねー)」

 早矢が静寄りの感想をそっと言ったのだった。


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