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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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31 家族が増えたってことで


 学園での手続き等はすぐに終わったのだが、急遽始まった二者面談と言う名の雑談が長かった。

 途中から相槌しか打たなくなったら、機嫌が悪くなるわ、拗ねるわで散々だった。

 まぁ、いろいろと衝撃的なことも聞かされて疲れてしまった。


 LINEで先に帰ってきていると、寧々から連絡があった。

 ついでに足りないものを箇条書きにして送られてきたので、ちゃんと買っておいた。

 寄ったスーパーでは、寧々の知り合いの奥様方に捕まり、またぞろ時間をロスしてしまった。


 その後、どうしても寄りたいところに寄ってから帰った。

 なぜか、道ゆく人やお店の人から声をかけられたりウインクされたり、肩を叩かれたり、サムズアップされた。

 しかしどうしてか、俺の下の名前で呼ばれるんだよな。不思議だ。

 帰りの地下鉄でも話しかけられるし、そんな有名人になった覚えはないんだが……。



 「ただいま」

 「おかえりー」「おかえりなさい」「おかえり」「おかえりなさいませ」

 私服に着替えた四人が出迎えてくれた。

 学校が終わった時間だと思うのだが、帰宅するのが早くないだろうか?

 それよりも、どうしても気になって仕方がない。


 「なぁ静」

 「なんでしょう」

 「どうして着物なんだ?」

 「早矢さんを見て、居ても立っても居られず、つい買ってしまいました」

 「そうか。似合ってるな」

 「んっ!?」


 クリームイエローの生地に淡いピンク色のグラデーション。そこに、白、黄色、ピンク、赤、オレンジと暖色の小菊柄の訪問着を着ていた。

 てっきり二尺袖か振袖の方を買ったのかと思った。


 しかし、意外だ。青とか黒系を選ぶと思ったのに、黄色系とはな。

 髪の毛も全部まとめているが、少しだけ両側を垂らしている。


 しかし、似合ってると言っただけで、放心するなんて初心だなぁ。

 静が目立ちすぎていて、一瞬忘れそうになった。

 肝心の早矢の姿が見えないな。


 「にしし。そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だってー」

 「そうですよ。少し拗ねちゃいそうですが、安心してください」

 ユイと寧々がそう言い、和室の方の前に星羅と静が移動した。

 そして、星羅は王女様のような顔で、静は女神のような顔で襖を開けた。


 襖が開かれると、中からお姫様のような早矢が少しぎこちない表情で立っていた。

 何か打ち合わせをしていたんだろう。それで、あんまり納得いっていないのか、それとも……。


 楚々と出てきた早矢は、着物スタイルではなく、シンプルな白のワンピースを着ていた。

 「光司……さん」

 「おお……」

 着物のイメージが強かったが、こうして洋装も似合うな。


 「早矢、おかえり」

 これ以外にいい言葉が思いつかなかった。それにこれ以外に最初に言う言葉が思いつかなかった。


 「はい。ただいま」

 口角を上げ、眦を下げて、早矢はそう言った。


 「まったく光司は人たらしね」

 「だねぇ。『おかえり』だもんね。でもコージらしいよ」

 「ええ。早矢さん。改めてお帰りなさい」

 「はい。ただいま」

 「おかえりー」「おかえり」「おかえりなさいませ」


 ユイは相変わらず早矢に抱きつき、その横で星羅と静が、少し大人びた表情で立っていた。


 「では、改めて自己紹介を。LOTUSの天唐和 早矢です。今後ともよろしくお願いしますね」


 今更だが、AI名と併せて名乗った。

 かつて世界で一番利用者の多かったAIだ。

 それに国の中枢や企業なんかが提供を求めたりしていたな。

 今となっては全て動いていないのだが、まぁ以前に戻っただけのことだしな。

 そんなことを思い出していたが、そんなことよりも重要なことがあった。


 「あ、そうだ。渡したいものがあるんだ」

 小さな紙袋から取り出したのは、以前も買ったお店のペンダントだ。

 (フラワー)の中心にアメジストの宝石が入ってるものだ。


 「うちの瞳の色と同じ……」

 「ま、まぁ、みんなに送って、早矢にだけ送らない訳にもいかないしな」

 「ふふ。そう言うのは、言わなくてもいいんですよ。でも、光司さんらしいです。ありがとうございます」

 ニコニコと花が綻ぶような笑顔をしている。

 後ろでは、相変わらず四人が喧しくしている。


 「付けてくださいますか?」

 「もちろん」

 俺の前に立った早矢にそのペンダントをかけた。

 アメジストの煌めきが白いワンピースによく映えた。


 「ふふ。これで、うちも家族ですね」

 「ああ。そうだな」

 早矢は振り返り四人を見た。


 「(家族から先はうちも遠慮しませんからね)」

 何かを話しかけていたようだが、残念ながら、俺には聞こえなかった。

 ただ、四人が勝気な表情をしていることから、何を伝えたのかは、なんとなく分かった。


 まぁ、俺も期待に沿えられるよう頑張るか。

 早矢の食べたいものは、何だろうか。

 そんなことを考えていたら、寧々と目が合った。


 しかし、どうしたことだろう。

 なぜ、そんな微妙な困惑した表情をしているのだろうか。

 早矢がうちに来た初めての日なんだから、腕によりをかけるのは当然じゃないか。

 そう思ったのだが、全員が俺を見て苦笑していた。


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