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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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27 お姫様と緊急案件


 「さて、唯さん、お話があります」

 その場に残された早矢がにっこりとした顔のまま、唯の前へ一歩近づき、静かな声で問う。

 そして、早矢が何かを言う前に、すかさずぺこりと頭を下げる唯。

 それは残像が見えるほど素早い動きだった。

 「ごめんっしょ!」

 その様子にざわつく面々。


 そんな唯を見て、一瞬困った顔をした早矢。

 「寧々さんも星羅さんも。そして静さんも……」

 寧々、星羅、静と時間差で頭を下げた。


 そして、顔を上げて、それぞれが三人の目を見ながら言った。

 「ち、違うんです。あそこのあれをやったのは星羅で……」

 「ちょ、ちょっと寧々!」

 「違うんですか?」

 「共犯でしょうに……」

 「……あたしのは……違いますよ」

 「あ、逃げたわね」

 プイッと横を向く寧々と、ジト目でそれを見ている星羅。


 「わたくしのはやむなくです」

 髪の毛をファサッとかき上げ、バツが悪そうな顔をする静。

 随分と明後日の方向を見ていた。

 愛花と優華と目が合って、更に横にいた薫と美琴と目が合って、結局一回りしてしまっていた。


 そんな様子におかしそうに、口元に手を当て上品に笑う早矢。

 一体何があったのか分からないが、四人は早矢に頭が上がらないように見えた。

 それはまさに、お姫様というより、ラスボスが訪れたと言っても過言ではないように思えた。


 「まぁ、こうして来れたので不問にはしますが……」

 パンっと両手を当てて口を開く早矢。


 「ごめんねー」

 ぎゅっと抱きつく唯。

 「もう……仕方ないですねぇ……、よしよし。唯は相変わらずですねー」

 「え、えへへ……」

 まだ少しぎこちないが、唯の頭を撫でる早矢を見て、一同ホッと胸をなでおろした。

 そして、その様子により、より一層好奇心が湧き上がるクラスメイト達。


 そんなクラスメイト達は瞬時に早矢という人物を分析していた。

 寧々とは違った包容力。

 星羅とは違った高貴さ。

 唯と似た親しみやすさ。

 静と同じ理知的な感じがあった。


 そんな考えなどどこ知らず、抱きついたままの唯は早速違和感に気づいた。

 早矢の背中を大きく何度もさする。


 「ねぇ早矢っち……」

 「どうかしましたか?」

 唯は早矢の耳元に口を近づけた。

 「(ねぇ、何で下着つけてないの?)」

 「(着物は下着着けないのが作法なのでは?)」

 「それ、どこ情報だし!!」

 「ふぇ!?」


 驚き大声を出す唯。早矢も突然のことに驚き固まる。

 そして、唯は片腕を上げて、集合をかけた。

 「寧々、星羅、静、集合ーー!」

 「なんですか?」「どうしたのよ」「神妙な……」

 「(今から早矢っちの服や下着とか買いに行くっしょ)」

 「「「!?」」」


 唯がそう言うと三人は一瞬驚き、それぞれ違った表情を見せた。

 寧々は少し困った顔をして、「はは…」とこぼした。

 星羅はいたずらっ子のような顔をして、腕組みして鼻息を荒くした。

 静は全て理解したとばかりに、鷹揚に頷いた。

 そして、クラスメイト達は、そんな四人に何をするのか問うた。


 「もしかして何かする感じ?」「まーた面白そうなことする気ね」「これは止めても無駄ね」「仕方ないわね。先生には言っておくわ」「いのりちゃん先生も分かってて行ったんじゃないの?」「じゃあいっか」「午後は自習かなー」「いや、どっちも授業あるし、ちゃんと報告しないとダメよ」「委員長は硬いなー」「あんたが考えなしすぎるのよ……まったく……」


 クラスメイト達も分かっているようで、嘆息して肩を竦めた。

 寧ろ、この後行うことを後で聞くことが楽しみになっていたりもする。

 

 「みんなありがとう。じゃあ、午後はあーしら有給ってことで」

 「学生に有給なんてないわよ」

 冴が唯にピシャリと言い切った。


 「もうーいいじゃん。今は早矢っちの方が優先だし?」

 「優先事項がおかしいのは今更よね」

 「そこは疑問形じゃない方が締まるのになー」

 愛と美羽がツッコんでいた。


 その場でただ一人早矢だけが事態を飲み込めずにいた。

 「あ、あの何をしようとしているんですか?」

 「今から早矢っちの服とか買いに行くっしょ」

 「ええ!?」

 「可愛いの選んであげるわ」

 「そうですね。これも魅力的ではありますが……」

 「怒られないですかね?」

 「寧々は心配性ね。大丈夫よ。多分」

 「多分ってなんですかー」

 そんな様子をクラスメイト達は苦笑しながら手をヒラヒラさせながら戻っていった。


 「おっし! じゃあ行きますか」

 「お、おー」「おー!」「おー」

 「お、おう?」

 まだこのノリについていけない早矢だけが、腕を半分上げるに留まったのだった。


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