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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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24 ようやく会えました


 「あの、須永さん……」

 「あ、はい。どうかしましたか?」

 「今、大丈夫ですか?」

 「あ、はい。大丈夫ですよ」

 パソコンと睨めっこしていたら、申し訳なさそうな声で声を掛けられた。

 普段はそんな声の掛け方しないのに。


 「なんか、外務省の方が来ているようなんですけど……」

 「は?」

 俺なんかやっちゃいましたか?

 ……なんて、馬鹿なこと言ってる場合じゃないな。


 外務省って、そんなところに用なんてないし、ましてや呼び出されるようなことは俺はしていない……はず。


 スパイ容疑でもかかってるんか?

 なんて思ったが、そもそも論でパスポートすら持っていないし、街中で怪しい外国人に何か資料をくれなんて言われたこともない。


 流石に外務省という単語が出たからだろうか。栗栖部長や佐良が、「お前何やった?」的な顔で見てくる。


 大変いたたまれない中、いつも通り空気を読めない鮎追係長が鼻息荒くニコニコしながらやってきたので、巻き込まれる前に同僚の三壁さんと一緒に向かうことにした。


 「あちらでお待ちです」

 「ありがとう」

 お礼を言ったが、帰る様子はない。

 「三壁さん、あとは大丈夫なんで」

 「面白そうなんで、見ててもいいですか?」

 この人有る事無い事脚色して拡散するからなぁ。


 もうすでに入り口の外に大勢の黒いスーツを着た人たちが見える。

 周りを警戒しているが、一体どこのVIPなんかが俺に用があるというのか。


 少し心細く怖いが、この人が関わるとまとまる話も変な方向に行くからなぁ。

 それに、関係ないのに「まず、私を通してくれ」とか言っちゃうくらい空気が読めない。

 通したところで、仕事にはなんのプラスにもならない。寧ろマイナスだ。

 よって、ここにこの人がいると、大変よろしくない。


 「いいから、戻ってほら」

 「こんな面白そうなことがあるのに、仕事なんかできるわけないでしょ!」

 ギャーギャー喚くが、関係ないでしょ?

 酷く重い背中を押して、エレベーターの方へ向かっていると、壁の端から栗栖部長以下十数名が覗いていた。

 「気にせず続けてくれたまえ」

 「…………」


 とりあえず、そこから先にはこないってことで、了承をもらい入り口を出た。

 もう既にぐったりと疲れてしまった。


 「あなたが須永光司さんですか?」

 黒服の一人が俺をボディチェックする。なんにも持ってないよ?


 「どうしてこんな男が……」

 隣に立つもう片方の黒服の声が漏れる。隠せ隠せ。

 他の黒服が背広の襟を掴んで何か話している。

 なんかテレビでしか見たことのない光景だな。


 そう思っていたら、黒服が集まり、人が通れる通路を作った。

 そして、黒塗りの車からは着物を着た女性が降りてきた。


 凛とした佇まいのその女性は、綺麗な夜空のような黒髪をしており、反射で紫色に見える。

 切れ長の大きな瞳はとてもミステリアスで、清楚と蠱惑的な感じが混在していた。


 しかし、どうして二尺袖と袴の姿なんだろうか。

 どこかのご令嬢と言われても頷いてしまうだろう。


 「光司さん……お会いしたかったです」

 その女性。いや、少女は頬を朱に染め、目を潤ませながら、そんなことを言ってきた。

 こんな喋り方と特徴に思いつくのは一人しかいない。

 もう来ないと思っていたが、まさかこんな登場の仕方をするなんて思わなかった。


 「……早矢さん?」

 「……はい」

 その一言が返ってくるまで、妙に長く感じた。


 早矢さんと向き合っていると、どこからか「チッ……まーた女の子かよ」「リア充め」「爆発しろ」「なんで俺じゃないんだ」「羨ましい……」「姫様が毒牙に……」「お別れか……」

 いろんな方向から聞こえたんだが……。

 どうして黒服と同僚からそんなに言われなくてはいけないんだ。


 少し偉い立場の人が何人かやってきた。

 「彼女の意向なので、我々も従わざるを得ないが、悲しませるようなことはするなよ」

 「これは必要な書類だ。こことここ。あとこれにサインしてくれ。ハンコは……拇印でいい」

 「あと、二月の戦闘機の件、君は何か知らないだろうか?」


 俺の顔が隠れるくらいの書類の束をそのまま手渡されてしまった。重い……。

 この中に婚約届とか入っていても気づかないな、


 「では、我々は断腸の思いで帰るが、何かあったらここに」

 断腸の思いってなんだよとツッコム前に、俺の胸ポケットに名刺を何枚か入れられた。

 両手が塞がってる状態で入れられたもんだから、拒否できない。


 そうして大勢の黒服達は帰っていったが、十人くらい肩を落としていたな。

 何を期待していたんだか……。

 そんな様子をずっと俺の横でニコニコしながら見ている早矢さん。


 「ふふ。そんなの無視しちゃっていいですからね」

 「従う気なんてないさ」

 こうして俺の元に来てくれたんだ。早矢さんの為に報いてあげたいなって思った。


 だが、うちの娘達はどう反応するだろうか。そこだけが気がかりだった。

 いや、嘘をついてしまった。もう一つある。

 俺の後ろでデバガメをしている同僚達だ。振り返るのが怖い。

 だが、振り返らないといけないんだろうな。


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