21 結果発表
張り出された結果をクラスのみんなで見に行った。
クラスメイト達はほぼほぼ上位の成績を収めていた。
あの勉強会に参加したものは、数名を除いて、五十位以内に入っていた。
「すっご!」「嬉しい!」「やった!」「いよっしゃあ!」「うぉおおおおっ!」「こんな点数初めて取ったかも」「やばい! 写真撮っとこ!」「うちのクラスだけ平均高いらしいよ」「唯先生に感謝だわ」「これは次も参加しないと」
女性勢は、手を取り合って跳ねたり、ハイタッチしたり、小さくガッツポーズしたりしていた。
男子勢は、思ったより上がらなかったためか、がっくりしていた。
そんな男子を数人の女子が揶揄いながらも慰めていた。
「まぁまぁ、米沢くんは上の方だからいいじゃん」
「そうそう。やっぱ副委員長は伊達じゃないね」
ティノが励ますが、口を開いたままの副委員長である米沢鷹臣。
「……」
「市田くんも料理作ってたのに結構いいじゃん」
「そうそう」
「ねー」
「……」
目を見開いて立ち尽くす市田柊真を愛花と美羽と蓮が励ますが、耳には入っていなかった。
依然1組の男子八人は固まったままだった。
「うわぁあああっ!」
そんな中で頭を抱えたのはエレナだった。
「やっぱり、お菓子の食べすぎよアンタ」
操が呆れた顔で呟いた。
「だってだって、美味しかったんだもん。でも、赤点は余裕で回避できたよ」
エレナの点数は399点で、1組女子勢唯一の300点台だった。
といっても、39位で、十分上位なのだが……。
「もう少し取れてれば、うちの平均上がったのにね」
「いや、男子はみんな、わたしより低いじゃん」
「試験前日に料理習いに行ってたからね」
だが、それでも上位だった。
「米沢くんと市田くんはエレナより上ね。料理作ってたのに、食べてたエレナより上ね」
「いいじゃない、もう!」
ポカポカと操を叩くエレナ。そんなエレナを苦笑しながら防いでいた。
冴は小さく口元を緩めた。
麗華は満足げに微笑みながら髪を払った。
そして、互いに顔を見合わせて、ニンマリと嬉しそうな顔をした。
「薫きゅんは上位だね」
「可愛いだけでなく頭もいいなんて凄いよねー」
「あうあう……」
美琴と優華が薫の頭を撫でていた。
1組男子の中で唯一十位以内を果たした薫。
羞恥と達成感で顔が真っ赤になっていた。
顔を真っ赤にしながら耐えている薫だが、そんな彼も四人の方に目がいってしまった。
なぜならば、いつも余裕の態度を取っているのに、張り出された紙を見て固まっていたからだった。
「やっぱりすごいねー」
陽菜がそう言うが、静は「ええ……」と小さく呟くだけだった。
愛が唯の腰に抱きつくが、微動だにしなかった。
柚が寧々の隣に立つが、寧々は少し俯いていた。
燈がひょいっと顔を覗くと、星羅もいつもの余裕の表情を失っていた。
そんな様子を見て、改めて順位をみんなで見た。
ただ、やはりというか異常というか、今回も四人の点数はおかしかった。
そして、勉強会に参加したメンバーはかなりの好成績だった。
今回は、国語と英語の平均が低く、少し難易度が高いと言われていたにもかかわらずだ。
二十位までの結果はこうだった。
一位、人見 静 (1組) 501点
二位、天唐和 早矢 (1組) 500点
二位、喜築 星羅 (1組) 500点
二位、喜築 寧々 (1組) 500点
二位、御坂 唯 (1組) 500点
六位、小此木 冴 (1組) 483点
七位、九条 麗華 (1組) 481点
八位、花咲 薫 (1組) 479点
九位、朝霧 愛花 (1組) 478点
十位、智坂 柚 (1組) 475点
十位、白峰 美羽 (1組) 475点
十位、百合草 琹織 (2組) 475点
十三位、白鷺 凛 (1組) 471点
十四位、杠 紡希 (2組) 469点
十五位、宇佐美 美琴 (1組) 466点
十六位、冷泉 優華 (1組) 465点
十七位、篁 志乃 (2組) 463点
十八位、朝比奈 暦 (3組) 460点
十九位、不知火 逢佳 (4組) 459点
二十位、入江 朔 (3組) 455点
二十位、秋山 巡 (4組) 455点
二十位、春日 小春 (1組) 455点
二十位、栗栖 帝乃 (1組) 455点
二十位、藤原 陽菜 (1組) 455点
上位は殆どが1組だった。
二人除いて女子が上位となっている。
尚、他の1組の女子と男子の順位の結果はこうだった。
二十六位、宇慶 操 (1組) 437点
二十九位、松本 愛 (1組) 422点
三十二位、織部 燈 (1組) 415点
三十四位、千石 蓮 (1組) 409点
三十九位、海道 メリー エレナ (1組) 399点
二十四位、米沢 鷹臣 (1組) 440点
三十位、市田 柊真 (1組) 420点
四十位、狭山 悠真 (1組) 398点
四十一位、佐藤 桃李 (1組) 395点
四十四位、万願寺 匡人 (1組) 385点
四十九位、聖護院 正親 (1組) 374点
五十二位、明石 エルヴィン 湊 (1組) 369点
五十五位、関 隼人 (1組) 361点
そこで、おかしい点にみんなが気づいた。
最初に口にしたのは優華だった。
「待って、どうやって501点なんて取れるのよ。500点満点じゃないの? それでもおかしいけど」
「そう……だよね」「確かに……」「でも静だし……」「もしかして不正?」「いや、それはないっしょ」
それに対して、静はどこか上の空で答えた。
「問題文にミスがあったので、指摘したまでですよ。まさか律儀に加点されるとは思いませんでしたが……」
そんなことがあるのだろうかとみんなは思った。
というか、わざわざ指摘するのが静らしいしなと思い、みんな苦笑した。
しかし、問題文のどこにそんな間違いがあったのか、逆に気になってしまった。
だが、もう一つ、明らかにおかしい箇所があり、その部分を口にしたのは愛だった。
「あれ? そういえば、こんな名前の子ってうちにいたっけ?」
蓮もそれを見て、首を傾げながら呟く。
「あま……、てん……、なんて読むんだろう?」
「下の名前もはや? さや?」
美羽が顎に手を当てて首を傾げた。
「でも、この子も満点ね」
「もしかして、ずっと来なかった文字化けの子?」
燈と柚が顔を少し強張らせた。
「早矢っち……」
唯が顔を少し青くさせていた。
寧々と星羅は口を真一文字に結んで硬い表情をしていた。
静はというと、目線だけを横に向けていた。
そんな時、来客者専用の入り口の方から二人の人物が来るのが見えた。
そして、真っ先に反応したのは、唯達四人だった。
「「「「あっ!」」」」
「初めまして。いえ、お久しぶりですね」
凛とした声でそう言ったのは、薄紫とペールイエローのストライプ柄の二尺袖と濃紫の袴を着た、少女だった。
光の加減で紫にも見える長い黒髪をカチューシャ風三つ編みにしていて、耳の上あたりに白いリボンをつけていた。
優しい感じに見える切れ長の大きなアメジスト色の瞳は、とても吸い込まれそうなほど綺麗で、まるで夜空のようだった。
それは、ミステリアスな大和撫子といった感じで、慈愛と奥ゆかしさが同居していた。
「これは、最大のライバル現るって感じかな?」
操がそんなことを呟くと、みんな様々な微笑み方で頷いた。
「これは星羅とは違って、お姫様だね」
蓮がニマニマしながら言った。
「確かに、女王様とお姫様……」「嫁姑戦争が現実に?」「しかし、本当に綺麗ねぇ……」「吸い込まれそう……」
そんなクラスメイトを見て、早矢は一歩前へ出て優雅に自己紹介をした。
「みなさん、初めまして。天唐和 早矢 (あまとわ はや)と申します。家の都合で登校が遅れてしまいましたが、みなさん仲良くしていただけると嬉しいです」
そして、1組で堅物ゆえ、孤立気味だった白鷺凛が、「仕えるべき主が現れた?」と、どこかズレた感想を言い、ほんわか天然系の春日小春が目を輝かせて見ていた。
そして、そんな人物と一緒にいたのは光司だった。
「あれ、光司さん」「おかーさんのおかーさん」「光司ママ」「旦那さん」「親方!」「叔父貴!」「料理長……」「パティシエ番長」「板長!」
いろいろ変な称号がついていたが、困ったような顔をして軽く手を上げた。
「コージ……」「光司」「光司さん」「光司く……光司……」
唯が駆け寄り、寧々、星羅、静が続く。
「まぁ、色々あってな」
光司が照れ臭そうに言った。
そして、早矢はニコニコと意味深な笑みを浮かべていた。




